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11月18日公開オススメ映画『ザ・メニュー』『ある男』『ナイトライド 時間は嗤う』

映画ライターの松 弥々子が、今週末、11月18日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。

ザ・メニュー

映画『ザ・メニュー』の舞台は1人前1250ドルもするという高級レストラン「ホーソン」。アメリカ北西部・太平洋岸の孤島にあるこのレストランに、カリスマシェフ・スローヴィクの料理を味わいに、フーディーたちが集まってきています。そこにいるのは有名料理評論家、IT成金、落ち目の俳優といった面々。リッチでスノッブな彼らが、スローヴィクが供する独特な料理の数々を、したり顔で味わうのですが……。

この映画の主人公であるマーゴを演じるのは、『ラストナイト・イン・ソーホー』のアニャ・テイラー=ジョイ。彼女は唯一の“招かれざる客”。招待者リストに名前のない彼女は、ニコラス・ホルト演じる食通を気取ったスローヴィクファンの男・タイラーが、突然連れてきた異端者なのです。

彼女の存在が、レイフ・ファインズ演じるスローヴィクが演出する渾身のディナーに混乱を呼び込んでいきます。そしてその日のディナーが、思いもかけない展開に……。

冒頭から不協和音を感じさせる演出や、類型的で現代人への皮肉に満ちた登場人物たち、レストランで提供される概念的で決して美味しそうに思えない高級料理の数々。決して調和しなさそうなこれらの要素が、最終的に調和して、すべての謎が明かされていく展開は圧巻です。

この作品を見終わった後、きっと何か美味しい料理を食べたくなってしまうはず。それはきっと、古き良きチーズバーガーに違いありません。

『ザ・メニュー』(107分/アメリカ/2022年)
原題:The Menu
公開:2022年11月18日
配給:ディズニー
劇場:全国にて
Official Website:https://www.searchlightpictures.jp/movies/themenu
©2022 20th Century Studios. All rights reserved.

ある男

『愚行録』『Arc アーク』など、独自の世界観を持つ石川慶監督の最新作が、この映画『ある男』です。

本作の主人公は、妻夫木聡演じる在日韓国人3世の弁護士・城戸。城戸は、宮崎県に暮らす谷口里枝(安藤サクラ)から依頼を受け、里枝の亡くなった夫<X>の正体を探すこととなります。

ある時、宮崎県の山間部の町に谷口大祐と名乗る男(窪田正孝)が現れます。男の趣味である絵を通して、彼と会話をするようになった里枝は、前夫の息子・悠人を連れて再婚。娘の花も生まれ、家族仲良く幸せに暮らしていました。しかし、山の事故で大祐が事故死。里枝が、疎遠だった大祐の兄・恭一と連絡をとったところ、法要に訪れた恭一は遺影を見て「これ、大祐じゃないです」と言い出したのです。果たしてこの男<X>は誰なのか……?

物語は<X>の正体をめぐるミステリーですが、その過程でさまざまな人間の葛藤が描かれます。<X>は誰なのか。<X>はなぜ別人を名乗ることになったのか。<X>が名前をもらった<谷口大祐>は生きてのか。<X>の幸せはどこにあったのか……。

この映画で石川監督は「アイデンティティとは何か」「自分とは何か」「名前とは何か」という問題を描き出しています。深い余韻を感じさせるこのヒューマン・ミステリー、ぜひ劇場でご覧ください。

『ある男』(121分/日本/2022年)
公開:2022年11月18日
配給:松竹
劇場:全国にて
Official Website:https://movies.shochiku.co.jp/a-man/
(C)2022「ある男」製作委員会

ナイトライド 時間は嗤う

97分の映画をワンショットで撮影し、物語はすべてリアルタイムで進行していく……という、すごい映画が登場しました。それが、映画『ナイトライド 時間は嗤う』です。

この映画がすごいのは、そのワンショット、リアルタイム撮影というのがただの話題作りのギミックではないところ。ツイストに続くツイストでどこに転ぶかわからないそのストーリーも秀逸で、さらにワンショット撮影がストーリーにさらなる緊張感を与え、プラスに作用しているのです。

北アイルランドのベルファストを舞台にしたこの作品の主人公は、ドラッグ・ディーラーのバッジ。引退して堅気になるため最後の大仕事にかかったのですが、ちょっとしたことから計画がどんどんズレていき、絶体絶命なピンチに陥って行きます。バッジはずっと車を運転しながら、各所に電話し、いかにピンチを切り抜けるか、いかに生き延びるか、頭をフル回転させながら、新しい展開を模索していくのです。

バッジを演じるモー・ダンフォードは、実際に車を運転しながら、電話の相手と話すという演技をしています。劇中で警察に車を止められるシーンもあるのですが、その警察は実際の地元警察だそう。ダンフォードは監督の指示で、演技を続けながら警察と受け答えをしており、そのシーンがそのまま使われているのです。また、劇中の音声も吹き替えは使用せず、すべてモー・ダンフォードが演技をしているセリフをそのまま使っているそうです。

ワンショットという撮影手法、ツイストの効いたエモーショナルなストーリーの『ナイトライド 時間は嗤う』。映画をよく観ている人ほど、そのすごさを実感できるはずです。

『ナイトライド 時間は嗤う』(97分/イギリス、フランス、アメリカ/2021年)
原題:NIGHTRIDE
公開:2022年11月18日
配給:ミッドシップ
劇場:ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国にて公開
Official Website:http://mid-ship.co.jp/nightride/
(C)2021 NIGHTRIDE SPV LTD

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