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美が宙を舞う

美が上を舞う

美が下を舞う

美が前に拡がる

美が後ろを拡がる


私はそれに取り囲まれている

私はそれに包まれている

私はそれに浸っている


いつどこにいても


私は美を感受するセンサーそのもの

私とは美そのものだ

美とは私を言い換えた表現

私=美

つまり世界は美そのものだということ

私=美=世界



静かに音もなくばくはつする喜び


なんの理由もなく溢れるよろこび


それが美



ちいさいころに神様に愛されていた頃の時分の記憶そのものが蘇る

起こる全てが不思議な奇跡だったころの

ハートから今溢れる初々しいぴちぴちした喜び

無垢と無知と無経験の喜びに帰るよろこび

感覚に触れる全てが愛おしい

愛おしく流れる時


それはコーヒーをひとすすりする時

空の青さと雲の流れるのをながめる時

可愛い小鳥の美しい鳴き声を聞く時

酔っ払いおじさんの戯言を耳にする時

隣家の料理する音と

たわいも無い会話の声を聞く時

雨上がりの朝の澄んだ空気を吸い込む時

綺麗に整備された道路や

汚いスラムのカオスなストリートに目を向ける時

いつどこにいても感じることのできる感受性の質


それは表現できない

私は今こそ今世紀最大の、いや歴史上最も偉大な芸術家だと自負する

この瞬間、かつてこれほどの美を創造した者はいた試しがあろうはずがない

しかし今

私は一筆たりともその美しさをキャンバスに乗せることはできないだろう

一編の詩も書くことはできないし

一音を発することもできない

そんなことをすれば美は立ちどころに跡形もなく破砕されてしまうだろう

それに

この素晴らしい晴れかさと美がたましいを占領する時

穏やかな生の幸福にすっかり浸って何にも求めるものがない時に

どうして絵の腕前が鈍らずにいられようか


存在の幸福全てを全霊で感じるということは

個人の一生を賭けて費やし積み上げた何かを

跡形も残らず粉砕することだ

空っぽの感情

なんと素晴らしい

なんにもとどめることはできないしする必要はない

私はその責任から解放された

それは死の喜びに匹敵する美の容赦のない愛

その愛のエクスタシィはどんな愛にもエクスタシィにもとらわれることがなく一切をことごとく流す。流し続けてとどまることがない。一片の塵も残されずことごとく流し続け次々と新しく未知を産出する喜びの奇妙な河川

私は世界を管理しようとする一切の任務から間逃れる

美がその全ての責任を負ってくれる幸運に恵まれたことに感謝する


朝の澄んだ空気と外の木漏れ日の光の

やさしさに包まれて

ゆったりとくつろぎ現在の幸福に溶け去る


煩わしく溢れる思考に次ぐ思考を置き去りにして

ハートと全身で感じる

静かにばくはつする奇妙な喜び

これ以上書けば失いかねない繊細にふるえる振動

しかし失いようもない

美に浸ると思い出す

何もかも大丈夫であることに


美が宙を舞う

美が上を舞う

美が下を舞う

美が前に拡がる

美が後ろを拡がる


私はそれに取り囲まれている

私はそれに包まれている

私はそれに浸っている


いつどこにいても








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