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【新型コロナへの対策の情報に対して、一人ひとりが考え、納得して行動をするためのシリーズ その1】


山中さんは中学校高校の、それも学んだ時期が5年間重なっていた1年上の先輩ですが、本当に今回の事でも、見習うべきところが多いです。

チームワークの大切さを、中学の時の柔道部の顧問の西浜先生(体育)から怒られたことで、その後、一生、大事にしてきた、とのことでした。

下記は、FBで見たあるニュースサイトの記事である(一部、引用)

こうした中で、ノーベル医学生理学賞受賞者の山中伸弥・京都大iPS細胞研究所所長が、「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」と題した個人サイトを開設し、その情報発信が注目を集めている。趣味のマラソンを引き合いに「新型コロナウイルスとの闘いは短距離走ではありません。1年は続く可能性のある長いマラソンです」と呼びかけ、国民に長期戦の覚悟を要求している。26日には記事をアップデート。「今、求められる対策」と銘打った項目では
新型コロナウイルスを制圧することはもはや困難です。受け入れるしかないと私は思います。社会崩壊も、医療崩壊も起こらない形で、ゆっくりと受け入れる必要があります。と現実を直視するように訴え、図解も示した。

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出典:山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

以上が記事からの引用です。

さっそく私も、山中さんが作られたページを拝見した。不要な装飾などがない、無料で作れるWordpressというシステムを使われたと思えるシンプルなHPだが、必要な項目がしっかりと網羅的に整理されている。



山中さんは整形外科医から研究の世界に転身されましたが、私は疫学それも感染症をやってたんだから少しは皆さんに貢献しなきゃと思いました。

そこで、私もワンポイントレクチャーをします。目的は、

一人ひとりが考え、納得して行動をするため、です。

初回は、ちょっと基礎的なことから固めましょう。

ニュースなどで感度特異度と言う言葉が使われることがありますよね。

これは検査の能力の評価のことです。

感度:本当に病気であるときにそれをちゃんと陽性であると認識(判定)できる確率のこと

特異度:本当に病気ではないときに、陰性であると認識(判定)できる確率のこと

今回で言えば、体にウィルスがあって陽性であると判定できるのが感度であり、ウィルスがない時に陰性であるとも判定できるのが特異度です。

このように、検査の結果は必ずしも正しいとは限らないと言う前提がまずあります。

例えば、新型コロナウィルスの検査で陽性だったといっても、特異度が低ければ、本当はウィルス感染してない可能性もあると言うわけです。

その中で、感度と特異度が両方とも高くなれば良いのですが、これは片方が高くなれば片方が下がると言うトレードオフの関係にあるのです。

トレードオフの理解のために

例えば海外から入国する際のX線のスキャナーで麻薬やナイフ等を発見する検査があるとして、あまりにも厳しくすると問題ないものまでビーと音がなり、だからといって緩めにすると見逃をしてしまいます。

このように厳し過ぎてビーと言う音がなる率は、偽陽性率といい、本当は見逃したらいけないのに見逃す率を偽陰性率といいます。

そして

偽陽性率=1 −特異度

の関係があり、

偽陰性率=1 −感度

の関係があります。

いずれにしろ状況によって偽陰性率を下げたいのか偽陽性率を下げたいのかをまず決めてそれによって検査能力をコントロールできるときには調整します。

例えば、間違って病気の人が検査をすり抜けてしまったら(偽陰性)、その人と社会にとんでもなく損失を与える場合は、間違って捕まえてしまった人(偽陽性)には、「どうか社会防衛のために我慢してください」と理解を求めたり、後から保障をする、という考え方です。

