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「和菓子屋後継ぎへの道 呪いと共に面白く生きる」公募インタビュー#16

〈林さん(仮名) 2020年8月初旬〉

林さんの実家は江戸時代から続く大阪の老舗和菓子店。百貨店にも出店し、地元客に長く愛されているお店だという。祖父が事業を拡大し、現在林さんの父の兄=林さんの伯父が社長、父が専務として経営に携わっている。

尊敬する祖父が大きくした会社を継ぎたいと考えている林さんだが、現社長には林さんとほぼ同年代の息子が二人おり、事業承継の序列としては林さんは3位のポジション。しかし諦めず、今は経営者にふさわしい人間になるべく東京の洋菓子チェーンに就職し、修業の日々を送って3年目となる。

林さんの、現在進行形の戦いのお話。

老舗和菓子屋に生まれて

──事業を拡大されたというお祖父様は凄腕でいらした?

林さん そうですね。江戸時代から続いているからと言って人に恵まれているわけでも環境がいいわけでもない和菓子店だったんですけど、祖父は誇りを持ってほぼ一人の力で大きくして、林の一族みんなが働いていけるだけの会社を作り上げたので。
 最初、祖父はお菓子を作ることと営業活動の両方を一人で担い、会社が大きくなってからは伯父や父を入社させ、作る方は息子たちに任せて経営に注力し、事業を拡大していきました。

──林さんもお祖父様とはよく交流していた?

林さん 関わりは深かったです。会社の上に祖父母の家があって学校の帰りにもしょっちゅう行っていました。友達と一緒に下の工場に寄って顔なじみの従業員に焼きたてのせんべいをもらって食べたり。
 祖父が他界したのが私が大学2回生の時だったので、私がどういう風に働いているかというところまでは見せることはできませんでしたが。

──お祖父様が亡くなる前から、林さんはお店を継ぎたいという気持ちがあった?

林さん 環境としてそうやって育てられてきていたので、小学生くらいの時から継ぎたい継ぎたいと、その頃は冗談半分にですが、それを言ったら祖父や父が喜ぶので言っていました。

 中学に上がるくらいには、父は家のことは気にしなくていいから、自分のやりたいことがあったらやればいいと言ってくれて、私自身もそこからは家にしばられず興味のあることを探してやっていたんですけど、高校生になって自分の強みとか仕事、これからどういうことをやっていきたいかを意識し始めて、大学の何学部に入るかとか目標の大枠を決めようとした時、やっぱり家業は切り離せないところにあるなと思いました。
 なので、高校生ぐらいからまたぼんやりと、継ごうかな、ぐらいの感じで父には言っていましたね。

 経営を意識して大学は経営学部に入ったんですけど、大学2回生の時に祖父が体調を崩して。でも、それまでには継ぐ覚悟や準備もしてきていたので、これはもうだめかもしれないとなった時、祖父に「継ぎたいです」と伝えることができました

──お祖父様の反応はいかがでしたか?

林さん その時祖父は本当に元気がなくて。聞いてくれて笑ってくれて、手を握ってくれてぐらいの反応ではありましたけど、心底喜んでくれてたのは伝わりました。祖父はその一週間後くらいに他界しました。

──伝えられてよかったですね。

林さん 絶対にそれだけは伝えなきゃいけないと思っていたので、よかったです。伝えてこの仕事をしようと決意するのと、伝えられずにそのまま何となくやっていくのでは多分私の決意自体も違ってくるので。ターニングポイントではあります。

継ぎたい理由

──どうしてお店を継ぎたいと思われましたか?

林さん 美談になるような話と、自分のエゴと二つあって(笑)。
 一つは、物心ついた時からずっとうちでお菓子を食べてきていて、自分の会社のお菓子はもちろん、洋菓子でもスナック菓子でも、常にお菓子が20〜30種類ストックがあるような状態で、うちの家系はお菓子を欠かしたことがないんですね(笑)。
 お菓子があって当たり前、その中でもずっとお菓子が好きでいられる環境で私は育ってきて、そうやって好きなものに困ることなく育ててもらったことへの感謝が非常に大きいんです。
 今自分にとって大好きなものが「お菓子」で、そのお菓子の魅力を教えてくれたのは祖父でありこの林家なので、感謝を返したい、返すなら会社に入って、そこでちゃんと力になりたい、という思いがあります。

