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第65回:思い出し笑い「落語三兄弟?いいえ、落語教育委員会です」(&ツルコ)


第65回:落語三兄弟?いいえ、落語教育委員会です

*intoxicate vol.120(2016年2月発行)掲載

 落語会って、噺家さん自らが立ち上げたり、ご贔屓さんが好きな噺家さんに声をかけて始まったりなど様々ありますが、噺家さんたちによる会は、同期同士の勉強会だったり、かつてのSWA(創作話芸アソシエーション)のように新作落語派が集ったりと、その成り立ちがわかるものが多いのですが、「落語教育委員会」という名の落語会は、“なぜこのメンツ??”って不思議に思った会でした。柳家喜多八(やなぎやきたはち)、三遊亭歌武蔵(さんゆうていうたむさし)、柳家喬太郎(やなぎやきょうたろう)の3人なのですが、世代が違い、同じ門下でなく、共通点といえば落語協会に所属しているくらいで。


 喜多八は柳家小三治門下の66歳。“清く、けだるく、美しく”をモットーにしているだけあり、マクラでも話していますが宝塚ファンで、2010年の円朝まつりでは、キタナヅカ歌劇団“永遠ちはや”という男装の麗人的なナリで登場し、会場の谷中・全生庵の階段を宝塚の大階段に見立てて歌いながら降りて来るというパフォーマンスを披露、大受けしてました。You Tubeで「柳家喜多八、キタナヅカ」で検索すると、その麗しいお姿を観られます!


 歌武蔵は三遊亭円歌門下の47歳。喬太郎よりも年下ですが、15歳で入門してるので、芸歴としては6年ほど先輩なんですね。相撲部屋に入門したものの半年で噺家に転身。見るからに力士な風貌なので、高座にあがると開口一番「ただいまの協議につきましてご説明いたします」と相撲ネタでまず笑いをとれる最強のキャラクター。


 喬太郎は柳家さん喬門下の52歳。これまでに何度もここでご紹介していますが、数々の新作落語を生み出し、古典落語も手がける、独特の存在感で高い人気なのはご存知のとおり。


 こんな3人が2004年に立ち上げたのが「落語教育委員会」。落語協会事務所で稽古をしていた歌武蔵に喜多八が声をかけたことがきっかけで、もう1人誘って会を始めようとなったときに、2人とも候補にあげたのが喬太郎だったのだそう。実力派3人の落語が聴けるというので今もチケットのとれない落語会の1つですが、会の最初に3人が登場して、“携帯電話を切りましょう”をコント仕立てで演じることも毎回のお楽しみ。台本を考え、衣装もそれぞれが準備するということで、これを見逃さないために、会に遅れて来るお客さまがほとんどいないとか。この会がもう10年以上続いているということは、3人の相性がいいんでしょうね。それぞれをリスペクトしつつも、刺激にもなって、いいバランスが保たれているようにみえます。この3人、ちょっと斜め目線なところ、共通しているかも。


 今月は、「落語教育委員会」の3人が揃って新作CDをリリース。喜多八は、膝栗毛シリーズの6作目。「噺家の夢」のバカバカしさに、これだから落語っていいなーと。喬太郎は、アナザーサイドのシリーズで前作から続いて小泉八雲の怪談2作品を落語化。「衝立の乙女」を原作とする「ついたて娘」は、新たな設定を工夫し、落語として聴かせます。歌武蔵も大落語集シリーズの4作め。テンポのいい「天災」と、このルックスだから面白い「お
菊の皿」で歌武蔵落語を楽しんでください! 「お菊の皿」は「落語教育委員会」での収録高座ですので、マクラでは冒頭のコントのことや、ほかの2人のことをおもしろおかしくしゃべっています。


 この「落語教育委員会」、地方でも公演を行なっていますが、3月に東北ツアーがありますので、公演地のみなさま、ぜひお見逃しなく! この会に行かれるかたは、くれぐれも遅刻なさらないように!


CD   『柳家喬太郎落語集 アナザーサイド Vol.5』
     「 重陽」「ついたて娘」柳家喬太郎
   [Columbia COCJ-39438]

CD 『喜多八膝栗毛』
  「 噺家の夢」「やかんなめ」「お直し」柳家喜多八
  [Columbia COCJ-39439]

CD 『三遊亭歌武蔵 大落語集』
  「 天災」「お菊の皿」三遊亭歌武蔵
  [Columbia COCJ-39440]

思い出し笑いライン



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