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【symposium2】(Part.6)「クバへ/クバから」第2回座談会(レクチャー2)上演記録「『クバへ/クバから』の写真群と沖縄写真史をめぐって」

(Part5はこちら

前半のふり返り

笠井 まだ山本くんが戻ってませんが、再開しましょう。前半は三野さんから、写真という技術の起源を参照した上で、ぐっと飛んで、戦後日本の写真史における重要な人物、東松照明が沖縄の写真を撮影していた時の話をしてもらいました。

 そこから派生して、東松照明と中平卓馬――三野さんが参照しようとしていて、写真史的にも重要な写真家2人が、沖縄県内の生まれ育ちではないんだけれど、報道目的だったり、外から与えられた目的によって、現地に入って、撮影を始めて、移住して。さら沖縄の周辺――東南アジアに広がりを持つ「琉球弧」に目を向けた歴史と、そこでなにが目指されていたかを話してもらいました。その上で、これから僕たちが写真集を作っていく時にどういう論点があり得るのか、主には三野さん、山本くん、一平くんが話してくれました。

 交通整理のために、ここまでの議論を大きく5つのレイヤーに分けてみます。(1)写真と、そこに写る被写体(自然や事物)との距離。現実と写真との間にある対象物(モノ)が、まず一番下のレイヤーにあります。次のレイヤーには、(2)その被写体が撮影された写真そのものの物質性がある。そのさらに上に、(3)写真集に含まれる個々のテキスト、キャプション、余白、構成、配置といった、写真集のエディトリアル、パッケージとしての表現のレイヤーがある。それだけではなくて、さらにその外には、(4)写真史における位置付けや、その写真集がどのような意図、文脈、コンセプトで提示され、受容されたかといった「意味の余白」がある。その先に、より大きな、(5)政治社会的な問題や経済状況、歴史・文化的なものがある。いくつかの層を参照したり、それぞれに介入したりしながら、写真集というものは作られる。

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写真家・舞台作家の三野新と、いぬのせなか座による、沖縄の風景のイメージをモチーフとした写真集を共同制作するプロジェクト「クバへ/クバから」…

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