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犬のピピの話 277 軽トラのおじさんと犬

 それからそれから、茶いろい犬とおじさんもいました。
犬とおじさんは、軽トラックに乗って、草原へやってきました。

草原を東西に貫く道路を、トラックは小刻みに揺れながら進み、西の端で止まります。
茶いろい犬が、地面に降り立ちます。
ピピは
「だあっ!!!」
 そこへ走ってゆきました。

茶いろい犬はピピより二回りくらい大きいけれど、ピピの運動能力は負けていません。
二匹は、おおよろこびで走りあいます。
その様子は、まるで風が舞うようです。
ピピも、茶いろい犬も、からだじゅうで笑っているのがわかります。

・・そうか・・・

いぬには、いぬしか相手にならないものがある・・・・
わたしは、そんなことを思ったのです。

二匹がいつまでも走っているので、わたしはゴルフ場のほうへ歩きだしました。
ピピが追いかけてくるかと思いましたが、追ってきません。
わたしが一人の散歩からもどっても、二匹はまだ、風のように遊んでいました。

わたしはその様子を、すこし遠くから眺めます。

今は、わたしが「恥ずかしがりの女の子」みたいなのです。

すると、おじさんが茶色い犬へ、何かを叫びました。
「XXX!!」
叫びながら、トラックの荷台を指さしています。
どうやら、荷台へあがれ、という命令みたいです。
「XXX!!」
 でも、茶いろい犬はまだまだピピと遊んでいたいのでしょう、あがりません。

「XXX、XXX!!」
 おじさんはさらに厳しく命じ、茶いろい犬は、ようやくトラックに飛び乗りました。
これが、おじさんと茶いろい犬の「やくそく」なのでしょう。

おじさんもトラックに乗りこみ、エンジンをかけて、草原から去っていきます。

ピピも、ようやくわたしのところに帰ってきました。
わたしはピピの首輪に引き綱をつけると、道路の縁石に座りました。

ぶうううん・・・・

トラックが近づき、やがて、わたしたちの前を通りすぎていきます。

茶色い犬が、なごりおしそうにピピを見おろしています。
わたしはピピのとなりで、運転席のおじさんにむかって
「ぴょこり!」
 と、恥ずかしそうなおじぎをしたのでした。

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