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パチ屋のバイト(2)

こんにちは、油断するとヨダレが垂れそうなくらい腹ペコなイヌです。

さて早速ではございますが、前回の続きでパチ屋に居た常連を紹介していきたいと思います。

[もみあげ]
もみあげはある日突然現れ、誰もが振り向く特徴を備えていた。
普通ですと店員達の間であだ名をつけ始めるのは、来店頻度が高くちょっとした特徴があると勝手にあだ名を付けて呼び始めるのが自然な流れだったのですが、彼はそんなゆっくりとしたメダカが泳いでいるような小川みたいな流れを全てを飲みこむ濁流に変え、来店初日からあだ名を授かるという稀有な存在でした。

まあ、あだ名の由来は至ってシンプルでして、もみあげがド凄いのです。
アタクシも最初見た時は、かんぴょん巻きでもぶら下げてんのか?と大変驚いたものです。

さて、そんな魅惑のもみあげで店員達を虜にしたもみあげなのですが、素性を聞いてみると齢は20歳でパチスロでお金を稼ぐ事に特化した専門学生との事で半スロプロってヤツでした。

当時のパチスロはご存知の方もいるかと思いますが、知識と技術と早朝から並ぶ気合さえあれば、ほぼ負ける事がない台が沢山ありまして、代表格とも言えるクランキーコンドル(以下クラコン)なる台はどの店にもあったと記憶しております。

もちろんバイト先の店にもクラコンは設置してあり、連日多くのお客が宵越しのマニーを得ようと来店してましたが、この店では知識も技術も乏しいお客さんが多目だったのです。


さて、ここでちょっとだけパチスロの仕組みを説明します。
パチスロと言うのは設定と言うものがありまして、基本6段階で設定6が1番出る設定、設定1が1番出ない設定となっておりまして、先程お話ししたクラコンは設定1でも知識と技術があれば、ほぼほぼ負けないような台でしてスロプロから絶大な人気を博していたのです。
なので大半の店は設定1で放置ってのが当たり前だったのですが、前述した通りこの店は知識も技術も乏しいお客さんが多かった為にたまに設定1以外の台を複数用意していたみたいです。(主任談)

そして、それを知ってか知らずかもみあげはこの店にかなりの頻度で通い詰めるようになり、かなりの金額を手に入れてたみたいで、それを知ったアタクシは「飯奢れや!」とか「タバコワンカートンくれや!」などとフレンドリーでとてもポップな会話もしていたのですが、もみあげから何かを貰った事は一度たりともありませんでした。ケチ!!!

さて、そんな何もくれないケチンボもみあげでしたが、この店に通い詰めるうちにある女性のお客さんと恋仲になりましてですね、お金も得て女性も得ると言う偉業を達成したのです・・・

ふむ〜
今これを読んでいる方で『スロプロみたいなクズなのに金も女も手に入れたなんて全くもってけしからん!ムキー!』と思っている方がもし居ましたら安心して下さい、もみあげの彼女を見たら溜飲が下がるのは間違いないです。
当時店員達の間では『マジかよ・・』『サーカスに売る為かも?』『動体視力は良いんだけどなあ・・』などちょっとしたざわつきがあったくらいですから。
まあ人の好みは様々なのでね・・・

そして、そんな恋は盲目もみあげが1段階・・いや、3段階上くらいの偉業を達成したのはそれから半年くらい経ってからでした。

その頃、もみあげはほぼ毎日朝から晩まで遊戯していまして、本業が専門学生である事を忘れてしまうくらいでした。
そして、もみあげに最近ずっと来るじゃんなどと話をしてみると、なんともみあげはスロプロとして食って行くと決めたらしく学校を辞めたみたいなのです。
お金もそこそこ手にしメスの珍獣・・もとい女性も手にし浮かれてしまったのでしょう。全くもっての大バカもみあげ野郎です。

しかしまあ言っても学校を辞めるなんてのは特に珍しいわけでもないし、まだ20歳そこそこなんだしどうにでもなるじゃな〜い3段階上とは随分ハードルを上げたんじゃん?とお思いの方いらっしゃると思います。
安心して下さい。
これが1段階目。みきわめ良好判定、第2段階目へ行きましょう。

そして、そこから色々話しを聞いて行くと、なんとあの女性と結婚すると言うではないですか。
これには流石のアタクシも脱糞しかけました。否、出ていたかも知れません。だがそんなアタクシのおパンツ事情はどうでも良いくらいの暴挙・・
あ、暴挙って書いちゃった・・・まあ良いや。暴挙ですよこれは。
そしてアタクシは、その日は彼女も同伴していましたので、その彼女ともみあげを交互に見ながら「お、おう!良かったね!」などと心にもない嘘を平然と言っていたのです。
すると彼女がニッコリ笑うですが、それがまた絶妙な珍獣具合でアタクシは逃げるようにその場を発ったのです。
恐らくあのままあの場にいたら、心に大きな傷を負うやも知れぬと本能が騒いだのでしょう。
そして、その予感が的中してしまうのは約10分後だったのです。はい、2段階目みきわめ良好判定、3段階目行きます。

アタクシはもみあげ夫妻の元を離れホール内をウロチョロと仕事をしているフリをしていましたら、仲が良かった先輩が今にも吹き出しそうな顔でアタクシの元に走って来たのです。
やや?なんだ?またなんか悪巧み考えついたのかな?なんて思っていましたら先輩の口からとんでもない言葉が飛び出してきたのです。

「イヌ!もみあげアレと結婚すんだって!やべえよな!しかも妊娠中だってよ!ブヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

・・・皆さん、これは3段階ではなかったです。書いていて今気付きました。
これは卒検です。
飛び級で卒検1発合格です。
数々の偉業を達成し、妻子持ち無職のスロプロと言う名の特殊すぎる免許証取得で卒業です。
いやー立派です。もみあげも立派ならやる事なす事全て立派です。とてもじゃないがアタクシには真似できません。

とまあ、そんなもみあげ夫妻なのでしたが、それから間も無く前々から決まっていた店の大幅なリニューアルの為1ヶ月くらいの休業期間がありまして、再オープンしてからは1度も来店せず、恐らくは違う店の常連になっていたのかなあ〜なんて思っています。

はあ〜もみあげ夫妻の子見たかったなあ〜。


さて、またも思いの他長くなってしまったので、他のおかしな常連達のお話しは次の機会にでも。
そして、駄文乱文にも関わらず読んで下さってる方ありがとうございます。
面白い!とかつまんね!とかクッソつまんね!とか何かありましたらコメントしていただけると嬉しいです。

おわり

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