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魚返明未さんへのインタビュー/第2回「そこにいるだけで肯定される時間」

ジャズピアニストの魚返おがえり明未あみさんにインタビューしました。
第2回では、人と一緒に演奏する上で大切にしていることや、スタンダード・ナンバーへの思いについて伺っています。

「そこにいるだけでいい」
そんな優しい世界を感じられるお話です。

動画版はこちら(演奏あり)

魚返明未さんプロフィール
1991年生まれ、東京都出身。
東京藝術大学音楽学部作曲科在学中の2015年、初リーダー作『Steep Slope』をリリース。
現在、自身のバンドの他、様々なグループで演奏活動をしている。
また、映画音楽などの作曲も手がけている。

「表現」とはまた別の、音楽の素晴らしさ

ーー明未さんはジャズのどんなところが好きですか?

難しいですね。
ロックから聞きはじめてるっていうこともあって、ブルースフィーリングのある音楽は小さい頃から好きでした。

やっぱジャズにもブルースは大切な要素としてあると思う。
黒人音楽のブルースフィーリングがすごく好きなんです。

自分も演奏するようになってからは、一緒にやる人がいるっていうのがすごく好きになりました。

ジャズがっていう話じゃないかもしれないですけど。

次の瞬間の音をみんなで聞きながら演奏していく。
一回限りのそういった部分が好きですかね。

ーーみんなで作りあげていく感じが好きなんですか?

そうですね、そこは自分の時期によってもいろいろブレてるんですけど(笑)
みんなで作りあげるっていう部分はずっと変わらないんですが、その中でどれぐらい個が重視されるのか、そこは難しい。

4人いたとしたら、その4人が演奏してるっていうことだけでまずすごく素敵なことなんじゃないかな。

表現っていう話になると、またちょっとその人なりの何かを出さなきゃいけないみたいなことになってくる。

そういう音楽の素晴らしさもあると思うんですけど、そういう時ばっかりじゃない。

その人がいるだけですごくいいじゃんみたいな、肯定される時間ってあると思うんで。
場合によってですけどね。

ーーライブを拝見した時、明未さんがすごくニコニコしながら演奏されてて、楽しそうだなって思いました。
弾いてる時はどんなこと考えてるんですか?

楽しいっていうことがまずあるんですけど、そんな言ってかっこよくなるようなことは考えてないと思いますよ、たぶん(笑)

ーー弾くことにただ集中してる、みたいな感じ?

まあそうですね。
あとは、この曲すごく好きだなとか、この人の音すごく美しいなとか、こんなこと次弾きたくなっちゃったなとか、そんなことですかね。

スタンダードが大好き

ーースタンダードで好きな曲ってありますか?

いやー、難しいですね。
すごくスタンダード好きなので。
やー、難しいな、それは。

ーーじゃ、春に合う曲で。

春ですか。
えー、難しいな(笑)

スタンダードってやっぱりみんなすごくいい曲なので。
ちょっと甲乙つけがたいかな。

ーーじゃあ選べないくらい好きな曲がいっぱいあるって感じですか?

そうですね、やっぱジャズ聞くのも好きなんで。
それぞれの曲に好きな演奏みたいなのもありますし。
好きなスタンダードって難しいですね、選ぶの。

よく弾くスタンダードみたいなのはあるんですけど。
よく弾かなくても大好きっていう曲もいっぱいありますし。

ライブだと、例えばジェローム・カーンの『Long Ago and Far Away』っていう曲とか、『If I Should Lose You』っていうラルフ・レインジャーって人の曲とかよく弾いてますかね。

ーーそれをチョイスする理由ってありますか?

けっこう自分のソロとかトリオとかで弾くことが多いですけれども、フラットな気持ちで臨めるからっていう理由はあるかもしれないですね。

懐の深い曲な感じがして。
深いっていうか、変容する余地のある曲というか、まっさらな生地っていうか。

もちろんすごくドラマチックな曲なんですけど、そこにいろいろなものを投影する余地のある曲だなって感じがして。

ーー弾く人によっていろんな世界が広がるって感じですか?

まあそうですね、けっこうどの人が弾いてもある程度はその曲の世界になるんですけど。

物があんまりない部屋みたいな感じですかね。
けど、物がない部屋だからって別にいろんなことができるわけでもないじゃないですか。

まずはそこから始めたい、みたいな気持ちです。

自分のライブだと、スタンダードの割合って半分を越したりすることはあんまりない。

その日弾けるスタンダードって限られるので、なんかスタンダード弾きたいなって時にそういうちょっとまっさらなものを選びがちですね。

ーーリセットするような感じですか?

ああ、まあリセットですね。
ちょっと初心に返るみたいなところはあるかもしれない。

ピアノの役割

ーーバンドの中でのピアノの役割って何ですか?

難しい質問ですね(笑)
一般的によく言われるのはハーモニーを出すっていうことだと思います。

あとはジャズだと、プレイヤーはみんなリズムを出していくわけですけど、ピアノはアタックが出やすいのでリズム楽器、打楽器っていう側面もある。

リズムとハーモニー、そしてメロディー。
バンドによりますかね。

管楽器がいたりすると、ハーモニー的なアプローチで対話する機会ってのは増えていくと思いますし。

ーー楽器の編成によっていろいろ組み立てていくんですか?

ちょっと気分が変わるかもしれないですね。
組み立てるっていうほど、僕はそんなに計算しているわけじゃないんですけど(笑)

~第3回へ続く~

<公演情報>
邦人室内楽コンサートシリーズPointポワン deドゥ Vueヴュ vol.16』
2023年4月19日(水) 18:30開場 19:00開演
東京文化会館 小ホール 全席自由 ¥4,000(前売券・当日券 共通)
魚返明未さんの新曲「Impose Nothing」が初演されます。
(演奏:トリオ・ヴェントゥス
チケットのご予約はこちらから

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