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中国のMCN企業を訪問!ライブコマースとは?MCN企業でKOLはどのように働いているのか?

今回、中国に住んでいた頃の知り合いが経営しているMCN企業を訪問し、実際の様子を見学してきました。MCN、ライブコマース、MCN企業と提携しているKOLについてまとめます。

1.自己紹介

こんにちは、都築伽織です。
中国で小学校時代を過ごした経験や、MCNを経営する友人、アパレルの受託開発を手がける友人の影響でECに強い興味を持ち、現在は越境EC事業の立ち上げに取り組んでいます。
中国語と日本語がネイティブであり、英語も話すことができるため、国際市場での活躍を目指しています。

シンガポールのビジネスイベントの合間に撮影

2. MCN

MCN(マルチチャンネルネットワーク)は、複数のチャンネルと提携して様々なサービスを提供し、チャンネルの成長をサポートします。視聴者の獲得、収益化、コンテンツ制作の支援、クリエイター同士のコラボレーション、著作権に関する支援、チャンネルの分析、プロモーションなどサービスの内容は多岐にわたります。
日本においては、UUUMやMAKER StudiosといったYouTuberを支援する企業が存在しています。
中国では、現在数千を超えるMCNが存在しており、今も尚増加しています。中国のMCNでは上記のサービスに加え、KOLらにライブコマースの支援を行っています。

MCN上位3社


1. 无忧传媒 Joy Media
2016年に設立された、業界では有名なKOLのマネジメント会社です。ライブ配信、ショートビデオ、電子商取引など様々な分野で大きな影響力を持っています。現在、同社は契約タレントを8万人以上抱え、総フォロワー数は18億人を超えています。
2.遥望YOWANT
遥望科技は2010年に設立されました。主な事業はライブ配信です。国内外の2.5万以上のブランドと提携しており、独自のプラットフォームを運営しています。遥望は、美容グッズや化粧品だけでなく、酒類や宝石といった高価な商品も取り扱っています。
3. 青藤文化
中国で有名なMCN会社です。1990年代生まれの家族ファン層とZ世代の若者層のコンテンツニーズに焦点を当てています。美容、マタニティ&ベビーケア、食品、ペットなどの分野で強みを持っています。契約しているKOLは300人以上です。500以上のブランドにサービスを提供しています。
4.蜂群 HIVE
2014年に設立されました。KOLの育成に力を入れているのが特徴です。蜂群が独占しているKOLは1,000人を超えており、全プラットフォームでの総フォロワー数は7.5億人に達しています。また、500以上のブランドにサービスを提供しています。月間動画視聴回数は150億回以上です

引用元:https://www.maigoo.com/best/23652.html

3. ライブコマース


ライブコマースとは、ライブ配信とEコマースを組み合わせたものです。ライブ配信の中で商品を紹介して、視聴者をECサイトへと誘導します。配信者と視聴者はコメントを用いてリアルタイムにコミュニケーションを取ることが可能です。そのため、従来のECサイト上で文章と写真を用いて商品を紹介する方法と比べて、より商品がもつ魅力を伝えたり、商品に対する疑問を解消したりすることができます。
中国はライブコマースの先進国とされており、KOLによる商品の紹介が売上を大きく伸ばした例が多くあります。市場規模も拡大中で、2021 年には1兆2012億元(約24 兆240億円)を記録しました。今後も拡大していくことが予想されており、2025年には2兆1373億元(約42兆円)の市場規模となるとされています。(参考:iiMedia Research(艾媒咨询) 「2022-2023年中国直播电商行业运行大数据分析及趋势研究报告(2022年6月)」)

2022-2023年中国直播电商行业运行大数据分析及趋势研究报告
引用元:https://www.163.com/dy/article/HKJJU8LU05381AAK.html

4.中国国内でのライブコマース活用事例

・不動産
中国ではライブ配信がブームとなっており、ライブコマースでの住宅販売が不動産業界の新たなトレンドとなりつつあります。そのような中で成功を収めているのが、快手の不動産事業プラットフォーム「快手理想家」です。2022年12月末には、1日あたりのライブ配信視聴者300万人、ショート動画の視聴者数1億人、全体のフォロワー2.3億人を記録しました。今年9月6日に行われた安家节(家を販売するイベント)では、66の都市で900以上の物件の取引を促進し、総売上高は69億円を突破しました。

