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2021年、映画ライターが選ぶ個人的おすすめ映画10選

2021年もいよいよ大詰め。今年も、たくさんの映画を観てきました。
今回は、映画ライターの松 弥々子が選んだ2021年のおすすめ映画10作品をご紹介します。

2019年まではほとんどのマスコミ試写は各映画会社の試写室などで行われていましたが、2020年からコロナの影響でオンライン試写が行われるようになりました。
ここ数ヶ月は試写室で行われるリアルなマスコミ試写も増えてきましたが、未だオンライン試写も行われています。

家で好きな時間に見られるオンライン試写と、試写室のスクリーンで没入しながら観られるリアル試写、その両方から好きな方を選べるようになっており、映画ライターにとってはありがたい時代となりました。

さて、そんな2021年に観た映画の中から、好きだった作品を10作品選んでみました。
ランキングではなく、観た順番に並べています。
Amazon PrimeやNetflixなど、配信で観た作品に関しては、旧作も入っていますので、ご了承ください。

ザ・ライダー

『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督が描く、現代のカウボーイ家族の物語。落馬事故で怪我をして、ロデオへの夢を断たれた青年の姿を描いています。主人公のブレイディ・ブラックバーンとその家族を演じるのは、実際にサウスダコタで暮らすブレイディ・ジャンドローとその家族。クロエ・ジャオ監督はサウスダコタの自然を舞台に、ジャンドロー自身の実話を静謐な劇映画に仕上げています。

『ザ・ライダー』(102分/アメリカ/2018年)
原題:THE RIDER
Official Website:https://www.sonypictures.jp/he/2373939

マ・レイニーのブラックボトム

『ブラックパンサー』で知られるチャドウィック・ボーズマンの遺作となった作品。劇場公開はされず、Netflixでの公開となりました。“ブルースの母”と呼ばれたシンガー、マ・レイニーのレコーディングの1日を描区ことで、1927年当時にアフリカ系アメリカ人が置かれていた現状や、黒人差別の実態、彼らの哀しみと、断絶の模様を浮かび上がらせていきます。

『マ・レイニーのブラックボトム』(94分/アメリカ/2020年)
Official Website:https://www.netflix.com/title/81100780

ミナリ

韓国系移民としてアーカンソー州の小さな農園で育ったリー・アイザック・チョンが、1980年代のアメリカを舞台に、韓国系移民のアメリカン・ドリームを描いた映画『ミナリ』。異国の地で苦難にあいながらも、セリ(ミナリ)のように静かにその土地に根を張っていく家族の姿を、優しく描いています。第93回アカデミー賞で助演女優賞を受賞したおばあちゃん役のユン・ヨジョンの姿に、おばあちゃんのやさしさとたくましさを見ることができます。

『ミナリ』(115分/アメリカ/2020年)
原題:Minari
韓国題:미나리
公開:2021年3月19日
Official Website:https://gaga.ne.jp/minari/

ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから

愛する女性・オリヴィアと結婚し作家としても成功を手にした青年・ラファエルが、「オリヴィアと出会わず、夢をかなえられなかった世界」へと迷い込み、元の世界に戻ろうと奮闘する姿を描くラブストーリー。パリのオデオン座といった歴史的建造物や南フランス・カマルグの美しい風景の中で、ラファエルがオリヴィアへの本当の愛に気づいていく物語です。手にした幸せの素晴らしさを思い出させてくれるラブストーリーでした。

『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』(117分/フランス=ベルギー/2019)
原題:Mon inconnue
英題:Love at Second Sight
公開:2021年5月7日
配給:シンカ
Official Website:https://love-second-sight.jp/
© 2018 / ZAZI FILMS – MARS CINEMA – MARS FILMS – CHAPKA FILMS - FRANCE 3 CINEMA – C8 FILMS

少年の君

激しい受験戦争、イジメ、ストリートチルドレンなどの問題を抱えた現代の中国を舞台に、イジメを受けた女の子と、彼女を守ろうとする孤独な青年の純愛を描いた物語。チョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシーの二人が、過酷な環境の中で生き抜くために支え合う二人を鮮烈に演じています。現代の若者が直面する厳しい現実とその悲劇を、デレク・ツァン監督が見事にエンターテインメント作品に昇華させた一作です。

『少年の君』(135分/中国=香港/2019年)
原題:Better Days
公開:2021年7月16日
配給:クロックワークス
Official Website:https://klockworx-asia.com/betterdays/

ディナー・イン・アメリカ

変人扱いされながら生きるパティと、パンクバンドの覆面ミュージシャンのジョンQことサイモン。イカれた世界で自分らしさを貫きながら生きるピュアな二人のラブストーリーです。お行儀よいディナーの席でも、どうしてもうまく馴染めずはみ出してしまうパティとサイモンの二人が愛おしくてたまらない、そんな青春物語でした。

『ディナー・イン・アメリカ』(106分/アメリカ/2020年)
原題:Dinner in America
公開:2021年9月24日
配給:ハーク
Official Website:http://hark3.com/dinner/

TOVE/トーベ

「ムーミン」シリーズを産んだフィンランドの作家、トーベ・ヤンソンの半生と、ムーミントロールが誕生して世界的人気を得ていく模様をえがいた一作。政治家との不倫、運命の恋人とも言える女性・ヴィヴィカとの出会いと愛、画家、そして作家としての苦悩と成長……。トーベ・ヤンソンという人の魅力を感じるとともに、彼女が作り上げたムーミントロールの世界の哲学的でシュールな世界観の成り立ちを知ることができる一作です。

『TOVE/トーベ』(103分/フィンランド=スウェーデン/2020年)
原題:Tove
公開:2021年10月1日
配給:クロックワークス
Official Website:https://klockworx-v.com/tove/

ビルド・ア・ガール

93年のイギリスを舞台に、音楽誌でライターデビューした16歳の女の子が経験するあれこれを描いた映画『ビルド・ア・ガール』。田舎町の冴えない女子高生が、自己プロデュースの結果、大胆で奇抜な衣装に身を包み“ドリー・ワイルド”という辛口批評キャラを作り上げ、人気を得ていきます。しかしそこはやっぱり16歳、うぬぼれてしまったりやりすぎてしまったり……。痛々しくも愛おしい、一人の女の子の成長物語です。

『ビルド・ア・ガール』(105分/イギリス/2019年)
原題:How to Build a Girl
公開:2021年10月22日
配給:ポニーキャニオン、フラッグ
Official Website:https://buildagirl.jp/

ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド

1980年台にイギリスで活動していたバンド「ザ・スミス」の解散が発表された日に、「ザ・スミス」のファンである5人の男女が過ごした一夜の物語を描く『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』。音楽に影響を受け、音楽に救われた若者が、その音楽のためにある事件を巻き起こしてしまいます。音楽を愛する者同士でわかりあう、その静かな交流も素晴らしい一作。ザ・スミスを知らない人でも楽しめる、音楽青春映画でした。

『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』(91分/アメリカ=イギリス/2021年)
原題:Shoplifters of the World
公開:2021年12月3日
配給:パルコ
Official Website:https://sotw-movie.com/
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偶然と想像

『ドライブ・マイ・カー』で第74回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した濱口竜介監督の短編映画集『偶然と想像』。二人の登場人物の“偶然”と“想像”、そして思いも掛けないその“結果”を鮮やかなストーリーで見せています。二人の登場人物の対話から導き出される偶然の結果の出来事に、物語の妙を感じられる短編集でした。

『偶然と想像』(121分/日本/2021年)
公開:2021年12月17日
配給:Incline
Official Website:https://guzen-sozo.incline.life/
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