第2回 友人インタビュー「バスター・キートンを見てほしい」
(Bさん 2020年2月中旬)
※インタビュアー田中の発言の前には──が付いています。
付いていない発言はBさんの発言です。
※個人の記憶から話しているところもあり、事実と異なる点があるかもしれません。
バスター・キートン(Buster Keaton, 1895年10月4日 - 1966年2月1日)
アメリカの喜劇俳優、映画監督、脚本家。チャールズ・チャップリン、ハロルド・ロイドと並び「世界の三大喜劇王」と呼ばれる。
(Wikipedia バスター・キートンのページより)
きっかけ。
一番最初にキートンをちゃんと見たのは、関西の劇団「維新派」※が、2004年に『キートン』っていう演目をやったんです。2004年だから、私が26歳の時。この劇団の舞台を見てみたいと思っていて、その時がたまたま『キートン』だった。
※「維新派」について、Bさんの説明
維新派は関西の劇団で、1個の演目のために劇団員全員で全部野外にセットを一から全部建てて、終わったら全部壊す。屋台街なども全部作って、お酒を飲むような露店なども出て、街を一回作って壊すという取り組みを毎回やっていた人たち。
その時私はキートンを全く知らなかったから、予習したほうがいいかなと思って、それを見に行く前に、六本木のTSUTAYAで、その時はVHSですね、多分。を借りて、それが『キートンのセブン・チャンス』(別題『キートンの栃麺棒』)っていう長編だったんですけど。
維新派の舞台もすごくて、面白かったんですけど、むしろキートンにはまるっていうことになり。最初はモノクロだし、セリフもないし、小難しいんじゃないかと思ってたけど、全然とんでもなくて。
『セブン・チャンス』は、主人公が何歳かの誕生日までに結婚したら遺産をあげるとか言われるけど、もう時間がない。それまでに結婚しようとなって、好きな子はいるんだけど無理そうだから、結婚相手の募集をかける。そしたら信じられない量の花嫁に襲われる(笑)
──(笑)
初めは知り合いから嫁候補を探すんですけど、そのあと新聞に募集を載せたらめちゃくちゃ集まりすぎて、ずっと追いかけられ逃げまくるという話。最終的には謎の岩山みたいなところから岩がゴロゴロ転がってくるところから走り降りるみたいなことになる。最後はハッピーエンド。
すごくシンプルで楽しい話なんですけど、それではまって、キートンのいろんな作品を見始めた、っていうのがキートンとの出会いですね。
──ゲラゲラ笑いました?
ゲラゲラ笑うし、というか「なにこれ、すごい!」ってびっくりしたのを覚えています。
映画黎明期からバスター・キートンが活躍した時代の話。
キートンの話の前に、キートンが活躍した時代のことを話しますね。
まず映画というものが誕生したのがだいたい1895年とかで、一番最初の映画は、「列車が来る、終わり。」みたいな感じものでした。都市伝説のような話によれば、列車が来る映像を劇場でかけたら客がびっくりして逃げる、みたいなことがあったらしい。
そのあとジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』が作られ、そこからいろんなジャンルやストーリーが作られていくようになるんですけど、その中で、「キーストン・コメディ」っていうのが出てくるんですね。
マック・セネットっていうすごい大プロデューサーみたいな人がいて、その人がサイレント時代のコメディの先端にいた人なんですが、ロスコー・アーバックル(自分の作品でキートンをスクリーンデビューさせた喜劇役者。巨漢でファッティーの異名を持つ)やチャップリンを見出して、喜劇界ができてくる。
マック・セネットすごいな、と思った話があって、多作品を同時に撮るから、スタジオの真ん中に高い物見櫓みたいなものがあって、そこから四方を見ながら、ああしてこうしてって上からぐるぐる回りながら指示をして作っていたらしい。本当かどうかわからないけど、そういう逸話もあるくらいの人。
熱量が画面から伝わってくる
