マンガ家が語る「最後までページをめくらせる」方法論――『マンガ家になる! ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 第1期講義録』を読んで
『マンガ家になる! ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 第1期講義録』が、マンガ批評本として、とてもおもしろかったよ。
タイトルだけ見るとマンガ家入門本だけど、技術論やキャラクター論、物語論、市場の状況などを織り込んだマンガ批評本として読むことができ、とてもおもしろかった。
ぼくがリアルタイムでマンガ批評を読んでいたのは2000年代後半、著者名で言うと伊藤剛とか宮本大人くらいまで。それ以降、分析的なマンガ批評はアカデミズムに回収され、門外漢にはアクセスしにくくなった印象がある。アカデミズムとは別にマンガについて書かれた本はあるんだけど、どれも「このマンガがすごい!」やファン本みたいな感じで、ぼくが求めていたものと違っていた(もちろん、気がついていないだけで、良書は出ていたんだろうけど)。
マンガ批評を読まなくなってから、リアルタイムのマンガ自体への興味も薄れていき、この10年くらいはもっぱらアメコミや海外マンガを読んでいた。そういう自分にとって、本書は久しぶりに読んだマンガ批評本で、「そう、こういう本が読みたかったんだよ」と思わせる一冊だった。
その面白さを支えているのは、こうの史代や江口寿史、武富健治、田亀源五郎、ヤマシタトモコら豪華ゲスト講師のマンガ家の講義録だろう。みな語りがロジカルな上に熱がこもっていて、想像以上にマンガに対して雄弁だ。「ゲンロンマンガスクール」という学校の講義で、通常のインタビューとは違うからなのかな。日本のマンガ家って、むかしから「後進を育てる=マンガ界への貢献」に意欲的な気がするし。主任講師のさやわか・西島大介による話の引き出し方も見事。
各マンガ家によって手法は違うが、みな共通して「最後までページをめくらせるにはどうすればいいか」について、具体的なビジョンとテクニックを語っていることが印象的だった。それはつまり、読者の存在を意識しているということでもある。武富健治みたいな作家性が強い人でも、そこはすごく気にしているんだよなあ。
装丁も凝っているし、ゲスト講師によるネームの赤入れも、見ていて勉強になる。久しぶりにどっぷりとマンガを読みたくなってきたよ。
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