見出し画像

【社会起業家取材レポ #07】  ひとりひとりが⾃信をもって暮らせる社会を東北から。

SIACの学生が東北で活動する社会起業家の想い・取り組みを取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2020卒業生の佐々木祐子さんにお話しを伺いました!


1. 佐々木祐子さんについて

ゲストハウスひととき オーナー。福島県出身。2015年、福島県南相馬市にUターンし、2017年に同県西会津町に移住。東日本大震災後「復興」というキーワードだけでは、福島に気軽に訪れる人がいなくなるのではないかということに危機感を抱き、友達の家にくるようにもっと気軽に「福島」を何度も訪れることができる場所をつくろうと江戸時代、越後街道の宿場町としてにぎわった西会津町上野尻地区の空き家を仲間たちとともにセルフリノベーションし、2018年にゲストハウス「ひととき」を開業。翌年には、旅人と町の人が気軽に交流できるようにと宿に併設する形でカフェバーをオープン。現在は、「一人ひとりが自信をもって暮らせる社会を東北から」をヴィジョンにチャレンジショップやインターン制度などを企画。SIA2020年卒業生(Like(共感)賞、ORBIS特別賞受賞)、SIA2021メンター。

スクリーンショット 2021-12-16 9.57.59


2. インタビュー | これまでの歩み&事業&SIAについて

佐々木さんのこれまでの歩み&事業&SIAについてお話しを伺いました。

スクリーンショット 2021-12-16 11.18.30

<これまでの歩みについて>

Q. ゲストハウスひとときを作った経緯について教えてください。
A. いろいろな縁が重なりあって。

ゲストハウスを作ろうということは西会津町に移住する前に決めていました。

西会津に移住する前の2015年からの2年間は、南相馬市で小中学生から大学生の人材育成事業に携わっていました。当時所属してきた社団法人のミッションは「福島の復興を担う人材を育成すること」。その現場で、福島や東北の復興支援に関わる志をもった企業の方、起業家の方とも仕事を通してお会いすることができました。

東北各地で、自分自身で道を切り開き、事業を生み出していく方々の姿をみて、「かっこいいなと、自分もこんな人たちのようになりたい」と憧れの気持ちを抱きました。東日本大震災後に、いろんな場所に出向き色々な人と出会うなかでたくさんの学びや事例を見聞きしてきましたが、それを仕事として形にしていくことまでは考えていなかったのですが、その方々の出会いをへて、自分ももしかしたら自分の想いを形にする段階なのかもと思うようになりました。私は、もともと旅が好きで東京の友達といろんな地域のゲストハウスに泊まっていたんです。ゲストハウスに泊まると観光情報よりも深い地域のことを地域の人から地域人の話を聞く事ができました。その話をきけたときのほうが旅が思い出深いものになったんですね。

南相馬市で活動するなかで、「復興」という言葉だけでは福島に来る人がどんどん減ってしまうかもという危機感を感じていたこと、当時の福島県にはまだゲストハウスが少なかったということもあり、「友達の家に気軽にくるように福島を訪ねられるような宿を自分でつくろう!」と想いが決まり、ゲストハウスをつくることを決めました。

その後、ゲストハウスを開く場所を探しに、福島県を巡っていたときにたまたま西会津町と出会い、U・Iターンの人たちがこれから新しいことをはじめようとする「何かがはじまる夜明け前」のような空気感と町の人のあたたかさに触れ、この町への移住を決意します。

ちょうど「地域おこし協力隊」の募集もあり、協力隊として活動しながら、ゲストハウスの事業を考え、空き家を探し、資金調達をしゲストハウス開業に向けて準備をはじめていきました。


Q. 自由大学に通われていたとのことですが、その経験はどのように今にいきて
   いますか?
A. 私の考え方や人とのつながりのほとんどは社会人になってから参加した自由大
  学で構築されていると思います。  

震災後、自分自身にもやもやしていたときに自由大学に出会えたのは、私の人生のターニングポイントでした。ゲストハウスのデザインをやってくれたのも自由大学時代の友達だったんですよ。自由大学在籍時に出会った仲間たちはみんな面白いことに挑戦していく人でした。常に知的好奇心を刺激してくれて、でも一方でそのことがジェラシーというか、「なんで自分はみんなみたく面白いことができないんだろう」という悔しさと、「ここで出会った人たちこれからも交流するためには自分も何かやらなくちゃ、いや何かしてみたい!」と刺激を受けていました。わくわくしながら挑戦する人たちがそばにいたからこそ、私も新しい働き方・生き方に向けたチャレンジがしやすかったのかなと思います。学びの成果を披露する、自由大学祭などもあったりと「大きく学び、自由に生きる」ことの楽しさを学ばせてもらいました。
※自由大学:「大きく学び、自由に生きる」をテーマに、知的生命力がよみがえるユニークな講義を展開する学びの場。これからの生き方や働きかたなどを軸に、時代が求める様々なテーマで講義計画を立て、知性と創造性を育みながら行動し、経験から学ぶことを後押ししています。(HP:https://freedom-univ.com/about/ HP内、自由大学についてより文章引用)