キートンが出てくる頃のサイレント・コメディ期の映画って、何が面白いって、映画っていうものが出来立てだから、みんなすっごくテンションが高い。映画楽しい!!って、超ピュアな、熱だけでいけてる感じが、画面から伝わってくる。それがもう見ててワクワクします。黎明期ならではの熱量というか。本当に全部、やっちゃえ!っていう。
どうやってるかわからないですけど、自転車を食らうとか(笑)、ライオンと戦うとか(笑)、そういうことを本当にやる。タブーがなくて、面白いからやろう!って感じで、普通だと絶対にできないことをやってる。キートンは、それの申し子、って感じなんです。
そうしてマック・セネットが『キーストン・コップ』という間抜けな警官ものを作ったりして、そんななか1920年代ぐらいにキートンとチャップリンとロイド、の三大喜劇王時代になってきます。
キートンが一本立ちして自分で映画を作り始めるのが1920年ぐらい。※今からちょうど100年前ですね。そこから短編を作り始めて、単独監督での最初の短編映画『文化生活一週間』が1920年。その頃から作り始めて、1923年まで短編を作っていた。
※キートンは初期から監督と主演を兼ねる形で映画を制作していた。1930年以降、監督をせず出演した作品も多数あるが、キートンの作品として注目され続けているのは監督と主演を兼ねていた短い期間の作品群である。
1923年から長編に移って、1929年まで。短いんですよね。
1928年くらいに、トーキー※の波がやってきて、トーキーになってからも結構売れてたらしいんですが、キートンはサイレント作品が圧倒的に評価も高いし、私も見てて面白いと思います。1930年ぐらいになってくると、多分だんだん人気が落ちてきて。キートンが酒浸りになって現場に来ないような出来事や、離婚などもあり、しばらく不遇の時代が続きます。
これが大まかな流れですね。
※サイレントとトーキー サイレント(無声)映画とトーキングピクチャー(映像と音声が同期した)映画。映画初期の時代はサイレントが主流だった。
私は26歳ぐらいの時に初めてキートンの作品を見て、日本版の短編集と、日本版の長編集と、外国版の長編集と、ドキュメンタリー『ハードアクトに賭けた生涯』のVHSとか、その辺は全部揃えたんです。
今は全部YouTubeで見れるのかな?英語で検索するとたくさん出るかもしれませんね。
サイレント映画は、ほぼ言葉関係ないですから。字幕も吹き替えもなくてもわかります。そこの強さもありますよね。
キートンはドタバタコメディの申し子。
キートンが映画界に入ったのは1920年前後、ロスコー・アーバックル主演作に出たのが最初です。元々は家族でヴォードヴィルショー(舞台でのショービジネス)に出ていて、いろんな街を転々としている暮らし。ショーで親に投げ飛ばされるようなことを5歳くらいからずっとやっていました。泣かないし丈夫だ、と言われて、落ちる、とか、叩きつけられる、とか、キートンはそういうのにとても向いている人(笑)。スラップスティックス・コメディ(いわゆるドタバタ喜劇)には絶大に向いてた。
一方、私はチャップリンはほぼ見たことないのですが、私にはチャップリンは器用なパントマイマー、というイメージがあります。そこがキートンと一番違うところなのかなというのと、これも個人的なイメージでは、チャップリンはウェット、人情ものという作風なのでは。
キートンはめちゃくちゃドライです。自殺したいけどできない、自殺にずっと失敗するみたいなギャグをやったりとか、ブラックでドライな作風。
好きな女の子がいて、といったロマンチックな箇所もあるけど、それもあくまでもギャグのためのストーリー。どうギャグを詰め込むかしか考えてないような。完全に比重が笑いに置かれている。ストーリーとかメッセージとかではないと思います。ああ、でも、後半になっていくと多分映画界的にギャグだけじゃなく、もっとドラマだ!という風潮が出てきたんでしょう、父親とのストーリーとか出てきたりしますが、基本的にはギャグ、という感じですね。
「マリオ」の画面を見ているかのような
作風的にアニメなんかに近いんですよね。ポパイとか、『トムとジェリー』とか。
──動きで笑わせるということでしょうか?