 もう一つは、私は自分勝手と言いますかエゴイストと言いますか(笑)、人に何か決められてやるより自分のやりたいことをやりたい。自分のセンスを認めてもらいたい、自分のやり方をできるところまで試してみたい、どこまで通用するか見てみたいという気持ちがあります。
 そしてできるだけ多くの人に影響を与えられるようになりたいので、ゼロから何か始めるよりは、下地があるところを利用して地位につきスタートを切る方がコスパがいいなという(笑)打算的なところがあって。
 ゼロから作るのはスタートの段階でつまずいたりするかもしれないですし、立場があるなら利用してやろうと。それらが自分が和菓子店を継ごうと思った理由ですね。

第3位というポジションで

──今の社長(伯父)に二人息子さんがいらして、林さんご自身は会社を継ぐ候補としては現在3位の位置なんですよね。

林さん 社長の長男、序列で言うと第1位の人は、和菓子店を継がないと言って社会に出たんですけど、数年後にやっぱり会社に入りたいって言って帰ってきまして。それを今の社長である伯父が「そんなうまい話があるか」っていうことで(笑)つっぱねたみたいで。今一応和菓子店に入社して、伯父から経理関係を学べと言われて勉強しているところ、ということです。会社経営というより、おそらくサポートをやれという意図があるんじゃないかと父と話しています。

 次に伯父の次男、第2位の人なんですけども、どこまで継ぎたいという思いを持っているかは私にも情報が届いていないので(笑)わからないんです。ただ、伯父の紹介で有名な和菓子メーカーに就職して2〜3年働いて、今年から実家の会社に入ってきた。そして今は店舗管理を、引き継ぎのような教育のような形で任されようとしているというところですね。

──林さんのお気持ちは、社長である伯父様は知っている?

林さん けっこう明確に伝えているので(笑)、継ぎたいという気持ちがあって、その気持ちが強いというのは知ってくれていると思います。
 私が小学生の時に母が他界しまして、私はそこから父の手一つで育てられてきたものですから、伯父にもすごく気にかけてもらって、かわいがってもらって、今も交流はあるという感じですね。

──お話を聞くところ、事業承継については、関わりのある全員で腹を割った話し合いはまだ持たれてはいないんですね。

林さん 今のところまったくないので、本当に腹の探り合いと言いますか(笑)。おそらく、次男がどういう気持ちで働いているか、社長がどう育てていこうと思っているかは、意図的に私に情報が降りてきていないと思うんです。私の気持ちがどれくらいのものかが向こう(次男)に伝わっているかもわからないんですが。なので、これからの立ち回り次第(笑)という状態です。

──林さんと従兄弟さんは、フランクにお付き合いをしている仲ではない?

林さん 従兄弟間にはけっこう距離感があって(笑)、というのも、和菓子店は大きい一族でやっているので、親戚で集まると敬語になっちゃうような関係なんです。年何回か一同で集まってはいるんですが。私から伯父さんにももちろん敬語ですし、従兄弟から私の父へも敬語ですし。そういうような固さがある関係(笑)ではあります。

 次期の社長を決めるのは、ほぼ伯父の独断になると思います。いつか比べられた時に、この能力なら私を一番にしよう、っていうふうに選ばせたいです。承継の順当さだけで言うと私はその時一番ではないと思うんですけど、それを逆転させるのが目標であり計画ですね(笑)。そこが勝負のタイミングだなと。

父の心境

──今和菓子店の専務でもあるお父様は林さんの継ぎたいという気持ちについてどう言っている?

林さん 父はずっと私第一で(笑)、私が望むことをやってくれたらいいっていうのは変わらないです。大学2回生で「継ぐ」っていう話をした時も、今も、「無理に継ぐことはないから、自分で他にやりたいことができたらそっちに行ってもいい」というスタンスですね。まあ、ただ、こちらは決意を固めてやっているので、もうちょっと後押しをしてほしい、私がより有利に立ち回れるように情報を教えてほしい、というのは正直な気持ちとしてはあるのですが(笑)。今の自分に何が必要かも変わってくるので。

──お父様は何か思うところがある?

