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驚愕のクオリティ!ドラマ『ハンニバル』は芸術的サイコホラー

今回はkayserが紹介します。私のお気に入り映画に、ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』があります。トマス・ハリスの原作をジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスの実力派コンビが演じ、アカデミー賞で主要5部門を受賞した傑作です。続編の映画版『ハンニバル』も非常に面白い作品でした。

そんなトマス・ハリス原作でハンニバル・レクターが初登場する『レッド・ドラゴン』。映画も製作されていますが、そのドラマ版が2013年からNBCで放送されました。タイトルは『ハンニバル』。今回はそのドラマ版『ハンニバル』を紹介しながら魅力をお伝えします!

ドラマ版『ハンニバル』とは

トマス・ハリスの『レッド・ドラゴン』を原作とし、時系列を放送時の2013年現代に置き換えて製作されたドラマが『ハンニバル』です。FBIアカデミー講師で犯罪プロファイラーのウィルをヒュー・ダンシー、彼の精神科医ハンニバルをマッツ・ミケルセンが演じています。

自閉症スペクトラム障害を持つウィル・グレアムは、その症状のひとつとして、罪を犯した犯人に強く共感する能力を持っていました。犯人に共感することで、動機や犯行時の内面を探ることができます。

その障害のため、FBI捜査官の適正試験は不合格のウィルでしたが、代わりにFBIアカデミーの講師となります。そんな彼の能力を現場で活かしたいと考えたFBI行動分析課長ジャック・クロフォード。ウィル起用をFBI顧問の精神科医、アラーナ・ブルームに相談するも反対されてしまいます。

しかしながら、アラーナが指名する精神科医、ハンニバル・レクターの精神鑑定を受ければという条件でなんとか説得に成功するジャックでした。こうして、捜査に加わることになるウィル。しかし、事件解決とは裏腹に徐々にその精神に大きなストレスを与えていくことになるのでした。

ウィルとハンニバルの関係性はもちろん、周囲の人間もハンニバルと関わっていくことで、次第に変化していきます。ウィルの精神鑑定をしながら、ハンニバルが犯罪に手を染めていく......。

犯罪捜査としても楽しめる作品ですが、作品の根底にあるカニバリズムも非常に興味深く、なぜハンニバルのようなモンスターが誕生したのか描かれていくところは必見です。

サブタイトルにも注目!

ドラマ『ハンニバル』では各話のサブタイトルが全て料理にちなんだものになっています。シーズン1は「アペリティフ(食前酒)」や「ポタージュ」といったフランス料理、シーズン2は「懐石」、「先付」といった日本料理、シーズン3は「アンティパスト」や「ドルチェ」といったイタリア料理。それぞれのコースの名前がついているのです。

作品中、ハンニバルが幾度となく自身が殺害した人物を料理するシーンが登場していきます。その腕前も見事なもので、サブタイトルにあるようなコース料理を作り上げてしまいます。しかし、その食材は......と考えると、かなりシュールですよね......。

マッツ・ミケルセン演じる新生ハンニバル・レクター

ドラマ『ハンニバル』の魅力といえば何はともあれ、ハンニバルを演じるマッツ・ミケルセンでしょう。「北欧の至宝」と呼ばれ、『007 カジノ・ロワイヤル』『偽りなき者』などの映画に出演しています。

もともとは体操選手としてトレーニングをし、その後、ダンサーとして活躍してきました。ドラマ『ハンニバル』でも、アクションシーンでの動きは無駄がなくスマート。ダンサーだったと聞けば、なるほどといったところです。

端正で品のあるその立ち居振る舞い、見事な料理、笑顔の下に何か隠しているような奥深い表情は、ハンニバル・レクターそのもの。アンソニー・ホプキンスとはひと味違った、新しいハンニバルを観ることができます。

マッツのハンニバルは、残忍な殺人犯であることを忘れてしまうほど、つい見入ってしまう魅力があります。思わず彼の行動全てを肯定してしまいまそうです。精神的にほかの人間をコントロールすることを得意とするレクター博士、という設定も納得のキャスティングですね。

アーティスティックな映像表現に美しい造形物たち

ドラマ『ハンニバル』は非常に芸術性の高い作品。モノローグやセリフひとつにしても美術や音楽に関することが多く語られています。また、こだわりのカメラワーク、アーティスティックなグラフィックなどの映像美を堪能することもできます。

また、本作で重要な造形物も完成度の高さに驚かされます。死体で作られたオブジェや死体と樹木との一体化などの造形は見事に作られており、芸術作品のような出来栄え。

細部に渡るこだわりにより、作品の独特な世界観が作られています。特に素晴らしいのは「見せすぎない」ということ。作品全体を詩的な表現にとどまることで、視聴者の想像力を掻き立ててくれる、そんな贅沢なサイコホラーです。

ウィルとハンニバルのBL的要素

ドラマ『ハンニバル』において、ウィルとハンニバルとの関係が徐々に変化していく点が興味深く描かれています。患者と主治医としての関係が、いつしか互いにわかりあえる唯一の特別な存在となっていくのです。

ウィルの持つ共感という才能が、ハンニバルという人間をより深く理解していくことに。犯人と同調できてしまうウィル自身が、もともと非常に危うい存在です。ともすれば「向こう側」にいってしまう、常に瀬戸際に存在しているからです。

最終話で2人が対峙するシーン。このシーンではこれまでないほど、いろいろな意味で2人の距離が近づいていきます。この2人の愛にも似た関係が本作の魅力のひとつです。これはシリーズ全体を通して描かれていくものなので、ぜひ最初から観ることをおすすめします。

まとめ

シーズン3で完結という発表をされていますが、多くのファンは復活を望んでいます。2020年には、「Nerdist」の企画により、ドラマ『ハンニバル』同窓会がオンラインで行なわれたのです。マッツやヒューなどのキャスト陣だけでなく、企画・脚本のブライア・フラー、製作総指揮のマーサ・デ・ラウレンティスなど総勢13名が揃いました。やはり続編を熱望しているのはファンだけでないようですよ!

kayser

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