クルマのパーツを使い、季節を意識したインスタレーション「たまゆら」
現在、INTERSECT BY LEXUS – LEXUS 1Fガレージでは、インスタレーション「たまゆら」の展示をおこなっています。
「たまゆら」のテーマは「雨」。ガレージについては、以前こちらでお話したとおり、これまでさまざまな表現・作品をお届けしてましたが、今回のようにストレートなモチーフを扱うのは初めての試みです。
たとえば、憂鬱な気分になりがちな雨の日でも、雨が降っている様子や雨音を聞いていると不思議と穏やかで満たされた気分になることがあります。まさにLEXUSが大切に思う自然を慈しむ感性であり、それをクルマのボディに踊る雨粒や水の音のイメージで表現できないか、というところから制作がスタートしました。
はじめこそ、「雨をクルマのなかから見ているときの感覚が味わえるようなものがつくりたい」、「クルマで雨水との接点を1番感じられるのはフロントガラス、それを使おうか!?」などと盛り上がっていたのですが……。そこからは大変な道のりでした。
「走ることを目的につくられた素材」をアートにする難しさ
実際の制作をになったのはクリエイティブチーム〈カイブツ〉。企画から実際のモノづくりまで手がける“職人”のような方々で、LEXUSが大切にするCRAFTEDの精神を表現するためご協力いただきました。
その〈カイブツ〉チームをもってして、
「水をコントロールするのが本当に大変……」
といわせてしまうほど、制作は難航。
当初はフロントガラスの上で水が踊る様子を表現できないかと、フロントガラスを水平に吊るし、その上で水滴を動かそうと試行錯誤してみましたが、イメージするように水が動かず、別の素材を探すことになりました。
そこから現在の展示に使っているLC500 Convertibleのソフトトップ、ルーフ素材にたどり着きますが、これまた一筋縄ではいきません。クルマに使われているものそのままのサイズだと作品を表現するには小さ過ぎたため、急遽ハンガリーから素材を取り寄せることに。ようやく届いたと思ったら、今度は水の動きに問題が発生。思うような水の動きにならないのです。走るクルマに使われる素材(走るうちに水を落としていく)なので、水を“魅せる”ことが考えられていない、というのは当然といえば当然なのですが……。空飛ぶ絨毯ならぬ空飛ぶ布の上に「落ちそうで落ちない水」をつくりだすことがこんなに難しいこととは想像以上でした。
今回の制作を通して感じたことは、クルマは走るもので、それにあわせて精巧にパーツがつくられているということ。そんな当然のことにあらためて気づき、クルマづくりの緻密さを学び感じられる機会になりました。
一般的な「水」のイメージを覆す動きに注目
完成した「たまゆら」をご覧になると、きっと皆さんが思う水とはまったく違う動き・姿に驚かれると思います。
水の動きと音があい、ステージである布の上を動いて進み、分裂・結合を繰り返し変化していく。それは、跳ねるというより「たゆたう」という言葉がぴったり。無色透明のはずの水が、水銀を思わせるほど表面がギラリと光る様子は、まったく別の素材のようであり、不思議な生きもののようにも見えます。予想できない動きや形はずっと見ていても飽きることがありません。
そうしているうちに訪れるエンディング。その“音”にまた驚かされることでしょう。終わりを迎えた水は循環してまた布のステージに戻ります。
アップカミングなアーティストとの協働
ガレージで協働するのは、LEXUSがそのときどきに気になるモノ・コト・ヒトに関係するため、そのときに有名かは関係なく、アップカミングなアーティストの方々とご一緒することが多くなります。振り返ると、いまでは巨匠と呼ばれる方々と協働してきたことに気づかされますし、その後のご活躍を拝見する度に嬉しい気持ちになります。
今回ご協力いただいた〈カイブツ〉もしかり。そのご活躍から、今後はもっともっとこの方々の作品を体験する機会が増えるだろうと思いますが、だからこそ今回のガレージのような距離感で、というのはなかなか難しくなってくるかもしれません。「たまゆら」は8月末まで展示を予定していますので、この貴重な機会をお見逃しなく。
また、これからもさまざまなかたちで四季ごとの情景やうつろう天候、そこにしかない美しさを感じられるような展示を企画していますので、どうぞINTERSECTで心豊かなひとときをお過ごしください。