林さん 完全に後押しできない理由は、和菓子店を継いで社長になるのがやりたいことなんだとしても、順当に行けばお前が一位になることはないかもしれないから、叶わないかもしれないよ、ということかと。おそらく失敗してほしくないという思いもあり、私の我の強さも伯父さんの我の強さも知っているので(笑)、きっと全部がうまいこといかないよって、心配をしてくれているんでしょうね。単純に「よし行け」とは言えないというのが父の心境ですね。

洋菓子店で修業中

──今洋菓子チェーンの店長をされているということですが、どういったお仕事?

林さん 今、1店舗の店長をやっていて、もうすぐ2店舗兼任の店長になりまして、関東の統括店長となります。

 店長の具体的な仕事は、お店に立っての通常の業務と、お店に並んでいるケーキのラインナップや納品を自分でコントロールしてすべて決める、従業員の管理など。

 あと、私は積極性が認められて、大きなブランドの中の新機軸のブランドも担当し、関東3店舗のお店を任せていただいています。規模は小さいですがそのぶん裁量が大きくて、例えば新商品を出す時なら、商品開発、ターゲット、写真をどうするか、SNSでどう発信するかなど、ブランドに関わることすべてに関わっています。

 いわば(和菓子の)会社にそのまま持って帰れる経験ができる、シミュレーションできる箱庭が今目の前にあるわけで、これを使えるだけ使ってやろうと思ってやってますね(笑)。

──継ぐために何を学ぶかというのは難しそうに思えます。

林さん 何を学んでどれだけ使えるものを持って帰るかは非常に難しいですね。和菓子店のことを考えて働かなければいけないんですが、今目の前にある仕事も当然簡単なものじゃなくて、うまくいかないこともたくさんあります。

 まあでも、私はけっこう自信過剰で(笑)、和菓子店に入った時にがっかりさせなければ、結果は残せるだろうというふうに思っているんです。和菓子店ですぐに何か任せてみようって思われるぐらいの力量にこの修業の間になれればいいかなと思っています。個人的にはもう、いつでも呼んでくれ(笑)という感じなんですけど。

──経営について自信があるということ?

林さん 何が一番の自信になっているのかは難しいんですけど、私は今までこれという失敗をしたことがなくて。と言っても、学生時代ならただセンスや運が良かっただけかもしれないので、社会に出てそれを試したいと思っていました。自分に裁量が与えられた時、学生の時と違った環境やメリット・デメリットがある中で決定を下して、ちゃんと結果を出せるのかが自分の能力の裏付けになると思ったので。

 今実際に答え合わせして、自分の自信がただの空っぽなものなのか、ちゃんと裏付けのあるものになっているのかを確かめている最中です。そして自信はまだ折れていないという状態ですね。

──修業先を和菓子屋ではなく洋菓子屋にしたのはなぜ?

林さん 就職活動の時、お菓子会社に絞って、洋菓子・和菓子全部見ていたんですけど、企業研究をしたり実際に会社の人と会って話した時、和菓子の業界はどこも体質的に古くて、トップに行けば行くほど考えが古い人が多かったです。そういったところであっても、和菓子でやっていけているノウハウがあるので学べることはあると思うんですけど、新しいことにチャレンジしていたり、新しいものをとり入れようとしている、あるいは流れに乗ろうとしている、流れを作ろうとしている会社に入ったほうが自分の求めているものを学べて、自分の能力に合った経験が積めるのではないかと思い、最終的に今の洋菓子の会社にしました。

 あと、今の会社は異動が多くて、昇進の回転も速い。短時間でより多くのことを学ぶとなると、いろいろな部署を経験したり昇進するとのは必須だと思っていたので、そういう点でも今の会社を選びました。そこに関しては計画どおり(笑)、いろいろな経験を積ませていただいて、新しいことにも挑戦させてもらっています。

──今学んでいることや実績は、社長にアピールできそうですか?

林さん 今こういう仕事をしてます、こういう結果を出しました、これだけ頼りにされました、ということは逐一報告して、伯父(社長)に伝えています。無理に大きく見せる必要はないですけど、今これだけの評価は得られていて、自分にこれだけの価値はありますということは最低限知っておいてもらおうと。

大事なものを犠牲にして

──考えることも手を動かすことも多そうですが、体力的には問題なく働いている?

