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2017年2月12日 21:14
※哉村氏とのリレー小説です。前回はこちら。第一回はこちら。 眠っているかれのうなじはかすかに茶色がかった髪の毛がきれいにおおっているので見えない。ふわふわとした柔らかそうな髪の毛で、黒くて重たい自分のものとは違うなと残雪は思った。そういえば初めて会ったときは油か何かを塗っていたようでもう少し艶があった気がする。後ろもくしゃっとしたみたいになっていて、だから、日本人じゃないかなと思ったんだ。ここ
2017年2月8日 20:45
※哉村氏とのリレー小説です。前回はこちら。第一回はこちら。 子供は落ち着いたかと思うとめそめそ泣き出した。あんなものを観てしまったらしかたないと行彦は思った。多分、彼にとっては見知らぬ少年だったあれも、この子供にとっては短からぬ月日を一緒に過ごした級友のようなものなのであろう。クラスメイト、その言葉はいまいちここになじまずに、すこし滑稽な響きすら持って行彦の心の中にあった。 「いつかぼくも
2017年2月6日 18:30
※哉村氏とのリレー小説です。前回はこちら。第一回はこちら。 残雪の顔からさっと血の気が引いたようだった。長い間陽に当たっていないのだろう白くて肌理の細やかな頬、何かを言おうとして開かれて、一瞬の迷いのうちに結ばれた唇。ここの人間はみなどこか人形のような雰囲気があると行彦は思った。声をかけるべきか、逡巡しているとベストの裾をぎゅっと掴むものがいた。残雪を呼んだという小さな子供だ。目に涙がいっぱい
2017年2月2日 22:53
※哉村氏とのリレー小説です。前回はこちら。第一回はこちら。 不思議なことにここにやってきてから三日ほど、まったく空腹になる気配がなく、明らかに妙なことばかりで、夢をみているのか、もしくは死んでいるのじゃないかと疑い出したころだった。朝起きて、あ、おなかがすいた。と思ったので、流石にあの世じゃなかったのか、ぼんやりと考えながら身づくろいをして部屋を出るとちょうど別の扉から出てきた残雪と鉢合わせた