そうです。あと、ニック・パークの『ウォレスとグルミット』、あれも、キートンをオマージュしてるんじゃないかと思います。言葉いらないで見れる、あの感じ。
基本的な画面として、ファミコンのスーパーマリオみたいな、完全に横から見てるみたいな撮り方な訳です。例えば食卓があって、両端に男が二人座ってて、天井から下がっているひもを引くと調味料がバーッと降りてきて、料理に調味料をかけて、それを振り子みたいにして渡すと向こうがキャッチしてそれをかけるみたいな、そういう効率いいんだか悪いんだかわからないシステムみたいなのを作るのがキートンは好きなんです。
そういうのってニック・パークもすごくやるし、あと、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオープニングで目覚ましが鳴って、朝食を自動で作る機械仕掛け。キートンはそれの元ネタ的な感じもあると思いますね。
今のアクションって細かくカット割りをするけど、キートンの映像はそうじゃないですね。真横から機関車が来て、よじ登って機関車の上を走っていって、向こう側の建物に登るとか、それを人間がやってる。
多分それを今のカラーできれいな画質で、同じ速度でやったら、そんなにワクワクしないかもしれないけど、当時の画質と、あと多分スピードが1.3倍速くらいなんですね。それで見ると本当にアニメ見てるみたいな感覚になります。『天空の城ラピュタ』のパズーみたいな動き…山をするするするって登ったり、ああいうのを人間がやってるのを見せられてる。だから落ちたりしても痛そうに見えない。こけ方とか、アニメを人間がやっているみたいな感じです。生々しさがないんですね。
音、セリフがないからみんなオーバーアクションでこう(両手を合わせ両腕を体に引き寄せる仕草で)「すてきー」とかやるし。
キートンの特徴で一番最初に言わないといけないのは、キートンは「笑わない」。無表情でもないんですが、笑わないんです。すると、すごくしょうもないことをやってても、一個一個すごくひたむき、大真面目にやってるように見える。それがすごくキャラクターとしてかわいい。
『セブン・チャンス』だと、結婚相手を見つけるのを一生懸命やってる。最終的には、彼女のもとに行くときに岩山を転げ落ちながらみたいなのも、キャラクターとしてすごい魅力的だと思うし。
──キートンって、見た目も良いですよね。
それなんですが、映画評論家の淀川長治さんが、多分すごくキートンを好きで、いろいろ文章に書いてるんですが、キートンのことを“ブサイクな小男が懸命にやってる姿におかしみがある。”とよく書いているんです(笑)。
──(笑)どっちかっていうとハンサムなような。
そうでしょう?美男子ですよね。
──小柄ではあったみたいですね。
はい、対比として、大男とキートンをセットで使うみたいなのをよくやっています。大男と真横で話すんじゃなくて、わざと後ろに置いてこうやって話す(ことさらに遠くて話しにくそうに)とか。そんなのも本当にアニメ的だと思います。
サイレントならではの面白さ。
サイレント映画の面白さの1つとして、音がないから、伴奏とかを自由につけられる。DVDなどを買うと、ピアノの伴奏とか入っているんですが、それは別にキートンが指定したものではなくて、本来は無いものなんですね。
日本だとキートンが初めて上映されるのは大正時代ですが、その時代は活弁士さんがいて、説明してくれてたんです。映像が流れる中、今はこういうシーンだよ、と。今でも活弁士さんは日本に何人かいるので、そうやって活弁士さんがつくバージョンもあるし、ピアノとかクラリネットとか、何人かで楽器演奏するバージョンもあるし、完成形がないとも言えます。
長編一作目の『恋愛三代期』という映画があるんですけど、それは10何年前くらいに、テクノ界の大御所のジェフ・ミルズって人が音楽をつけたことがあって、それがめちゃくちゃスペイシー(宇宙っぽい)なんですよ(笑)。「恋愛三代期」って、石器時代とか、いろんな時代時代で恋愛の話をする話なんですが、それにバリバリのシンセサウンドでスペイシーな音楽をつけると、全然違う風に見えるんですよね。
そんなこともできるって自由度が高いし、解釈次第で全然違う面白味が音で加わったり、完成しない面白さが1つあるなあと思います。
──キートンは、サイレント映画がより合ってるなーって思われますか?