林さん うーん、なんとも言えないところではありますが(笑)、仕事はハードではあるので、くたくたになりながらやっている時もあります。夢や仕事以上に家族や友人が大事ですが、20代中盤の大事な時期にそれらを犠牲にしながらなので、多少無理をしてもやってますね。この期間は絶対に必要だと思っているので。

 小学校の時に他界した私の母は、心を病んで自殺してしまったんです。その辺りの時期に離婚がどうこうという話もあり、私は中学に上がるタイミングで転校したんですね(※小学校の友人とは違う中学校に入学)。
 その時、小学校で仲が良かった友達が「みんなで携帯を買ったら連絡をずっととり合えるだろ」と言って関わりをつなげてくれて、ふさぎ込んでいた時期に助けてくれた

 友人が支えてくれなかったら私も病んでしまって母の後を追っていたかもしれないと思うと、自分の中で一番大事なのは友人たちです。友人は大阪、私は東京でなかなか会えず、友人との時間を犠牲にしてやっているので、生半可な気持ちで続けても意味がないと思って、死に物狂いで(笑)やってます。

 あとは祖母にもお世話になってるので、祖母のことも喜ばせてあげたい。祖父と違ってせっかく働いてる姿を見てくれているので。あと何回会えるのかと考えると、余計に早く結果を出したいという焦りもあります。

呪いと自負

林さん 不安定な時期には、私は一人では立てていなかった。友人を立つ理由にしたと言いますか、友人がそこにいたから、そのきっかけにすがって依存したという側面もあるかもしれません。何か一つもたれかかれるものがあった方が、立ちやすかったのかなと今となれば思います。そうやって周りに自分の存在意義を求めながらふんばったところはあるのかなと。

 だからかもしれないのですが、私は最終的に「周りに認められること」しかやりたくない(笑)。

 小学校・中学校の時にいろいろ重なりつらかった、不幸な体験をしたという思いは私にとって「呪い」になっている気がします。潜在意識に「不幸なことがあったのであれば、その経験を糧にして普通の人以上の成長をしていなければいけない」という呪いのようなものがある

 もちろんそんなのはひとりよがりなんですけど、普通ではない体験をして普通で終わったら不幸だっただけ、損をしただけという思いが自分の中にあるので、体験のもとをとってやろうと言いますか(笑)、通常以上に頭を悩ませたならその結果を出したい。っていうことでやってます。

──周りに認められて自分が満足するラインを定めるのは難しそうですね。

林さん そうですね、非常に難しいと思います。どこまで行ったらゴールなんだろうって考えるんですけど、結局お店の経営者とか、それに準ずる人たちって、ゴールはないんですね(笑)。定年退職もなく生涯現役でやることもざらにありますし、生活と仕事の境界線もなくなっていく。そんな中でも、私はよく癖が強いとか林らしいとか友人に言われることが多いのですが、そういう自分らしさが続けられたらいいかなと思っています。
 
──林さんらしさとは。

林さん 今の自分の様子だと、普通に生活しているだけでも私はアイディアが尽きることはなくて、きっとこれは歳を重ねても疲れても変わらないんじゃないかなって。
 人と違うことをしたいとか、人に認められる人と違うことをしたいっていう思いが自分の原動力になって、アイディア、考え、イメージ、そういったものが尽きない限りはこのまま続けていけると思います。

──あふれるアイディアを生かして、社長ではなく、商品開発などアイディアを使う部門でのトップでは満足できない?

林さん より多くの人に影響を与えたい、より多くの人に認められたい、というのが第一にあってその舞台として家業の会社を選んだので、多くの人に発信できるという意味で一番効率的なトップになりたい
 会社の形、方向性、和菓子店のブランドが世間にどう見られるかも全部自己表現だと思っているので、会社全体を作り上げて周りから認めてもらうところまでやりたい。商品という単位で自己表現をしてフィードバックをもらうだけでは物足りないですね。

ドラマチックな道を行きたい

──1、2年したら和菓子店の方に入られる予定ということですが、その時にはライバルと一緒に働くことになるわけですよね?それは望むところだっていう感じですか?

