全日本選手権 個人TT

今年も全日本主権が開催された。
プロ選手になってから何回参加してきたかは覚えていないけど、おそらく10回は来れると思う。
今年の僕は選手人生の中で1番状態が良くないことはわかっていた。
昨年から僕の選手人生は大きく変わり、自分が想像することさえなかった状態である。
今年もTTとロード両方出たのだが、正直なところ自身で機材を用意することもできず、ファンの方から機材を借りてTTはなんとか機材を揃えることができた。
この状態で所属チームに準備してくれというのも烏滸がましいのでチームにはおねがしなかったのだが、いざ自分で準備しようとするとものすごく大変だなと感じた。
ここまでの間に練習する時間はないわけではなかったのだが、僕は自分の人生に悩んで、ろくに練習にせずに時間を無駄にしてしまった。
過去最低の状態、そしてこの日本一を決める全日本選手権に出ることさえ他の参加者にもう申し訳なく感じて前日には事態も考えたが、あと何回出られるかわからないこの日本一決定戦なのだから、チャレンジだけでもしてみたいと思い意を決して参加することにした。
大会当日は今まで感じたプレッシャーもなく、ただただ走るぞという気で会場に到着し、付き添いで来てくれた妻と準備を始めた。
今までは、勝たないとならない時持ちで走るTTが多く、緊張感はかなりあったが、今回はアップ中もそんな気負いもなく適度に体を温めスタート台に向かった。
スタート台に立てばもう何も感じることもなく、あとはカウントダウンを待つだけだ。
10秒前から始まったカウントダウンで呼吸を整え、スタートの合図とともにコースに出る。
平日ではあったが、観戦の方もちらほらいて、応援が聞こえる中走る。
今回は6キロのコースを5周するレースであったが、コースは登りが散在し、重量級の僕には非常に厳しい、そんな僕にできることはもはや戦略どうこうではなく、ペダルを踏み続けることだけだった。
自分では頑張って踏んでいるつもりではあったが、2周過ぎる頃には自分から1分遅れてスタートした選手がすぐ後ろまで来ていた。
かつてこのレース種目で優勝を争ったこともあるのだかが、そんな僕は今優勝ではなく、誰かに追い付かれないように走っている。
悲しくも感じたが、今は悲しんでる場合でもない、少しでも速く走るしかなかった。
周回を重ねるごとにどんどん選手に抜かれていく。
もはや勝つどころか、走り切れるかどうかのレースになっていたが、4人ほどに抜かれて僕はゴールした。
結果は最下位だった。
それでも、僕は今の全力を尽くしたことだけははっきり言えると思う。
うまくやればもっとしっかり練習して走れたと思う。
ただ、色々な事情と、僕自身の能力のレベルもあって、僕はうまくできなかった。
帰りは残念という気持ちもあったが、何より自身に納得した気持ちの方が多かった。
僕は弱かったし、目標に向かって全力を尽くすことはできなかった。
でもチャレンジした。
これだけは確かな事実だと思う。
人はいつか弱り、死に向かっていく。
僕の選手人生もいつかわからないが死に向かって入るのは間違いない。
どうせ死ぬから生きないのかと言われたら、それでも生きる人がほとんどだろう。
僕の自転車人生も同じだと思う。
いつか乗れない日が来るだろうが、どうせその日が来るならその日まで乗っていたいと思う。
いつかプロでも、サイクリストでもなくなるその日まで。
僕は自転車に乗るために生まれてきてはいないけれど、人生の中でこのスポーツに出会って、プロ選手になって人生が変わったと思う。
この素晴らしい乗り物にもう少し乗っていたいと思う。

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