本当にあった(かもしれない)怪談百物語 4.マリちゃん(前)
「マリちゃん」
前に関西に住んでた時の話なんですけど、今で言うマッチングアプリ使うて、彼女募集してたんですよ。
けっこういろんな女の子と連絡取り合って、そん中で1番気の合うた子と、実際会おうかって話になったんです。
名前は、ホンマの名前出したらヤバいから……、マリちゃん。仮にね、マリちゃんってことで。
ほんで実際マリちゃんと会うてみたら、ぶっちゃけ顔はね、写真で見るより微妙やったんですけど、良く言うたら癒し系?みたいな?そんな感じ。
とりあえずメシでも行こかってなっファミレス入って、まぁ喋ってたんですけど、ほんまに話はめっちゃ合うんですよ。
俺の話全部にええ感じで返してくれるし、ノリも良いし。
ええ感じに盛り上がったし、ほなカラオケでも行こかってカラオケ行って、その日はそれで解散したんです。
またな〜って別れて、今日はありがとうみたいなやりとりちょっとして、それで終わったつもりやったんですよね。
やっぱええ子はええ子やけど、もっとこう、見た目的に好みの子がおったらそっちがいいやないですか。
マリちゃんの方から、今度いつ会おうか?みたいなメッセ来てたんですけど、それには適当に仕事が忙しいみたいな返信して、俺は別の子とやりとりしとったんです。
悪いなぁと思えへんでもなかったんですど、他にいい子がおれへんくて、気が向いたらまた会うてもええかなーって、俺はそんくらいの気持ちやったんですよ。
ほんでもマリちゃんからは毎日のように、「次いつ会える?」みたいなメッセが来るから、ちょっと重い子なんかなーって思って、適当に返すんもめんどくさいなー、どうしようかなー、もう無視してええかなーって考えてたんですけど、ある時ね、マリちゃんからメッセが来たんですよ。
「今なにしてるん?」
「仕事終わって帰ってきたとこやで」
それ自体は嘘やなかったんですよ。ほんまにちょうど家帰ったとこやったんで。そしたら、
「わかった〜」
って、来たんですよ。
珍しなぁって。だいたいその後、「いつ会える?」って送ってくるんですけど、そん時はそれであっさり終わったから。
まぁ俺がずっとそっけなかったから飽きてくれたんかな?それやったら助かるなって気にせんかったんです。
で、風呂入って着替えようかな〜って準備しとるときに、ピンポン鳴ったんですよね。家の。玄関のやつ。
こんな時間に誰やねんって思ったんですけど、そん時住んでたのってオートロックとかやないマンションやったんで、癖でそのままガチャって開けちゃったんですよ。
そしたらおったんですわ。マリちゃんが。
変な声、出したよね。ふぁっ?みたいな。そんくらいびっくりしたんです。
「カズくん忙しいみたいやし、あたしの方から来ちゃった」
ってほんま普通にスーパーの袋持って立っとって、なんでおるん?なんでうち知っとるんや?とかもう、いろんなことでぶあぁってなってもうて、
「いや、え……?は?」
みたいな。まともに喋られんかって、どうにかこうにか出てきたんが、
「なんで?」
ですからね。めっちゃテンパってましたわ。
「だってカズくん、忙しい言うてなかなか会ってくれへんし、コンビニ弁当ばっかでちゃんと食べてへんみたいやし、ご飯作ったろう思って」
めっちゃ笑顔で普通に言ってるけど、なんで俺の食べてるもんとか把握してんねんって。めっちゃ怖くないですか?
「いやいやいや!そんな急に来られても困るわ!」
「なんで?部屋散らかってんの?あたし掃除しよか?」
「ちゃうちゃう!いきなり押しかけられても困んねんって!」
「ええやん別に。あたし家事めっちゃ得意やねんで」
「そんなん知らんし!」
もうね、なんて言うか、話が全然通じひん!
俺が何言うても、聞かんととにかく部屋に入ろうとしてくるし、絶対入れたらあかんって思って、とにかく追い返さなって必死やったんですよ。
まぁただ言うて女の子やし、あんまりひどいこともできんし、できるだけ優しく優しく説得してたんですよ。
でもね、
「なんでなん?ええやん、うちカズくんの彼女なんやし」
それ聞いた瞬間ぞっわぁーってなってしもうて、
「誰が彼女じゃ!帰れっ!」
言うて、無理矢理押し出してドア閉めたったんです。
一応言うときますけど、ほんまに一回メシ行ってカラオケ行っただけで、付き合うとかそんな話一個もしてへんのですよ。
やのにマリちゃん、その閉めたドアをドンドンドンッ!ドンドンドンッ!って殴りながら、
「なんで!?なんでなん!?あたしら付き合うてるやろ!?」
っ叫ぶんですよ。
「付き合うてへんわ!帰らんと警察呼ぶぞ!」
って言い返してもぜんぜん止めへんくて、こらほんまにあかん奴やなって思って、仕事に必要なもんだけまとめて、窓から逃げました。
後から、おらん間に部屋入られたらいろいろやばいなって気づいたんですけど、そん時はもうとにかくどっか逃げたい一心やったんですよ。
その日は、ネカフェで一晩過ごして、そんまま仕事行きました。
俺が部屋ん中におらんの気づいたんか、アプリで鬼みたいにメッセ送ってきたんで、すぐ退会して消したんですけど、なんでか家ばれとるし、帰りたないなーって思ったんで、事情話してしばらく友達んちに泊めてもらうことにしました。
引っ越したかったけど、そんなすぐ引っ越せるようなお金もなかったんで。
ただそれでも持ち出さなあかんモノ結構あったんで、次に休みに日に友達に付き添ってもろうて、一回帰ったんです。
まず友達に様子見てもうて、部屋ん中から音せえへんの確認してから一緒に中入りました。
腰抜かすかと思いました。
テーブルにね、料理が並んどったんです。丁寧にラップかかって、「温めて食べて」ってメモ付きで。
ほんで使ったはずのキッチンはキレイになっとるし、部屋もよう見たら掃除してあるし、もう自分どういう情緒しとんねんって。
友達とやばいやばい言いながら、ばったばった荷物まとめて逃げ出しました。
ほんまあの料理を見た時は、びっくりしすぎて死ぬかと思いましたよ。
まぁ、あん子がほんまにエグいんは、この後なんですけどね。
続
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