文学の知識ゼロが語る三島由紀夫の魅力
三島由紀夫。戦後を代表する作家であります。
私は高1の時「春と雪(豊饒の海)」を読んで衝撃を受け三島由紀夫にとりつかれ、一時期は「三島でなければ文学でない」とまで思ったものの、結局大学では経営学を専攻している学生です。
今では読む本も多種多様ですが、初めて三島を読んだ時の衝撃、そして彼の作品を読んだ時の心から沸き立つ気持ちは、今でも覚えております。
しかし、三島由紀夫と申しますとたぶん「お寺燃やしちゃう小説書いた人だろ」とか「自衛隊で割腹自殺した」とかいうエピソードが強すぎて、
「はあ、やはり天才は我々凡人と思考回路が違いますなあ。小説は理解できないでしょうなあ」
と思う人が多いのでは。
私なんぞが「好きな作家は三島です」などというものであれば「あんな小説を理解できるのか」と読んでもないのにイメージが先行し、それだけでたいへんな読書家という扱いにするのです。
前にも書きましたが、読書は偉いわけでもなんでもございません。三島由紀夫を読んでるからと言って、偉かったり頭よかったりするわけでない。私は研究者でもなければ、文学部生でもありません。きっと三島の魅力の多くを取りこぼしているし、魅力をちゃんとかけとか言われて読書感想文とか求められたら全力で拒否します。
それでも彼の文章はほかの作家と違うことはわかり、言葉でうまく説明できなくても魅力はある、と断言できます。
それくらい素人でも「魅力的な何か」を感じ取ることができると思います。
前置きが長くなりました。魅力を解説しましょう。
1.文章が美しい
いい本、というのはいっぱいありますが、私は高1まで「いい本」というのはストーリーが素晴らしいとか、空想なのに構成がよくできているとか、登場人物の気持ちが深く表現されているとか、そういう意味だと思いました。
しかし、三島由紀夫は違います。
文章が美しいのです。
ストーリーも登場人物も、私にはその良さがわからなかったといえばそうなんですが。(いくら読んでも金閣寺を燃やした理由がわかりませんでした)
ウィキペディアにはその作品について「修辞に富んだ絢爛豪華で詩的な文体、古典劇を基調にした人工性・構築性にあふれてる唯美的な作風が特徴」とされています。
はあ。
一度三島の作品を読んだ人ならウィキが言わんとしていることはなんとなくわかるでしょうが、呼んだことない人は意味がわからんと思います。
私なりに解説してみますね。
皆さんが思うほど、難しい表現が使われてるわけではありません。ちょいちょい初めて見る単語はありますが、それは文脈でなんとなくわかるようになってますし、仮に意味わからなくとも物語を楽しむうえで支障はないでしょう。
三島のすごさは、普通の人が「目を見張るものがあった」とか「言葉に表現できない」としかいいようがない美しいものを、あまり難しい単語を使わずに表現できるところだと思います。
それは無駄のない言葉選びだったり、声に出してもすっと頭に入りそうなリズムの整った文章だったりします。とにかくその表現はありとあらゆる面で完璧に美しく、私なんかが努力したところで一文もかけなそうな表現を、三島は何冊分もかけてしまうのです。
読者は文章を読みながら、読者なりの美しいものを想像するはずです。読んでてめちゃめちゃ気分がすっきりします。
そして日本語の美しさを知ることができます。三島の日本語はセンスもリズムも完璧で、ほかに直しようがない。そんな文章をどうしてほかの言語で再現できるでしょうか。
日本語がわかる人間でよかったと、私は思いましたね。
2.シチュエーションが美しい
「春の雪」という作品は、大正期の華族のはなし。このように、三島の小説の舞台は庶民とかけ離れた特殊な世界が多い。ほとんどの人が手に届かない華やかな舞台は、三島の小説をさらに美しくします。
もっとも「潮騒」のように小さな島の漁師の青年といった庶民が主人公の場合もありますが、豪華さはないものの質素な美しさを見事に表現しております。
3.才能があっても悩みはある
三島由紀夫本人は家柄もよく、財務省で働けるほど頭がよく、筋肉もある、
とみんながあこがれるステイタスをいっぱいもってます。
三島の小説の主人公は家柄がいいか頭がいいか、が多いんですが、それでも主人公は悩むのです。
三島本人もコンプレックスを抱えていたそうです。
人間は誰しもコンプレックスを抱え、それに向き合って生きていくんだと伝えたかったのかもしれません。
…
…
とまあこのように、私の貧弱な文章で魅力を解説しました。
これを読んで色々言いたいことがある人もいるでしょう。ストーリーが悪いみたいじゃないか、ストーリーこそ三島の真骨頂だとか、三島が伝えたかったのはそういうことじゃないとか、学生ごときが三島と呼び捨てにするな、とか。
どんな意見も否定するつもりは全くありませんし、私の文章に説得力のある根拠はありません。自由に述べただけです。
ただ。
繰り返しますが、これは「三島由紀夫って思ったより難しくなさそう」「三島由紀夫を難しく読む必要はないんだ、私が思うままに読んでいいんだ」と思う人を少しでも増やす目的で書きました。
この記事を読んで「三島由紀夫でも読んでみるか」と思う方がいれば幸いです。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?