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12月1日・2日公開オススメ映画『ワイルド・ロード』『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』『ブラックアダム』

映画ライターの松 弥々子が、今週末、12月1日・2日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。

ワイルド・ロード

先日「11月18日公開オススメ映画『ザ・メニュー』『ある男』『ナイトライド 時間は嗤う』」でオススメした映画『ナイトライド 時間は嗤う』

この作品では、物語はほぼ主人公が運転する車の中でリアルタイムで進行します。裏社会から足を洗おうと一世一代の大勝負をかけたドラック・ディーラーが、裏社会の金貸から命を狙われ、車の中で知恵を絞って生き抜こうとする物語です。

この作品とどこか似た感触(とは言えテーマはまったく違うのですが)を持つ映画が、今回最初にオススメする映画『ワイルド・ロード』です。この『ワイルド・ロード』の物語は、『ナイトライド 時間は嗤う』と同様に、ほぼ主人公が乗るバスの中で進行していきます。

この作品の主人公のフレディは、環境に恵まれず、幼い頃から犯罪組織と慣れ親しんで育った男。大人になり、愛する娘のために犯罪組織から足を洗おうと、組織から金と麻薬を盗んで逃亡しています。しかし、彼の計画はうまくいかず……。仲間たちは次々に殺され、フレディ自身も腹部を撃たれながら、夜のハイウェイバスに飛び乗って逃走することになるのです。フレディは冷酷な女性ボス・ヴィックの差し向けた殺し屋たちから逃げ切ることができるのか……?

本作ではラッパーの Machine Gun Kelly としても知られるコルソン・ベイカーがフレディを演じ、泥沼の中であがき、片道切符のワンウェイをひた走る男を演じています。金髪で端正な顔立ちのベイカーは、フレディの凶暴さの影に潜む繊細さを見事に表現し、周囲の人間に恵まれず大人から搾取されて育った子どもたちの悲哀を観客に強く印象付けています。

「今までの人生から抜け出し、組織と縁を切ってやり直そうとする男の、車の中での逃走劇」という似たフォーマットでありながら、まったく違ったテイストを持つこの二作。実はこの二作の脚本は、同じベン・コンウェイの手によるものだったりします。どちらもそれぞれに魅力のある作品なので、見比べてみると、それぞれの作品の魅力を、より強く感じることができるかもしれません。

『ワイルド・ロード』(97分/アメリカ/2022年)
原題:One Way
公開:2022年12月2日
配給:アルバトロス・フィルム
劇場:全国にて
Official Website:http://wild-road.jp/
(C)2022 INSPIRED CREATIONS FILM, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ

19世紀末から20世紀にかけて活躍したイギリスの画家・イラストレーターであるルイス・ウェイン。さまざまなネコをモチーフとした絵で人気を博した彼の人生を描いたのが、本作『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』です。

ルイス・ウェインは、絵と数学などが得意な、ちょっと風変わりな男性。母親と6人の妹の面倒を見るために、イラストの仕事をしています。そんな彼が恋に落ちたのは、妹の家庭教師であるエミリー。身分の差から多くの人々の反対を受けながらも、彼はエミリーと結婚します。しかし、エミリーが末期の乳がんであることが判明。エミリーを励ますため、彼は二人の愛猫であるピーターをモチーフに、絵を描き始めます。そしてそのネコの絵が、世間的にも人気をえていくのですが……。

ルイス・ウェインを演じたのは、ドクター・ストレンジでおなじみのベネディクト・カンバーバッチ。空気中にも“何か”を感じてしまうほど繊細で敏感ながらも、周囲の人々を幸せにするために懸命に努力する(でも失敗もする)男の姿を、若き日から晩年まで、さまざまな姿で演じています。

ネコ成分は思ったよりも薄めですが、ネコ好きな人であれば楽しめること間違いなし。イギリスと日本の血を引く新鋭監督ウィル・シャープのテンポのよい演出も、まるで舞台のようだったりおとぎ話のようだったりと、さまざまな魅力を感じさせる一作でした。

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』(111分/イギリス/2021年)
原題:The Electrical Life of Louis Wain
公開:2022年12月1日
配給:キノフィルムズ
劇場:TOHOシネマズ シャンテほか全国にて
Official Website:https://louis-wain.jp/
(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

ブラックアダム

1990年代からプロレスラー“ザ・ロック様”としてWWF/WWEに君臨し、2001年に映画『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』で敵役“スコーピオン・キング”としてスクリーン・デビュー。そして2002年には映画『スコーピオン・キング』で悪役からスピンオフして主役になるという、すさまじいスピードで映画スターへとシフトチェンジを果たしたドウェイン・ジョンソン。

マネーメイキングスター、そしてプロデューサーとしてもヒット作を多く手がける彼が、満を持してDCコミックスの映画化作品に参戦しました。それがこの映画『ブラックアダム』です。

ドウェイン・ジョンソン演じるタイトルロールのブラックアダムは、いわゆるアンチ・ヒーロー。5000年前に愛する家族を失ったアダムが、5000年の時を経て破壊神として復活し、地球で暴れまわります。

そんなブラックアダムから地球を救うために立ち上がったのが、JSA(ジャスティス・ソサエティ・アメリカ)。DC映画である本作ですが、スーパーマンやバットマンといったジャスティス・リーグの面々は登場せず、ホークマン、ドクター・フェイト、アトム・スマッシャー、サイクロンといった、DCコミックスの読者以外にはなじみの薄いヒーローたちばかり登場します。

有名ヒーローが出てないなんて、おもしろいのか……?そんなふうに思う人もいるかもしれません。でも大丈夫。
この作品は、ある意味、DC映画の変換点となるべくして制作された一作なのです。この作品に登場するヒーローたちは、この先DC映画において重要な存在となる可能性を秘めています。

そして、ブラックアダム。スコーピオン・キングが敵役からヒーローになったように、アンチ・ヒーローのブラックアダムも、この先大きな変化を見せるかもしれません。そんな予兆を秘めた映画『ブラックアダム』、ぜひリアルタイムでスクリーンで堪能しておきたいところです。

『ブラックアダム』(124分/アメリカ/2022年)
原題:Black Adam
公開:2022年12月2日
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場:全国にて
Official Website:https://wwws.warnerbros.co.jp/blackadam/
(C)2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

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