音楽家から音楽を引いて残るものは何か

先日とあるミーティングで、アフターコロナの音楽家の生き方について話していたところ「音楽家から音楽をとって残ったものこそが、社会に役立てられる部分ではないだろうか」と投げかける方がいました。一瞬ピンと来なかったけれど、考えてみるとハッと気付き、これはよく考えてみると面白そうだと思ったので、考えつつ書きつつ記事にまとめて行こうと思います。

「音楽家から音楽を差し引いて残るものは何か」
せっかくなので読んでいる方もちょっと考えてみてください。

...どうでしょう

僕はその投げかけを受けてけっこう衝撃的でした。
というのも「自分から音楽をとったら何もない」というのが正直なところだからです。音楽しかやってこなかったし、だからこそ音楽でなんとかなってやりたいという思いもある。自分を目立ってアピールできるようなアイデンティティは音楽しかない。他に考えたこともない。これが素直な本音です。音楽家でこれに共感できる方って割といるんじゃないかと思いますがどうでしょう?

「じゃあ何も残らないから社会貢献できないのか」って思ったのですがそういうことじゃない。例えば、音楽家の中には楽器もできるしチラシのデザインもできるような人とか、普通大学や医学科でありながらプロの音楽家だとか、一般企業に勤めながら音楽活動を両立させている人とか、世の中には音楽ができなくても別の仕事で生計を立てられそうな凄いスキルを持つ人たちがいます。でもこの投げかけの真の意味はそういうマルチスキルを持ちなさいよ、音楽以外の社会貢献活動をしていきなさいよ、ということではなく、音楽家が音楽家として活動する上で、実は純粋な音楽以外の面で色々な能力を培っていて、それは何か考えてみよう、それこそが音楽家が音楽をしながら社会貢献をして生きていくためのヒントである、ということだと思いました。コロナで音楽家は仕事がなくなりました。やっぱりいざ生きていくためには音楽は必要ないのだ、真っ先に切られてしまうものだ、不要不急の娯楽だ、好きなことをやってるだけの芸術家に支援なんて不要だ、など色々な意見を耳にすることもあるけど、そんなこと言わせないために、自分自身がしっかりと持論を確立しておかねばならない、コロナ時代でもそうじゃなくても、世間に必要とされるための軸を持っていることで、この先音楽家が淘汰されずに、社会で生き残っていくための強い武器になりうるのかもしれません。

...前置きで1000字になってしまいましたが、具体的に音楽家から音楽を引いた能力を自分なりに考えてみました。


継続力

音楽でプロになるためには子供の頃からずっと練習や勉強を積み重ねて何年・何十年と同じことをやり続けることになると思います。続けられるというだけで才能ではないかと思うくらい、継続って大変だし凄いことではないかと思います。

根気・根性

いくら楽器が好きでもプロになる道が簡単なはずがなく、幾度も辛い経験を乗り越えているかと思います、そこで培われた根気は半端じゃない。基本なんだかんだメンタル強い人が残っていきます。

好きなことを仕事にしたという事実

世間は1億総フリーランス時代になるという話にもあるように、会社勤めから独立して「好きなことを仕事にして生きていく」を目標にして幸せを追い求めて生きるという人が増えてきているというのを耳にします。それってよく考えるとアーティスト界隈では当たり前のことで、何か1つ極めたという事実はそれだけで凄いはず。

本番力

音楽家は一般職の人より遥かに「本番」という経験値が高いです。人前で何か見せるというスキルを常日頃から磨き、常に人前に立って発信する仕事なので、そこで鍛えられた本番力はやはり強い。

企画力

コンサートの企画をするとき、特に僕の場合は常に季節・会場・お客さんの層(対象者)などからどんなものがいいか考えていきます。イベント企画の主催者や会場と打ち合わせをして、人に何か少しでもいいものを持って帰ってもらえるような、寄り添った企画ができたらと思っています。こうやって考えてきた力は、社会貢献の可能性としては個人的にかなり重要度が高い能力な気がします。

コミュニケーション能力

「うまく言葉にできないから音楽をやっているのだ、だからコミュ障が多いのだ」という説もあるのですが、音楽家はコミュ力高い人は高いと思います。音楽でコミュニケーションしているし、いい仕事のためにはいいコミュニケーションが必要だし、MCで鍛えたトーク力もあります。音であれ言葉であれ、基本的に人に向けて何か発信したり受信する能力が高いと思います。あとオーケストラに所属する楽器の人たちなどは高い社交力が備わっていないとやっていけないような話を聞きます。

アンサンブル能力

アンサンブルは、音、呼吸、空気感など様々な感覚を駆使して演奏を合わせたりする高度な技術だし、あらゆる面で臨機応変な対応力も求められるし、協調性やコミュニケーションも必要だし、人間力が総合的に必要です。アンサンブルに長けている人ほどその力が凄いと思います。


大きく今思いついたのはこんな感じです。他にもあれば是非教えてください。これって多分、就活音大生とかは企業に強みをアピールするときに当たり前に考えているのだと思います。音楽家は音楽以外の面で秀でた能力をたくさん持っていると思います。音楽をするのはもちろん、これらの力を意識的にフル活用していくことで何か見えてくるものがないだろうか、もっと社会貢献に繋がるようなことを実現できるのではないだろうかと考えていきたいです。



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