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創作メモ(2021/2/24_2):勝手創作『予言刑事クダン』(人情編)第n話『VS.カルト教団『烏腐肉(ウーフニック)ワークセンター』』

1.『予言刑事クダン』(人情編)第n話『VS.カルト教団『烏腐肉(ウーフニック)ワークセンター』』

注:これは2021/2/24頃(始まりはもっと前)に、Twitterでごく局地的に流行した集団幻覚『予言刑事クダン』から着想を得た、勝手創作です。

***

予知能力で真相を解明し、予言として人に伝える代わりに、命を失い、そして生き返る。
そんな異常体質の異常刑事、件(クダン)。
人呼んで『予言刑事クダン』。

不透明な基準で、36人の人々を、保護と称して軟禁する謎の施設、『烏腐肉(ウーフニック)ワークセンター』。
件は今回、烏腐肉ワークセンターの潜入調査を進めるうちに、センター長を称する神父然とした謎の男・宇風(ウフウ)、そして36人の1人、二九子(ニクコ)と心を通わせる。
しかし…

「ここまで探るとは、いやはや、大したものだね、件君。
…私はね、居るだけで世界を守っている、36人の呪われし善なる超能力者、『烏腐肉』たちを、死なせたくないのだよ。だから『保護』しているのさ」
「何?」
彼らは、自分の正体を知ると、死ぬのだ。世界の不完全さの割を食った、哀しい呪いだ。そんなこと、誰が許すか。彼らには天寿を全うしてもらいたいのだ」
「何を企む!」
「企んでなんかいないさ。
私の父も、母も、『烏腐肉』だった。
私だけが違った。何の呪いも覚悟もない、身も心も、ただの人だった。
そして、彼らには呪いはあっても、覚悟なんか強いられる謂れはないのさ。分かってもらえないかね」
「そうかよ。だが、お前のやっていることは軟禁だ。
彼らが脅威を強いられないために、お前が不自由を強いているだけじゃねえか。
こんなことを、正義の名の下に曖昧に許してたら、警察なんか、成り立たねえんだよ!」
「はっはっは。いかにも公僕、ご立派な法の番犬の言いそうなことだ。
安心したよ件君。やはり君とは相容れない。これで何の気兼ねもなく葬れる」

「あーあ、そうとも。俺は公牧(こうぼく)の畜生(ちくしょう)だよ。
だがな、法と、自分の見たものと、言ったことだけは、命に替えても、裏切れねえんだ!」

「ほう。何を見たのかね。
知ってるよ件君。それを私が聞いたら、君は、死んでしまうのだろう?
無論、私は君を葬る。
だったら、わざわざ君が自ら死のうとすることもあるまい。やめとけばいいものを」
「そう言うと思ったよ、このお優しい教祖様気取りが。
だがな。言ってやる。
残念だが、

『お前は自分の保護していた信者に刺されて死ぬ』

「な…?」

己の左側の、ちょうど脾臓のある方を、愕然とした顔で見る宇風。そこには、

「二九子! 君は…!?」
「あなたは私達を守ってくれた。でも私達はちっとも幸せじゃなかった!」
「バカな! 聞かなくていいことを! 知ってしまったら君は! 死」
「知ったこっちゃないわよ! 私は何も知らないまま死ぬのは真っ平よ! あなたの大事な庇護者? 私は庇護されたくない! 納得して生きて死にたい!」
「バカな! 死ぬんだぞ! 死なないことが、生きることが、何より大事ではないのか…!」
「そんなあなたの勝手に、私達を、いや、私を巻き込まないで!」
「そんな…」
「私には、世界を守る力があるって言ったわよね。
私は、そんな力、要らない! センターの他の皆さえ守れればいい! 皆が、自由に生きて、そして天寿を全うすればいい!」

奇蹟の光を放ち、その後倒れる二九子。

「は…ははは…なるほどなるほど…どうやら私は、君達を…否、君を弱く見すぎていたようだ…君は…強く…大したものだ…」

宇風、死す。

「二九子!」

己も口の端から血を流しながら、二九子の元に駆け寄り、そこで倒れる件。

「クダンさん…あなた、教えてくれたよね…
分かってしまっても、何もいいことがないこともあって…
それでも、分かってしまったら、やらずにはいられないこともあるって…」
「ああ、そうだよ。本当はな、俺は、こんなこと望んじゃいなかったんだ。俺は見たんだ。お前は…死ぬ」
「そう…なんだ。クダンさん…私、やっぱり、怖いよ…」
「そりゃそうだ。俺だって何度死んでも怖いよ」
「ふふふ…変なの…」
「一つ、教えてやる。これが最後だ。これを言ったら、俺は本当に死ぬ」
「えっ? そんな…聞きたくないよ」
「いいから聞け。

