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第75回カンヌ国際映画祭、是枝裕和監督作『ベイビー・ブローカー』でソン・ガンホが男優賞受賞!

今回は映画ライターの松弥々子が、是枝裕和監督作『ベイビー・ブローカー』でカンヌ国際位映画祭で男優賞を受賞したソン・ガンホについて語ります。


第75回カンヌ国際映画祭

5月17日(火)~5月28日(土)にかけて行われた、第75回カンヌ国際映画祭。『TITANE/チタン』などに出演した1959年生まれの俳優、ヴァンサン・ランドンが審査員長を務めました。

最高賞であるパルムドールを受賞したのは、スウェーデン人のリューベン・オストルンドが監督を務めた映画『トライアングル・オブ・サッドネス(Triangle of Sadness)』
監督賞は『헤어질 결심』のパク・チャヌク、そして男優賞は『ベイビー・ブローカー』ソン・ガンホ、女優賞は『Holy Spider』のザーラ・アミル・エブラヒミが受賞しています。
また、この『ベイビー・ブローカー』はキリスト教のカトリックとプロテスタントの組織「SIGNIS and INTERFILM」により人間の内面を豊かに描いた作品に贈られる独立賞「エキュメニカル審査員賞」も受賞しています。

是枝裕和監督作『ベイビー・ブローカー』とは

この『ベイビー・ブローカー』は是枝裕和監督が、韓国の映画会社ジップ(製作)、CJ ENM(投資配給)と組んで制作した韓国映画。ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン(IU)、イ・ジュヨンというオール韓国キャストで、「赤ちゃんポスト」に入れられた赤ちゃんとその生母、そして赤ちゃんを違法に仲介しようとする金銭目的のブローカーたち、親に捨てられた子どもが、赤ちゃんの養父母を探すために旅をする物語です。

ソン・ガンホが演じるのは、転落した一市民のブローカー

この作品でソン・ガンホは赤ちゃんを赤ちゃんポストから連れ去り、ブローカーとして養父母を探す男・サンヒョンを演じています。やっていることは犯罪で、もちろん金銭目的なのですが、決して彼は悪人ではありません。
「どうせ養父母を探すのなら、誰かがお金をもらってもいいじゃないか」
借金に喘ぐ彼は、そんな考えで、赤ちゃんをこっそりポストから盗み出し、カン・ドンウォン演じるドンスと二人で養父母を探しているのですが……。

劇中で、サンヒョンの背景は、はっきりは明かされません。しかし、必死に妻や娘を愛し、仕事にプライドを持って生きてきたけれども、それでも生活が苦しく、知り合いの息子から借金をし、家族からも見放されるようになってしまった一市民であることがわかります。
もともと悪人ではなく、愛情あふれる一人の男が、運の悪さから転落し、犯罪に手を染めるようになってしまった……。

だからこそ、仲間であるドンスや、赤ちゃんとその生母、そしてひょんなことから旅についてきた孤児たちに家族のような愛情を抱くようになっていくのです。そして、彼らのために、ある選択をするのですが……。

サンヒョンは決して特別な人間ではなく、本来はどこにでもいる男。サンヒョンが犯す罪は、明日の私たちが起こす犯罪なのかもしれません。
ソン・ガンホはその演技力で、そんなどこにでもいる男だったサンヒョンの変化と決意を、見事に表現して見せました。男優賞にふさわしい演技だったと思います。

盟友でもあるポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』『スノーピアサー』などでも既に国際的な活躍を見せるソン・ガンホ。この男優賞受賞で、名実ともに世界的俳優となったと言えるでしょう。

『ベイビー・ブローカー』(130分/韓国/2022年)
英題:Broker
公開:2022年6月24日
製作:CJ ENM
制作:ZIP CINEMA
提供:ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:ソン・ガンホ/カン・ドンウォン/ペ・ドゥナ/イ・ジウン/イ・ジュヨン
Official Website:https://gaga.ne.jp/babybroker/
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