棒犬バウリンガル
オジさんは、Twitterが怖い。
だけど、新しい世界を覗こうとしない自分を、嫌になってしまった。
失敗してもいいという言葉は、どこに忘れてきたのだろう。
いよいよとなれば、「逃げ恥」でもいい。
音楽だって、そうやって始めたはずだった。
私は、ライト感覚の会話が苦手だ。
歳を重ねるごとに、そうなっていった気がする。
軽快トークに欠かせなかった「オヤジギャグ」も、悲しいかな、年々減少傾向にある。
たった140字で「つぶやく」のは、私にとっては至難の業だ。
しかも、Twitterは言葉を使って、人を傷つけたり、傷ついたりするらしいのだ。
無論、はるか昔から、人は「言葉」を武器や盾として利用してきた。
私だって、そうしてきたこともあった。
言葉のマシンガンで誰かの心を殺してしまうのは、ひどいことだ。
言葉の催眠術で相手を洗脳してしまうのも、ひどいことだ。
誰が悪いとか、誰が無知だったとか、そういうことは脇に置いても…。
などと考えて、私はTwitterから距離を置いていた。
でも、待てよ。
私は食わず嫌いなだけで、頭ごなしに決めつけているのではないだろうか?
結局は、心のもちようではないのか?
音楽を始めて10年経ち、ようやく、納得できる形を作ることができた。
この音楽を、誰かに伝えたい。
『棒犬』という言葉だけでも、少しでも知ってもらいたい。
そのためには、SNSは避けて通れない。
いつまでも逃げていていいのか?
そう感じはじめて、Twitterという言葉の海に潜り込んでみた。
ブクブクブク…。
開始して数日後、やはり、とても嫌な言葉を目にしてしまった。
知らない人で、すぐ消えちゃったから、いたずらなのかもしれない。
でも、SNSで傷つくって、こういうことなんだ。
なぁ、おい。
これって、私の失敗なのか?
ごあいさつと、お願いと、ありがとうを、言っただけなんだよ。
きっと、運が悪かっただけだ。
そう思いながらも、できの悪いピンポンディレイのように気持ちが揺らぐ。
つぶやきの度を超えているか、そうでないかの判断基準は、人それぞれ。
それは理解しているつもりでも、こういうのは、やっぱり苦しいね。
好きな音。憧れる音。受け入れられない音。衝撃的な音。感動的な音。
いろいろあった。
どれだけ音楽が好きでも、友だちになるのに時間がかかる音もあった。
私にとって、Twitterもそうだろうか?
私の音楽活動の隣で、Twitterはそういう存在になるのだろうか?
それを知るために、この海をもう少し泳いでみよう。
たとえ失敗したとしても、いよいよとなれば、「逃げ恥」でもいい。
音楽だって、そうやって始めたはずだ。
私は一度、Twitterという言葉の海から顔を出し、大空を見上げてみた。
しばし考えてから、息を大きく吸い込み、また海に潜った。
さあ、Twitterを楽しめよ、私。
ブクブクブク…。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。
棒犬 Vo. Takanori Inutake
YouTube 『drive』ステイホームver.
https://www.youtube.com/watch?v=7fSLDVBZXsU
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※『逃げ恥』(逃げるは恥だが役に立つ)
ハンガリーの古いことわざ。「恥ずかしい逃げ方だったとしても、生き抜くことが大切」、「問題と向き合わず逃げることは恥ずかしいことと思われているが、逆にそれが最善の解決策になることがある」、「自分の戦う場所を選びなさい」などと訳されているらしい。
※ピンポンディレイ
音響技術の用語。卓球のプレイ中のボールのように、ディレイ音(やまびこ・こだま)が左右交互に移動する特殊効果音。