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姫路海城という学校名

「姫路海城高校」という学校名が問題になっています。東京都の私立「海城中学高等学校」と何らかの関係があると思わせるからです。
「姫路海城」側は「海城中高」の存在は知っていたが、「姫路」が付いているから、問題ないと思ったとのこと。

しかしこの認識は誤りです。「姫路」は地名であるため、所在地を表すものとして、商標の世界では識別力がないと判断される言葉です。つまり類否の判断の際には地名は無視されます。 
そうなると、「姫路海城」と「海城」は完全に類似であり、しかも「海城」は著名な学校名であるため、混同を生じさせると判断されます。

東京の学校法人海城学園は、「海城」「海城学園」「海城中学校」「海城高等学校」など多くの商標を登録しており(第3028095号ほか)、「姫路海城」という商標を出願しても、上記商標と類似と判断され、さらに出所混同を生じさせるという理由で拒絶されると予想します。
また使用した場合には、上記商標権の侵害や不正競争行為となります。

似たような事例として、「呉青山学院」事件がありました。この事件でも「青山学院」と混同を生じさせるとして、不正競争防止法による差止が認められました(平成13年(ワ)第967号、東京地裁)。

今回の事件でも「姫路海城」の名称を強行すると、同様の判断が下ったと思われます。
学校法人青山学院も多くの登録商標を有しています。この事件でも商標は類似と判断されています。

「有名な学校名+地名」から成り立つ学校名は、地名が付いているから非類似になるというものではなく、むしろ地名が付いているからこそ、何らかの関係があると思わせてしまうという点を認識すべきです。

参考サイト

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。