引用元:https://www.163.com/dy/article/IIF2MF5O05199FB7.html

・出前&宅配
美团外卖(中国版UberEATS)は先日、「神抢手」プロジェクトを開始しました。「神抢手」は従来の出前アプリとは異なり、ライブ配信、タイムセールの機能が追加されました。飲食店はライブコマースや動画などを通じて、ユーザーに商品の看板メニューをアピールすることができます。消費者にとっては、選択がしやすくなる、低価格で商品を手にすることができるといったメリットがあります。

引用元:https://sghexport.shobserver.com/html/baijiahao/2023/08/01/1087498.html

5.ライブコマースで人気となった日本商品


・水筒
中国では東洋医学の思想が強く、温かい飲み物が好まれます。体温は健康と深く結びついていると考えられており、夏であっても保温ボトルに入れた白湯を持ち歩く人が多いです。コンビニ等での購入よりも、自宅から持参するのが一般的なため、保温性の高い日本の水筒が人気となっています。

・化粧品
シングルズデーの売上ランキングでは日本の大手化粧品ブランドが常に上位にランクインしています。品質や成分を重視している人が多く、ONSENSOU、江原道などのブランドが人気です。最近では、髪の毛のケアに気を配る人が増えており、ヘアケア商品が流行しつつあります。

・子供用品
一人っ子政策が終了し、3人まで子供を持つことが容認されるようになりましたが、出生率は期待されていたほど伸びていません。しかし、一人っ子政策時代に生まれた世代が親となり、祖父母からも子育ての支援を受けているため、子供1人にかける費用は以前と比べて大幅に増加しています。子供用品の高級志向が強まった結果、価格は高いが品質の良い日本の子供用品が好まれるようになりました。

6.海外商品の事例

辛选集团の創始者であり、快手(ライブコマースプラットフォーム)のトップKOLである辛巴は、タイのバンコクでドリアンなどのフルーツを販売しました。ドリアンだけで162万個を売り上げ、売上高は3億元を突破しました。

引用元:https://xueqiu.com/9105434758/250174656

7. MCN企業でのKOL


今回訪問した企業では、KOLを5段階で評価していました。最上位であるランク5のKOLには、固定給に加えて売上の数パーセントが支払われるため、中には月収が2000万円を超えるKOLもいるそうです。
業務を見学させていたKOLはランク3の方でした。ランク3では、ライブコマースに加えて自分のSNSアカウントで頻繁に動画を投稿する必要があり、動画撮影や動画の原稿の打ち合わせが業務に含まれます。午前10時に出社し、初めに体重測定が行われます。カメラ越しだと太って見えることもあり、体重管理は非常に重要だそうです。太ってしまった場合、罰金を科されることもあるのだとか。その後、動画撮影の打ち合わせを行い、それぞれが動画撮影に取り組みます。ほとんどのKOLが午前の時間を動画撮影に費やしていました。午後は夜に行うライブコマースのための打ち合わせから始まります。ライブコマースで紹介する商品の特徴や成分、値段、個数などを一つ一つ細かくチェックしていきます。一晩で扱う約10~20個の商品全てをチェックしなければなりません。打ち合わせを終えた後は配信の準備を行います。6時から7時が中国の定時になっているところが多いので、その時間に合わせて配信を始めていきます。今回訪問した時期は11月11日にTaobaoで毎年開催されるショッピングイベントを控えていたため、力の入った配信が深夜0時まで多く行われていました。

ライブコマース配信中の様子(友人の経営するMCNにて)

8.感想

中国では、国民の多くにライブコマースが浸透しつつあります。ライブコマースの市場規模が拡大する中、海外の商品の取り扱いや海外の市場への進出は今後さらに増えていくのではないでしょうか。今後の動向を注視しつつ、取り入れられるものは取り入れていきたいです。

SNSのフォロワー数やライブコマースの売上は細かく数字として評価され、果ては体重超過による罰金。一見すると華やかなKOLの世界は、想像していたよりもはるかに厳しいものでした。
月収10万円のKOLから2000万円を超えるKOLまで幅広く在籍しており、競争も非常に激しかったです。
ライブコマースの配信そのものについては、配信が始まった瞬間の切り替えと、商品を紹介するときの熱量が印象に残っています。また、僅か5分で約100個の商品が買われていく様は圧倒的でした。



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