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ド文系がコラムで科学史をざっくり勉強

スレンドラ・ヴァーマ『ゆかいな理科年表』(ちくま学芸文庫)が、ド文系な自分にも楽しかったよ。

古代から現代まで、約200項目の科学史上のトピックと関連するエピソードを、年代順にそれぞれ見開き800字程度でまとめたコラム集。

「てこの原理」や「種の起源」など小学校の教科書にも載る一般常識から、「地球温暖化」など今日的トピック、フロイトの精神分析のような科学と呼んでいいのか難しい案件、ニセ科学バスターのマーティン・ガードナーみたいな異色の人物まで並列に掲載されているのがおもしろい。

年代順に読むと、まるっと中世がない。古代ギリシア・ローマ時代に立てられた仮説がルネサンス期で検討されはじめ、そこからようやく現代につながる科学の進歩が始まったというストーリーが浮かび上がる。ぼくは科学史について無知なので、そんなものなのかなとも思う。

このコラム、本当によくできていて、ぼくみたいなド文系でもわかる要点を押さえた解説と軽妙な筆致には感心するばかり。タイトルに偽りなし。まさに職人技といえる。巻末に解説がないため、著者のスレンドラ・ヴァーマ氏についてプロフィール以上のことがわからないのが残念だ。

本の元となった文章は、雑誌や新聞での連載なのかな。そのあたりの情報がないのも、とてももったいない。本は、書かれているテキストだけでなく、だれが・なぜ・どのようにしてそれを書き、読者にどのように読まれたも含めて存在している。特に翻訳書の場合、書誌情報がないと、その本のポテンシャルを狭めかねない。このようなコラム集であっても、ぜひ解説をつけてほしいところだ。

ちなみに安原和見氏による訳もよかった。ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイクガイド』の訳者なんだな。あの訳も軽妙で良かったので、なんか納得した。

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