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犬のピピの話 279 ハナの家へ行ったピピ

 そして、別のある日のことです。
ピピは、山の公園からちょうど家へ帰るところらしい女の子たちとハナに出会い、とうぜんのように、どんどんとどんどんと、一緒に「うちへかえって」いってしまったのです。

女の子たちは、ピピがついてくるのがとてもうれしそうです。
でも、少し心配そうな顔で、公園にとどまっているわたしを見ました。 
わたしは
「ピピは、自分で帰ってくると思うから」
 と笑顔で言って、ピピをひとりで送り出しました。
女の子たちは喜んで、木々の間のトンネルのような道を行ってしまいました。

わたしは、ピピの帰りを待ちました。

さてと、今ごろ、ハナの家について・・
ちょっと、遊んで・・

遊んで・・・

・・・・・・・

それで今、ピピはわたしがいないのに気がついて

そして、あわてて走って帰ってくる。
・・・・・帰って来る。

・・・・・
 
でも、いつまでたっても、ピピは帰ってきません。
(やれやれ・・)
わたしはしかたなく、女の子たちが消えた木々のトンネルに入り、ピピを迎えにいくことにしました。

 その時、道のむこうから、女の子たちがピピといっしょにやってきたのです。
ピピの首輪にひもをつけ、リードしてくれています。
ピピは、行く手にわたしを見つけると
「ぴょんぴょんぴょんぴょん!!」
 踊るように走りはじめました。

ひもを持った女の子はピピにひっぱられ、しばらく走りましたが、ピピののどに悪いと思ったのでしょう、手からひもを放しました。
「ぱたぱたぱたぱた!!」
 放たれた小鳥が飛ぶように、ピピがやってきます。
そして、いきおいあまって走り過ぎそうになりながら、わたしの右側で止まりました。

それから立ち上がり、前足をわたしにかけて、こちらを見あげます。
ふたつの長い耳が、ちょっとすぼまってたらんとうしろに垂れ、その重みにひっぱられて、ピピの頭はますますつるつるに、丸くなっています。

その、まあるい頭のこちらがわで、深く澄んだアーモンド型の大きな目が
「ただいまあ」
 ときらきら輝き、素直にわたしを見あげています。

「・・ピピ」
 わたしはにっこりして、そのすべすべとあたたかい頭をなでました。

「ピピちゃん、帰らないからつれてきました」
 やさしい女の子が言います。
この子は、走る練習で日にやけて顔がちゃいろく、からだが細く上品で、どことなく子狐に似ています。

「ありがとう」
 わたしは、やさしい子狐たちへお礼を言ったのでした。

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