Q. 祐子さんは常の全力のイメージがありますがどのようにモチベーションの維
   持をしていますか?
A. いえいえ、そんなことないですよ。私だって結構落ち込む時もあります(笑)。

今振り返ると、やりたいことと自分ができることのずれが大きくなった時に悩んで落ち込んだ気がします。でもその都度、自分の生きやすい生き方にえいやっと一歩踏み出したら生きやすくなりました。自分のやりたいことができる場所に行くしかない!と選択しながら、自分が自分らしくいられる環境をつくることでモチベーションの維持をしてきたと思っています。


<事業について>

Q. 西会津町を拠点に選んだ理由はなんですか?
A. 行動の結果がダイレクトにみえると思ったからです。

人材育成を行っていた南相馬市での経験が大きかったです。南相馬市は人口5万人と県内の中でも規模の大きな自治体だったため、所属していた団体の取り組みが市民の方や子どもたちの役に立っているのか、反応をみる術がなく、また取り組みに対する想いが伝わりきらないなど、ジレンマを抱えていました。この経験から、自分で事業を立ち上げる際は、自分たちの取り組みが一人一人に届く規模感の街で挑戦したいと思い、人口6,800人(2017年、現在は5,800人)の西会津町を選びました。


Q. 「人口6,000人の町から、10年間で10人の「行動する人」を生み出す」とい
   う目標は、どの程度達成されていますか?
A. 1年間で3人。「行動する人」が生まれていると思います。

SIAに参加していた際、ソーシャルインパクトの数値設定にすごく悩みました。大きな数字を言えるほどの事業をやっていなかったことや、大きな数値設定が自分に向いていなさそうだと気付きました。
一人一人の顔が見える、行動の変化がみえる規模感での事業が自分には合っていると思っています。2021年も「行動する人」が生まれたことを感じるできごとがあり、一歩ずつ目標達成に向けて動けているのではなかと感じています。


Q. 繋がりを広げるため、活動を知ってもらうために行っていることはあります
   か?
A. Instagramで、日々の想いや悩みをさらけだすことです!

Instagramでは、写真とともに地域で生きていくことのリアルを伝えることを意識し、楽しいことも、抱えている悩みも全てをさらけ出すようにしています。また、その時に気を付けていることは、私は、西会津町や福島県の代表でもなければ、誰かの代弁者でもない。ゲストハウスひとときの一人として発信し、人を傷つける発言はしないことを徹底しています。

また、インターンシップをしている学生に、noteでインターンの感想のフィードバックをしてもらっています。学生がひとときでの体験で感じたことや考えたことを、文字にしてもらうことで、自分たちの日々の発信とは違う視点から見た西会津町のよさ、人とのつながりを知ってもらうことができるのではと。


Q. 今後、新たに取り組もうと考えている事業はありますか?
A. 一人一人の暮らしの幸福度を上げるための事業をやっていきたいです。

実現可能かは分からないですが、世界中にワクワクを届けるための会社をつくりたいです。
20代後半から30代にかけて、キャリア、結婚、移住などの新しい選択肢を得るときに、焦りや幸福度の低迷を感じる「クオーターライフ・クライシス」を経験する人が、コロナの影響もあり、多くなってきていると感じています。その方々にご自身の幸福度を回復していくための環境を提供したいです。そのために、一人ひとりが「わくわく」を発見、発露するためのきっかけをつくるプログラムを開発を考えています。


<SIAについて >

Q. SIAに参加したきっかけはなんですか?
A. 知り合いから誘われたことがきっかけでした。

2020年の8月頃はコロナ禍ということもあり将来や自分の事業に関して迷っている時期でした。停滞感や焦りを感じているときに、たまたまお世話になっている方にお誘いを受けて、「あ、これは挑戦するときだな」と感じました。締め切りの3日前だったのですが、頑張って応募書類を書いたら通っていたんです。コロナで宿がお休みしていた時期だったこともあり、自分や自分の事業にしっかり向き合う時間をとることができました。SSISでは人生ではじめて自分の取り組みに対しての賞もいただき、とても良い時間が過ごせたと思っています。