それはもう間違いなくそうなんじゃないでしょうか。
キートン作品、おすすめするなら
見たことない、1つぐらいなら見てもいいかなって人にすすめるんだったら、『文化生活一週間』がもう絶対いい。絶対面白いと思う。『文化生活一週間』で面白くなかったらもう見なくていいのでは、という感じ。
短編は大体20分くらい。長編でも1時間半とかもないかな、80分とかそのくらいだと思うんですが。
『文化生活一週間』は20分くらい。もう本当に全部詰め込まれてる。カップルが結婚して、家を建てるんだけど、嫉妬した男に嘘をつかれてめちゃくちゃな家ができて、みたいな。一番最後の大落ちまで本当に素晴らしいなと思う。
長編だと、『キートンの探偵学入門』。色々な作品の元ネタになっている(のちに詳細あり)作品でもあるし、間違いなくかわいいし、抵抗なく一番見やすいかなーって気がします。または、『セブン・チャンス』かなー。
あと『海底王キートン』は私の妹がはまっていました。『セブン・チャンス』みたいにヒロインがお姫様型ではなくて、ヒロインも一緒に右往左往する感じだから、『海底王』はそういう楽しさもありますね。
愛され、オマージュされ続けるプリミティブなギャグ
キートンは色々なところでオマージュやパロディが作られていて、有名なのはジャッキー・チェン。ジャッキー・チェンがキートンを尊敬しているというのは有名な話で、彼の映画にはキートンをオマージュしたシーンがよく見られるらしい。
『文化生活一週間』の、壁がバーッと主人公に倒れてくるけど、窓のところを頭が通って無傷だった、っていうギャグ。のちに『キートンの蒸気船』でその大規模版をやるんですよね。それがすごく有名で、2009年のキユーピーのCMでもオマージュされています。
あと、短編の『キートンのハード・ラック』の冒頭、自殺しようとして死ねないギャグが続くんですけど、夜に、ライトが2つついた車がこっちに来てると。キートンがその前に飛び出していって轢かれて死のうとする。だけど実はその光は2台のバイクで、キートンを真ん中に置いて行っちゃう、で、あれ?っていうギャグがあります。それも10年くらい前の、外国の自動車メーカーのCMで使われていました。
『キートンの探偵学入門』でも、劇場のスクリーンに主人公が入って、画面がどんどん変わっていくのは、ウディ・アレンの映画『カイロの紫のバラ』の元ネタになってるっていうのはよく言われています。
ケラさん※もキートンが大好きだから、舞台『キネマと恋人』は『探偵学入門』が元ネタの元ネタになってると思う。
ちょっと前の『今夜ロマンス劇場で』という映画も、劇場から人が出てくるみたいな話で。『キートンの探偵学入門』は、そういうストーリーの大元になっている作品ですね。
※ケラさん ケラリーノ・サンドロヴィッチ。劇団「ナイロン100℃」主宰の劇作家・演出家。Bさんは昔からケラさんの作品のファンだそう。舞台『キネマと恋人』は映画の主人公がスクリーンから出たり入ったりして騒動を巻き起こすロマンチック・コメディ。
キートンは100年くらい前にそういったアイデアやギャグをたくさん出していて、のちの作品の元祖になってるのがいろいろあると思います。短編でも1作品の中に物凄くたくさんアイデアが入っていて楽しいですよ。プリミティブ(=根源的)なギャグだからオマージュされ続けているんでしょうね。
長い棒をかついで持っている人が、呼ばれて振り向いて、ぐるっと回った棒が周りの人に当たって、というギャグ、どこかで見たことありますよね。
──あ!映画『この世界の片隅に』で見たばっかりです。
そうそう、主人公がまさにやっている、あれです(笑)。ああいうギャグを、キートンやマック・セネットがやっていたんですね。映画が始まる前のヴォードヴィルとかでもやられていたんだろうけど、それを映像として残して、世界中で見られるようになった。そんな根源的なギャグがたくさん入ってるから、変わらない面白さがあるんですね。
だんだんそれが飽きられないように、私からすると理系っぽいギャグ…例えば車のタイヤがパンクして、タイヤを換えたい時に、車体を持ち上げなきゃいけないんだけど、風船をつけて車体を持ち上げるとか、そういう、物理的な法則を無視した感じのギャグが出てくる。そういうの、私はしゃれてるなーって思いますね。
他にも、何かと何かをぶつけた時に、普通こっちが割れるものを、違う方が割れるとか。船出の時に瓶を割る儀式をやった時に、瓶が割れるんじゃ無くて船が傷ついて、せっかく今船出しようとしている船が!ってなったり。
キートンのちょっと後に、マルクス兄弟が出てきて、マルクス兄弟はハープやピアノを弾いたりするんです。そういうのがトーキー時代の強みになった。でもギャグの流れとしてはキートンを受け継いでいて、ビルにこうやって手をついてて(壁に手をついて立っているポーズ)、行くぞって言われてその人物がどくとビルがバーンと倒れたりする。実はその人物がビルを支えてた。そういう、物理的法則がおかしいシュールさは、キートンが元になって他の人たちに受け継がれていってる、というのがあって。
キートンのサイレント映画は全然セリフはないし、歌って踊るとかもないけど、20分全然飽きずにずっと目が離せずに見れちゃう。ハッピーエンドに終わるのもあるけど、意外とダークに終わるのもあって、<!ネタバレ注意!→>『文化生活一週間』とかもダークな終わり方です。家が最終的に壊れて、途方に暮れて終わる。そういうのも私はすごく好きです。救いがない終わり方。<←!ネタバレ注意!>
あと、夢オチも実は結構あるんです。困ったことに(笑)。そういうのもかわいいんですよね。
キートン作品はギャグの積み木
『セブン・チャンス』ってリメイクされていて、見てはいないんですが、あまり魅力を感じず…。(1999年公開のアメリカ映画『プロポーズ』かと思われる。)
ストーリーラインでリメイクしても面白そうに思えないってことは、キートンの作品の面白さは、やっぱりストーリーラインじゃないんだなって思います。
──キートン作品はストーリーじゃなくてギャグが面白いってことでしょうか?