林さん はい。なんか、ワクワクしないですか?(笑)

 私は普通の働き方とか、普通で落ち着いちゃうのが嫌いなんです。家業で働くという誰も真似ができない舞台で、どこかドラマチックな(笑)中で働けて、自分が結果を出すだけじゃなくて、あの人と比べて自分はどうだと考えながら働けるのは自分としては魅力的で、スパイスになると思っています。

──うーん、すごいなー。継ぎたいと思えるような会社の経営をされているおうちに生まれたのは、幸運だったと思っていますか?

林さん 環境には恵まれました。今目の前にこれだけ面白いものが(笑)用意されているので、そのことに関しては感謝してますし、よかったなと思ってます。
 でもおそらく他の家に生まれても、何からの形で自分のエゴが通る道、自己表現ができる道を探していたとは思いますし、もし今この瞬間に家業をとりあげられたとしても、自分は何らかの形で成功するとは思っています。

 私はつらい経験をガソリンにして、普通ではないドラマチックな道を探して今は和菓子店を継ごうと動いていますが、逆に言うともっと楽しいことがあればいつでもレールを外れる準備もできています(笑)。一番面白くなりそうなことに力を捧げているだけなので、他の道があればその道もいいなと思いながら。

時代に乗り直す

──林さんが経営者になったら、新しくやりたいことは?

林さん 受け継いできたこだわりの製法で和菓子を作るのと並行して、例えばちょっと洋の要素を入れて和洋の混ざり合ったようなものを作ったりとか。他の会社からこういうものを作れませんかと依頼されたことに対して新しい商品の提案をする、そういったところで自分の経験は生かされるのかなと思っています。
 
 和菓子業界は世襲制がある会社が多くて、どこかで時代が止まってると思うんです。ずっとなめらかに時代の流れを追いながらやっている会社はほとんどないと思うので、自分の代でもう一度時代に乗り直したい

 今、老舗メーカーではないところから若い人にうける透明な生菓子なんかも出てきてますけど、老舗メーカーがそれに対抗できるようなものを作れているかっていうとごく一部です。きっとそれって、細胞が切り替わっていないというか、社内のアイディアの新陳代謝がよくないんだと思うんですよ。そこを、自分の代で新鮮なものに変えられたらなって。一歩遅れたところで伝統のものを作ってますっていうのではなくて、多くのところに持っていける何かがあればと思ってます。

──新しい商品とか新しい売り方とかですか?

林さん 商品や売り方もそうだし、使い方もそうだと思いますし、和菓子をツールと捉えて、それに対する考え方とか価値観とか見方っていうのはいくらでも変えられると思っています。
 消費のされ方一つとってもみても、この時代の流れの中で配送品が増えたり、冷凍されたものが増えたり、どんどん使われ方は変わっていっていると思うので、新しい使い方の提案もできたらいいなと思っています。

イメージを言葉に、そして形に

──お菓子が大好きな林さんの、おすすめのお菓子をお聞きしたいのですが。

林さん おすすめのお菓子ですか……難しいなー……えー、じゃあ…ポテトチップス(笑)。

──ポテトチップス全般ですか?

林さん カルビーの「ポテトチップス うすしお味」。あと、「堅あげポテト」(笑)。結局、スナックもおいしいんですよ。

──おいしいですよねえ。ご実家の和菓子店では、そういうしょっぱい系のお菓子は…、おせんべいも焼いてらっしゃるんでしたっけ?

林さん せんべいも焼いてます。薄い玉子せんべいのようなものだったりだとか、けっこういろいろあります。
 せんべいって、実は焼きたてってやわらかくてくねんくねんなんです。その熱々のくねんくねんのせんべいが、固まったせんべいより断然おいしい

──へえー!食べてみたい!

林さん これはせんべいを作っているお店しか食べられない、超レアな品ですね(笑)。お店の人の特権かもしれない。これもお客さんに食べてもらえたら楽しいと思うんですけどねえー。

 そういったようにいろいろな売り方ができたらもっと楽しいなあと。ただ売るだけじゃなくて、アイディアで形を変えていけたらいいなと思っています。

 きっと私だけが知っているお菓子の魅力ってたくさんあるので、自分の中にあるイメージを全部言葉にして、そして形にしていけたらいいなと思います。

(終わり)

※──はインタビュアー田中の発言です。

努力されながらもさらに楽しんでいるご様子に感嘆しました。林さんのアイディアが生かされた新しい和菓子、いつか食べたいです!

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