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何者でもないぼくが思うこと

ZOZOの前澤社長が月に行くというニュースを見て「くやしい」と思った。もともと負けず嫌いな性格もあるのだけれど、この気持ちはきっと10年前だったら出てこなかっただろう。


ぼくはずっと狭い世界に生きていた。


(当時は)正解はひとつしかないと思っていて、それを追い求めていた。自分の経営するトリミングサロンの中で起こる事がぼくの人生の全てだった。今思えばなんて狭い世界で生きていたのだろうと思う。でも独立した当時22歳のぼくにはそれが全てで、現実だった。



もつれがすごいイヌ。悪臭を放つイヌ。年に二度しかトリミングにこないイヌばかり。夏はノミだらけのイヌでもトリミングをした。もつれ代を頂こうものならお客様に叱られた。失客が怖かったからほぼ無料にした。当時トイプードルのカットが5000円。500円でも上がればお客様に叱責された。「高くなるならもう来ない」と言われたこともあった。


つまりド田舎のトリミングサロン。


一番近い店がトイプードルのカットを3000円でやっているんだもの。しょうがない。


専門学校時代を大阪で過ごしたので都会と地元の「イヌを飼う」ということの意識の違いに絶望した。


アイフルのCMでチワワが大人気の中、ダックスやシーズーを庭に繋いで柴犬のように飼っている家も多かった。キャバリアはノーリードで団地をうろついていた。フィラリアの予防薬さえ飲ませてもらえない子が多かった。



自分の育った地元の「イヌを飼う」という事の常識を変えたい。



そう思って起業した自分の店は、あっという間に「安くて毛が短くなればそれだけでいい」お客様の言いなりになった。




やりたい事とやっている事が違いすぎて絶望した。自分の店なのに。



ここからたくさんのトライ&エラーを繰り返していくことになる。ときには経営難に陥ったこともあった。22歳で借金をして独立した人間には誰に助けを求められるわけでもなく、コネもない、ノウハウもない、全てが手探りだった。



今は月に一度トリミングに出して頂けるお客様がほとんどだ。10年前に半年に一回しか来ていなかった子は、トリミング料金が倍以上になった。もう14歳だけれど毎月来てくれている。とてもありがたい。



ノミが一匹でも動いていたらすぐに作業をやめて動物病院に行っていただけるようになった。


外飼いの小型犬もいなくなった。フィラリアの予防薬はみんな飲ませてくれるようになった。


ここまでくるのにだいたい5年かかった。


言い方はおおげさなのだけれど、ぼくは自分が「ここ」に店を作ることによって「地域全体のイヌを飼う意識を変えられた」と思っている。まだまだやらなければいけない事はたくさんあるのだけれど。


もっといいやり方があったかもしれない。もっと早く浸透させられたかもしれない。そんな考えは当たり前のように出てくる。


5年かかったけれど、ぼくの手の届く範囲のことだけれど、確実に以前より幸せになったであろうイヌ達が増えた。



「こうしたい」と願うこと、それに向かってやるべきことを粛々とやり続ける事。そうすればどんな状況だって変えられる。


あのときぼくが「都会と田舎は違うから」という理由であきらめていたら、、、、


置いていれば勝手に売れるフードが並んで、安いシャンプーを使って全身2mmのオーダーばかりの洗車(犬)屋さんになっていたと思う。



どんなに困難だろうと、信念を曲げずにやり続ければ結果は出る。



憧れの環境。憧れの人。憧れのカット。



「あこがれるもの」はたくさんあると思うのだけれど



それを「あこがれ」だけで終わらせるのではなくて、現実にしていきたいと思う。



ぼくは手の届かない事を考えるときに「自分にできるかどうか」ではなくて「ヒトという生き物にそれができるかどうか」で考えている。



「憧れのあの人」ができるんだったら自分にできない理由がない。そう信じている。



だからぼくは月にだって行けると思ってる。(本気で行きたいわけではないから実現はしないだろうけれど)





ぼくは「ぼくの月」に行けるように毎日を過ごしていきたい。


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