Q. SIAに参加したことで、変わった事はありますか?
A. Vision・Missionを明確に言葉にできたことです。

事業の経験は少なくても、想いや伝えたいことを自分の中にたくさん抱えていました。でも、自分自身でもしっくりとくる言葉で表現できない状態にもやもやを抱えていた時期でした。SIAを通して、自分がイメージしていたこと、言いたかったことが人に伝わる言葉としてしっかり形にできたことがよかったです。


Q. 今年は、メンターとしてSIAに参加されていますが、その中で何か気を付けて
  いることはありますか?
A. 伴走者としてどうやって相手に寄り添うのかをいつも考えています。

今年から、初めてメンターとして入ったので、まだまだ分からないことが多いです。その中でも気を付けていることは、相手をリスペクトして接することです。特に悩みに対するアドバイスの伝え方や思考を深める言葉がけなども常に考えて接するようにしています。メンターとして、自信がなくなる瞬間もありますし、正解が分からないと悩むこともあります。常に学びと葛藤があるんです。それでも、自分が出来ないことを認めて、抱え込まずに、ほかのメンターさんや、INTILAQの方に聞くようにしています。参加者がSIAを通してどうなりたいかを考え、その人がその人らしくプログラムに向き合い、その先のVisionを目指していくことができるようにサポートして行ければと思っています。


Q. 私たちSIACに参加している学生に対する想いを教えてください。
A. 皆がどんな想いをもって、SIACに飛び込んだのか気になります。

ひとときでも、大学生のインターン生が入るようになりました。皆の世代からの質問のほうが、ハッとするときがよくあります。だから、皆と話す時間が欲しいと思っています。取材など話す機会があると楽しいし、うれしいです。話しているうちに、「あっ、そうか!」と私自身気づくことがあるんです。今回の取材では、皆の質問にきちんと答えられているのか、凄く考えてしゃべっています。

お互い学び合いですよね。SIACの皆さんはSIAの起業さんやINTILAQのみなさんから学んでいるかと思いますが、逆にSIAの起業さんやINTILAQのみなさんもSIACの皆さんから学んでいると思います。ぜひ、INTILAQ内にいる、支えている人達にも質問してみてほしいですね。


3. 編集後記

この取材は、笠原愛奈、佐藤扇、箭子優羽が行いました。
最後に、取材を終えてわたしたちが感じたことや気づきを書いていきます。

■ 笠原 愛奈
お話を聞かせていただき、起業家という道がものすごくあっている方だなと思いました。そして、モチベーションの維持として自分の生きやすい生き方に一歩を踏み出すというお話しをお聞きし、そんな選択軸があるのだと驚き、勇気づけられました。何かもやもやしてしまった時、立ち止まってしまうよりも自分の思う方向に一歩踏み出すことができるのが起業家独特の特徴だと気づきました。立ち止まってしまいそうになっても今回の祐子さんの言葉や笑顔を思い出し、進み続けていきたいと思います。

■ 佐藤 扇
『私は、強い人間じゃない。周りのみんなに支えられながらここまでこれた。』
これは、取材中の祐子さんの言葉です。
祐子さんは、とにかく笑顔にあふれている方です。そして、相手への思いやりを大切にしている感じがすごく伝わってきます。その人柄が、結果として、現在の形になり、共感を生んでいるのではないかと感じ、これは、祐子さん自身が持つ力であると思います。人は、一人で生きることはできず、必ず誰かに支えられて生きています。この先、自然に共感を生み出すことができるように、周りへの配慮・感謝を忘れず、行動していきたいと思いました。

■ 箭子 優羽
取材を通じ、私自身の考え方にとても影響がありました。今回は、祐子さんに「起業家さん」または「メンターさん」としての観点からで取材をさせていただきました。ですが、話を聞くほど、起業家としての立場に関係なく、祐子さんの考え方に共感と尊敬の思いが強くなりました。祐子さんのように、周りを配慮しつつ自分の思いを丁寧に表現し、伝わるように努力する。また一方で、新しい事業や自分のやりたいことを追求して行くこと。このような過ごし方・考え方を常にしていたいと思いました。現在の私は、まだまだ確立した自分自身がありませんが、祐子さんのように思いをしっかりと持った人になれるよう意識したいと思いました。

スクリーンショット 2021-12-16 11.16.26


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
マガジンはSIACプログラムに参加する大学生が執筆しています!
SIACプログラムの詳細は下記の記事をご覧ください!