『高校数学のロードマップ』B_1(参考編_集合編)2(演算)2(集合~写像)

(2019/11/27差し替え)

(※注:「理系に進学したいが数学が苦手な知人の高校生に、数学の良さを教える」というミッションのための草稿を、あらかじめWebに掲載して、ダメなところを指摘してもらおう、という趣旨の記事です)

(2022/5/26追記)
このB_1の記事はことさら使用に堪えません。何もかもデタラメの恥ずべき記事です。今では集合論と論理学と圏論の順序がおかしいと思います。論点先取をやっている疑いが極めて強い。とはいえもう納品してしまったので(そしてこの高校生は今は国立大学に見事合格してしまったので)今更しょうがないんですよね…困ったな。

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★集合から記号まで

・ここから圏論上層の話です。(圏論全体から言えば上層でも何でもないのですが、B参考編ではこれ以上使うことはないので、上層として扱います。)
・さっき書きましたが、記号の最も根本的な性質として、「連結出来る」というものがあります。「じゃあ連結能力とは何か」という話ですが、実はこれは、演算能力と呼ばれる前の、原始的な演算能力、結合性のことだと考えて下さい。
・普通の代数的構造の演算能力は、写像から来たものである、という話を今からしようとしているのですが、今言った結合性は、もっと基礎的で、射から来たものです。
射の結合性については既に、B参考編の集合の章の圏論の節で説明しましたが、記号の連結能力はこの性質をそのまま反映させたものです。

・記号には、射に由来する「連結出来る」という性質の他に、集合や元に由来する「始まりの状態がある」という性質があります。つまり、記号は空文字””から記号を連結させて作るものなので、始まりの状態としての空文字””があるんですね。こういう始まりの状態となるものを、集合の中の特別な元と見なし、単位元(たんいげん)と言います。
 この、「結合性がある」「単位元がある」という性質を持つ、代数的構造と呼ばれる前の、原始的な代数的構造を、モノイドといいます。(大学でないとやらないキーワードです。)
 そして、そういったモノイドの具体例が、記号だと考えて下さい。

集合→圏
圏→モノイド→記号

★記号からZFC公理系の一部まで

・ということで、圏論上層から論理学下層、論理学下層から集合論上層(公理的集合論)につなぐことができます。
・論理学下層を何に使うのかというと、さっきの公理の話になるのです。
・今回は集合から写像を作らせるためのルールが欲しいので、そういうルールをたくさん作ります。写像を定義するのに必要なのはZFC公理系7種類です。内訳は以下の通りです。
「外延性公理」「空集合の存在公理」「非順序対の存在公理」「合併集合の公理」「冪集合の公理」「正則性の公理」「置換公理」。
「こんな偉そうな名前のものが7種類もあるのか!?」となるかもしれませんが、まああるんです。
こんなにある7種類のルールを使うと、実はただの集合を、原始的に四則演算したり冪乗したりできます。(さっきも書きましたが、まだ自然数は作れません。)
なお、これは普通の数とかで見られる四則演算とは微妙に違います。これも原始的な演算能力と考えて下さい。(結合性よりは複雑です。)
公理の中でも、ZFC公理系9種類は、基本的にほとんどが等号付き一階述語論理レベルの記号でないと書けないようになっています。
 というわけで、下のようなロードマップになります。

記号→等号付き一階述語論理の記号→ZFC公理系(の一部)

★ZFC公理系の一部から写像まで

・ここからは、ZFC公理系を集合に使って、実際に公理的集合論をやっていきます。
ZFC公理系の7種類によって作られる重要なキーワードとしては、非順序対(ひじゅんじょつい)、順序対(じゅんじょつい)、直積(ちょくせき)、対応のグラフ、対応(たいおう)、像(ぞう)、写像があります。(この順で高度になります。)

ZFC公理系(の一部)→非順序対→順序対→直積→対応のグラフ→対応→像→写像

非順序対は、2つの元を持つ集合です。{x, y}または{y, x}と書かれます。「集合は元を持っていいし、それが複数であってもいい」という程度に理解して下さい。
順序対は、非順序対のうち、xとyをひっくり返せないものです。(x, y)と書かれます。

・直積は、順序対を詰めた集合です。
どういうことかというと、集合Aのa個ある元全てに異なる色を付けて、集合Bのb個ある元全てにさらに異なる色を付けると、これの組み合わせを順序対で書けます。
そういう順序対のバリエーションはa×b個になるのですが、これを全部詰めた表みたいな集合というのが考えられます。この順序対の表みたいな集合が直積だと考えて下さい。
(この性質が自然数の掛け算に引き継がれるので、自然数はa×bという、お馴染みの掛け算が出来ます。)
(ちなみに、公理的集合論では、集合の集合というものを作りたくなった場合、許容されている集合の集合と、許容されていない集合の集合があります。許容されている例として、上で説明した直積がある、と考えて下さい。直積は問題なく使えます。ご安心下さい。)

・対応のグラフは、中学校数学でもお馴染みの、関数のグラフの基礎となるものです。しかし、数や面を必要としないで成り立つので、より原始的なものです。何かというと、対応のグラフとは、直積の一部を抽出したものになります。
・対応のグラフから着想を得て、順序対の前者の元xを入れたら、xを何らかのやり方で加工するルールf()に従って、後者の元f(x)が出て来るような仕組みを考えてみてください。対応とは、対応のグラフの中にある、順序対の前者の元から後者の元を加工するルールf()のことです。

対応の終わりである後者の元、またはその集合を像と言います。(集合としての像は、後者の集合全体、すなわち先ほど説明した集合Bより小さくても構いません。)
対応の始まりである前者の元と、後者の元(=像)の1つとの間に、対応するルールが存在したら、それを写像と言います。
 何が言いたいかというと、対応だと、前者の元を入れて、後者の元が複数パターンも出力される場合があります。そもそも、対応する後者の集合が、空箱みたいな空集合だった場合、出力がない、ということさえあります。そういうのを避けたものを、特別に、写像と呼ぼう、ということです。
(なお、後者の元(=像)の1つに対応する前者の元が複数パターンある場合がありますが、こちらは問題なく写像と呼んでも大丈夫です。
例えば、f(x)=x^2、つまり2乗という写像があり、後者の元が1の場合、前者の元は1か-1になります。このような写像は認められます。
問題が複数あっても答えが1つなら、それは別に構わないが、問題が1つなのに答えが複数あったり、答えがなかったりするようなら、それはちょっとシンプルには扱えなくなるでしょう。シンプルに扱えるものとそうでないものは分けておきたくなります。対応と写像を分けているのも、だいたい同じ理由だと思って下さい。)
・と、こういう順で写像を作っていきます。面倒くさい? そうですね。
でも、ある集合のある元を入れたら、別の集合の別の元を1つだけ出力する、という仕組み、いろいろ便利そうだ、ということだけイメージしていただければ結構です。

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