イズモアリタさんへのインタビュー/第3回「タロットを鏡として見る」
テキスタイル作家のイズモアリタさんにインタビューしました。
第3回では、タロットカードに出会ったきっかけや、今年出版されたタロットデッキ「ALRESCHA22」に込めた想いなどについて伺いました。
占いを超えたタロットのお話です。
タロットカードの奥に広がる世界
ーーアリタさんはどんなきっかけでタロットに出会ったんですか?
9歳の時、お家にあったんですね。
タロットが趣味の人がいたわけじゃないんです。
当時、ユリ・ゲラーとかネッシーとか人間と猿の中間にあたるオリバーとか、不思議なものが流行ってました。
70年代の中頃です。
占星術的には木星が魚座に入ってて、印象的だった。
かなりミステリアスなものとか心理的なものが流行って、大衆がそういうのを求める時期でした。
そんな年のクリスマスシーズン、12月24日に、クリスマスケーキを家族で買ったんです。
そしたらタロットカードがついてたんですよ。
メジャーな企業のケーキだったんですけどね。
ゴールデンタイムのテレビコマーシャルで、隠者か何かのカードが出てきて「今このケーキを買うとタロットカードがもらえるよ」って言ってました。
そういう企画が普通に通った時代なんでしょうね、きっと。
タロットを見た時に、私すごくインスピレーションを受けました。
占いに関しては当時あんまり興味なかったし、今も実はあんまり興味がないんですよ。
じゃあ何に惹かれたかというと、絵の奥にあるイマジネーションですね。
ただの象徴記号に留まらず、何かとてつもない世界が広がっている。
ある種のアーキタイプ、原型っていうのかな、イメージが頭の中で想起されて、なんかすごい貯蔵庫だなって感じました。
当時、お家にあった図鑑でエジプト、ギリシャ、マヤなど、世界のいろんな神話のおもしろい絵を見て、自分でもそれを描いたりしてたんですよ。
それと同線上にタロットのおもしろい世界があって、夢中になりました。
ーー9歳でタロットの奥にある世界に気づけるってすごいですね!
いや、たぶんこれ今だから言語化できてるけど、当時はわかんなくて夢中になってましたね。
「あっ 神秘的や!」って思ってました。
すごく神秘的な雰囲気があるなあと。
そう言語化できるのは、私が今大人になって、当時の子供であった私を分析できるからね。
これが最初の馴れ初めです、タロットとの。
人に寄り添うタロット
ーー今年、アリタさんがデザインされた初のタロットデッキ「ALRESCHA22」が出版されました。
こちらのタロットにはどんな想いを込められたんですか?
まずね、タロットには占いっていう側面があります。
高校ぐらいの時かな、下級生の女の子たち相手にタロットをやってみたら、めちゃめちゃ当たったんですよ。
やっぱり当たるんだなと思いました。
科学的にはその法則性はわかりません。
迷信とも言えるし、自己暗示とも言えるしね。
実証性はないわけですけど、ただ感覚的には当たるんですよ。
そのことは当時、どう解釈していいかわからなかった。
私が思春期の70年代から80年代頃は、今は精神世界とかね、スピリチュアルって形で広まってる元のものが、もうある程度ボリュームを持っていました。
社会にちょっと違和感がある自分だったので、答えをそういうところに求めた。
年の割には難しいもの読んでたんです。
ユングとかシュタイナーとかね、クリシュナムルティとか、普通読んだら頭おかしくなりそうな(笑)
それらはある意味特殊な分野ですが、もうちょっとベーシックな、例えば新約・旧約聖書、般若心経、法華経、あるいは野口整体みたいな整体のメソッドとかも、図書館や本屋さんに行けば情報がある。
で、いろいろ読みまくってたんですけど、「占いはダメです」って書いてある本が多かったんですよ。
自分が努力して、何も知らないところから未来にたどり着く楽しさってあるわけですよね。
その人が精神的に成熟してりゃいいんだけど、あらかじめ未来がわかることで、持っている心の弱さが占いに入る。
迷いがあるよ、とかね。
一方で、実際にリーディングしていくと、現代科学とか脳神経科学とか深層心理学ではまだまだ明晰に言いきれない、何か不思議なポテンシャルも感じるわけです。
ミッシングっていうのかな、そこに何か橋をかけることってできないだろうかっていうのがずっとあったんですね。
ALRESCHAって、アラビア語で「結ぶ」って意味なんですよ。
人は普通、二つの矛盾したものを統合することは難しいと感じます。
でも、もっと高い次元から見たら、それは可能なんです。
そういった意味で結ぶっていう感覚があります。
タロットの絵札を見ることによって暗示にかかるんではなくて、その中の可能性を想像したり自由度をもう一回見つめ直す、という意図でタロットを作りたいっていうのがあったんですよね。
元々、タロットカード=占いって概念に対して、よく当たるけど本当にいいのかなって疑問がありました。
自分の中でそれを払拭したというのかな、克服できた感覚ってあるんですよ。
タロットは鏡として見る。
マンダラっていうのが昔からあってね。
それは固定した絵なわけですよね。
だけど、タロットは混ぜ合わせることによっていろんな表情を見せてくれる。
その人の今の状況に合わせて、寄り添ったマンダラになるんじゃないか。
そういう閃きがワーッと起きてた時に、ニチユーさんからオファーをいただいたんです。
私には蓄積してきた新しいタロットの発想があります。
占いというカテゴリにあってももちろんいいけど、占いという言葉の意味そのものを深めたり高めたりするような内容にしていくのは、すごく楽しいことだなと思って。
そういう気持ちでタロットを作りましたね。
ーーインスタライブでアリタさんは
「宇宙は全部自分の中に内包されたものと相似形なので、自分の中でチューニングができる。
その秘密をタロットは明かしてくれる」
と仰っていました。
どうすればタロットを使って自分をチューニングすることができますか?
例えば、「塔」というカードがあります。
塔からドッカーンと雷鳴が落ちてるようなカードです。
あと悪魔のカードとか
死のカードとか
人間にとってちょっと不都合というか、あんまり出てほしくないカードって混ざってるわけですよね。
逆に、「これ出たらいいよね」っていうめちゃくちゃキラキラしたカードもあるわけですよ。
そこに一喜一憂するのではなくて、出たカードっていうのは、そこをお掃除できるって感覚なんですよ。
自分の中の潜在的な可能性として、ある種のエネルギーがあるとする。
それをタロットっていう鏡を通して見ることで、修正のチャンスが得られるんです。
私はよく、「善意でタロットの展開を見てね」っていう言い方をしてます。
怖れで見たり、最初に期待から未来を設定して、それが叶うかどうかという見方をしたりすると、心がやっぱり乱れるんですよね。
花占いと一緒で、「好き」「嫌い」とやって最後に「好き」となるまで
そこら辺の花畑を全部ダメにするぐらいやり続けるみたいな(笑)
ーー「この未来しか私は嫌だ!」みたいな感じですよね(笑)
そうそう(笑)
ー第4回へ続くー
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