でも、検査結果だけで診断を決めるわけではなく、その後、医師が診断をしますので、検査結果を受け止める医師の判断の方が最終的には大事になります。

以上の言葉や理屈を理解していれば、より深めた考え方ができるかもしれません。

下記に、これらの観点から議論した記事がありました。



下記に一部を引用しますが、ここまで読んでくださった方は、理解が難しくなくなったと思います。

日本プライマリ・ケア連合学会の診療の手引きによれば、「PCR検査はウイルスゲノムを検出するという原理から、一般論として感度は低く、特異度が高いと考えられます。初期のPCR検査で陰性だが後日陽性となった患者等の検討により、感度は30~70%程度、特異度は99%以上と推定されています」とあります。ほかの専門家のコメントでもだいたい同じぐらいです。

特異度が高いと、感度が低いことがわかりますね。

 感度とは、新型コロナウイルスに感染している人に検査をして、正確に陽性という結果が得られる割合です。感度が70%だとすると、感染者100人に検査して陽性が70人、陰性が30人になります。この30人は偽陰性です。原理的には微量のDNAでも増幅できるはずのPCR法でも、検体にウイルスが含まれていなければ正確な結果が出ません。正しく検体を採取できなかったり、検体を採取した場所にウイルスが排出されていなかったりすると、ウイルスに感染していても偽陰性になります。

 偽陰性は、1-感度 というのがここでもわかりますよね。

偽陰性なのに感染していないと誤解して出歩くと、他の人に感染させるかもしれません。PCR検査は感度がそれほど高くないので、検査で陰性であっても感染していないと安心はできません。せきや発熱といった症状がある場合は、検査するしないにかかわらず、外出を控えてください。そもそも、新型コロナでなくてもインフルエンザそのほかの呼吸器感染症かもしれません。

検査をしてもこれですから、しなくで自己判断による「偽陰性」だと感染を広めてしまうことも指摘されています。それが高齢者だったら、急速に悪化させますよね。

さらに突っ込んだ議論をしたい人のために

生まれて当然の疑問その1

「正しい」値とはなにか

理論的にはGold Standardと言われますが、機械等による検査ではなく人間である医師の診断ということになります。

でも、実際は、複数、あるいは多数の医師が同じ症例を診断しても一致するとは限らず、そのため研究では「診断一致率」などの概念もあります。

また、臨床においては、医師はまず検査結果を重視し、検査で得られる情報以外から、検査結果と整合性がない情報が患者やその関係者から得られた場合のみ、検査結果を鵜呑みにしないで、多面的に再考します。

また、そもそも検査危機で、陽性と判断する際の設定にも、医師の判断(といってもこれは、臨床の(クリニックや病院で診療している)医師ではなく開発にかかわる医療機器メーカーに協力する医師ですが)が入っています。そのため、多くの場合は検査も医師の診断も、相互依存の関係になります。

生まれて当然の疑問その2

感度が率だとして、そもそもなぜそういう値が計算できるのか。分母と分子の数字はどこで得られたのか?

これも全うなものです。検査の装置やキットを販売する前に、事前に多人数の被験者や症例に対して、行わなければ数字が得られません。

新型コロナのように、それまで経験していないものについては、事前には、計算ができません。そのため、推定値を使うしかなく、それも幅があるわけです。

PCR検査って何?

ウイルスは、細胞という基本要素がしっかりとある細菌とは異なり、増殖するには他に寄生しなければなりませんが、遺伝子は持っています。そこで、綿棒で喉の奥から採取した唾液の中に新型コロナウイルスあるかも知れないと想定して遺伝子を増殖させ、それによって一定数以上あれば、ウイルスがあったと考えるわけです。その増殖のために時間が必要なわけです。

検査といっても、このように、実際にモノが存在するかどうか、というものであれば、機械側の誤判定の可能性は低くなりますが、もし、喉の奥から唾液を摂取する際に、「本当はウイルスを含んだ唾液」をうまく採取できなければ、偽陰性になってしまう可能性があります。つまり、人間が関わる以上、ヒューマンエラーが入る隙間は残るのです。

専門家の方にとっては当たり前のことであり、もし間違っていたら、あるいはもっと良い解説ができる方こられたら、どうか助けてください。