ギャグを積み木みたいに積み重ねていってストーリーになってるって感じが大きくて、ギャグありきで、ストーリーじゃない。この話はこういうストーリーで彼女がこうなってというのでは面白さが説明できないと言いますか。
公開当時の空気で見てみたい
──私の知り合いで、ケラさん(前出のケラリーノ・サンドロヴィッチさん)が好きで、ケラさんがキートンを好きだっていうのは知っているけど、キートン作品は見たことない、という方がいました。
そういう人、きっといっぱいいますね。そういう人に見て欲しいなって思います。
──バスター・キートンって、本当に有名じゃないですよね。何ででしょう?
有名じゃないですね、本当に有名じゃない。まあでも、パッと見とっつきにくいのは間違いないでしょうね。すごく古いし。
自分がすごくはまってた時は、私も流行るんじゃないかなーと思っていたんですけど、その当時よく話してた映画評論家みたいな人に、いやー流行んないっすよ。ってすごい言われましたもんね。なんか、古いし、サイレントだし。
──今となっては、オシャレ系というか、アートっぽい…
そう、どうしてもそういう感じでくくられちゃう感じはしますよね。そうなってくるとますます流行らなさそうです。
公開当時、ニコニコ大会※に子どもも一緒にみんなで見に行った、そういうのがうらやましい。アートでも何でもない感じで、単に娯楽として見ていたと思うんです。弁士さん、楽士さんがついて。そういう文化があるのはすごくいいなあ〜って感じがします。
※戦前〜昭和30年代までの日本における短編喜劇映画の上映会の呼称。
その時代の空気で見てみたいなって本当に思います。キートンが生きていた時代に生まれてみたかった。
お得なことも、あるよ(笑) みんな一回見ればいいと思う。
──Bさんは、最近でもキートン作品はよく見ているんですか?
いや、全然見ていなかったです。この機会にと思って久々に見直したら、やっぱりすごく面白いなと思いました。
まあでも、正直な話、今回こんな風に話してきましたけど、キートンが好きって言っておくと、ちょっと「私は違うのよ感」が出るわけですよ。
──(笑)
この間、映画好きの人に、この人の作品は好きだ、っていう映画監督はいるか?って聞かれて、監督で縛られると全然出てこなかったんですが、あとから、キートンって言えばよかったと思って。その場は、クリストファー・ノーランとか、そんな答えを求めてる空気だったけど、でもそこで「キートン」って言ったら「私は違うの感」出るでしょう?(笑)。100年前くらいの人を言うと。
──知ってるね感。
そうです。
──(笑)でもそのために好きなわけではないでしょう。
便利っていうのはある。
──(笑)そういう特典も。
そう。今の映画もあるけど、私が一番好きなのはこれなの。みたいな。
…それでもいいんじゃないですか。ということで、要するに、みんな一回見ればいいと思う。キートン知ってるよみたいな風に言うと、映画好きとしてちょっと幅が出る感がありますよ、と。
固定観念なく、一回ふらっとシンプルにYouTubeとかで見れるんだったら見ればいいって気がします。本当に根源的な面白さだと思うから、そう構えずに見れると思いますし。そういう人が増えるといいな。そして今、キートン作品ができてちょうど100年くらいたってるから、特集上映とかされるといいなーって思う。
なんならチャップリンでもいいかもしれない。サイレントコメディ自体を見てくれる人が増えるといいなあって思う。
(終わり)
画像:pixabay Perlinator
-後日談-
YouTubeでキートンの映画を見てみましたら、腹抱えました。一緒に見た小学生も大ウケです。100年前の笑い、現代にも通ず!今見るとキートンの動きや表情はかえって新鮮で味わい深くもありました。興味を持たれた方はぜひ見てみてほしいです!(インタビュアー田中)
週に1度のペースで何らかのインタビュー記事を上げていく予定。お楽しみに♪
お読みいただきありがとうございました‼︎
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