『お前が守ろうとしたセンターの他の皆は、これからいろいろあるが…それでも、全員、自由に生きて、天寿を全うする』

呆気にとられ、その後くしゃくしゃの泣き笑いを浮かべる二九子。

「ありが…とう…」
「安心して逝けるか? せめて、今は、死ぬまで付き合ってやる」
「ふふ…嬉し…い…」

口から大量の血を吐いて、二九子を看取ると、己も事切れる件。

***

数日後。復活した件と、先輩刑事。

「墓参りか」
「センターの皆、連名で、宇風と二九子の墓を、それぞれ別々に作ったんですよ」
「宇風の…?」
「皆、宇風の身勝手な親心も、自分達の呪いも、何もかも知らずに、巣立っていった」
「おい。皆、何も知らないのか? それでいいのか? それはあまりにも…」
「知らなくていいことまで知る自由を得たら、死んじゃう人って、いるんですよ。俺や、あの娘や、彼らみたいに。
それでも知った方がいいかというと、あの娘はそれで良かったんだ。俺もそうだ。分かる。
でも、彼らは別に、そうじゃないでしょう。じゃあ、わざわざ言うこたぁない。
俺は俺、あの娘はあの娘、彼らは彼らだ」
「…そして、宇風は宇風、か?」
「そうです。
あの娘は、自分の人生を走りきった、立派な一人の人間だった。
あの男も、押し付けがましいが、彼らを守ろうとしていた、優しいやつでしたよ。
どちらのためにもなるようにしてやりたかったんですよ。
それで、彼らが、これからも彼らの人生を生きていけるんなら、なおさらだ。
余計なことまで、口にする必要はないでしょう。黙っているのが正解だ」
「お前…」

「俺は結局、こんな風に皆を誤魔化すし、あの娘と一緒に死んでやることもできない、悪いやつだ。
だから俺だけ、あの娘と違って、あの世から追い返されてるんでしょうね」

呆れ果てる先輩刑事。

「…お前、本当捻くれてんな。そんな誠意や優しさなんか、彼女もそいつも、きっと何一つ喜ばないぞ」
「知ってますよ痛!」
「黄昏れてんじゃねえやこのバカ。行くぞ」

先輩刑事に缶コーヒーの角で後頭部をどつかれ、ブツブツ言いながらその缶コーヒーを飲んで去っていく件。

件(クダン)が語る、明日はどっちだ。
(エンディングテーマ)

***

2.次回予告『予言刑事クダン』(人情編)第n+1話『VS.豪腕怪人『美濃太郎助(ミノタロウスケ)』一味』

焼肉チェーン店、美濃州(ミノス)グループ。
だが、共同経営者、関東エリア統括の美濃(ミノ)と関西エリア統括の八野州(ハチノス)の間には対立があった。
これに、北海道エリア統括の千枚(センマイ)と沖縄エリア統括の宜粗(ギアラ)の思惑が絡み、事態は混迷を極める。
そんな最中、発生する殺人事件。四国エリア統括の波津(ハツ)の白骨死体。
重要参考人として指名手配された九州エリア統括の令場(レバ)だったが、そこにはとてつもない事態が待ち受けていた。
次回、『予言刑事クダン』(人情編)第n+1話『VS.豪腕怪人『美濃太郎助(ミノタロウスケ)』一味』
危うし! 迷宮入り殺人事件!

***

3.『予言刑事クダン』(人情編)参考資料

・発端のワタリ・ニンジャ=サンの午前2:15 · 2019年10月22日のツイート

・だいたいの流れが分かるTogetterまとめ

・妖怪『件(くだん)』

(Wikipedia)

なお、今回のヘッダの著作権は、水木しげるに帰着することを記します。(もし何かあったらどうにかします)

・ボルヘスら『幻獣辞典』(『足萎えのウーフニック』元ネタ)

(Wikipedia)

(Amazon)

・『足萎えのウーフニック』

-地上には、神の前にこの世を正当化する使命を帯びた正しき人間が36人いる、またつねにいた。
それは足萎えのウーフニックたちである。
彼らは互いのことを知らず、そして大変貧しい。
もし自分が足萎えのウーフニックであることを悟ると、その者はすぐに死んで、たぶんこの世のほかの場所にいる別の誰かがそのものに替わる。
足萎えのウーフニックたちは、それと知らずに宇宙の隠れた柱になっている。
彼らがいなければ、神は人類を全滅させてしまうだろう。
気づかないままに、彼らはわれわれの救い手となっている。-
(ホルヘ・ルイス・ボルヘス著「幻獣辞典」柳瀬尚紀訳 河出文庫」より)

・モンスター『ミーノータウロス』

(Wikipedia)




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