【恒星を目印に】2022-23シーズン シモーネ・インテル考察
こんにちは!TORAです🐯
今回はシモーネ政権2年目のインテルをPSM(プレシーズンマッチ)から3つのポイントに絞って考察していきます。
結論から言えば、昨季とは大枠が変わっています。特にボール保持。
非保持は現状のカスタムですが、保持に関してはスキーム自体が昨季と異なります。
恒星を目印に
今季最大の特徴を短いセンテンスで表せばこんな感じでしょうか。
「つまりどういうこと?」
「どこのBUMP OF CHICKENだよ」
と思われた方、少々お待ちください。
まずは昨季を超簡単に振り返りましょう。
●深さを取れない
昨季のインテルはジェコとラウタロのツートップがメイン。
改めての説明となりますが、一昨年のラウタロ&ルカクが横の関係性だったのに対してジェコタロは縦の関係を築きました。
降りるジェコにCBがどこまで付いていくのか、ジェコと入れ替わって上がったり膨らんだりする中盤に誰がどう付くのか、と思ったらCBが上がってきた!等々、フレキシブルなポジションチェンジで相手チームに混乱を与えることがチームのカラーリング。
ジェコはポジションチェンジのスイッチ役で、僕はこれを『変換器』と表現していました。
しかし、シーズン後半は「結局ジェコは前がかりでベタ追いすれば潰せるぞ」が対策として確立。
これによりインテルは前進のスイッチを失い、『深さを取れない』という課題に直面しました。
微調整が上手くハマった試合や終盤は降臨ペリシッチという出口があったとはいえ、シーズンを通して見れば結局クリアにならなかった課題です。
で、解決方法として僕は以前の記事で「短期的かつ分かりやすく解決するなら身体を張れるFWのフィットが1番」と主張しました。
結論、シモーネはこれをチョイスしたと言えます。
ほぼ内定していたディバラを蹴って(後回しにして)ルカクを獲得したのは
最大長所ではないにしろ身体を張れる
↓
その実績がある
↓
フィットが期待できる!
課題解決に向けてそろばんを叩きやすかったというファクトは非常に大きいでしょう。
では、具体的に「ルカクが復帰したインテルはどうなったの?」を考察説明していき、記事タイトルの回収をしていきます。
●ツートップの変化
再びタッグを組むことになったラウタロ&ルカクですが当時(コンテ政権)とは、その中身が大幅に異なります。
当時はルカクがセカンドトップ的な位置でボールを収め、そこから近距離横並びのラウタロや馬力良く攻め上がるバレッラ、新幹線と揶揄されたハキミなどの直接的なコンビネーションで崩すのがキーでした。
一方で今季のルカクは最前線がスタンダード。
ピッチ上だけでなく、外でも矢面に立つナイスガイです。
もちろん下がったり膨らんだりもしますが範囲や頻度は昨季のジェコと比べれば、明確な違いがあります。
固有運動はあれど、相対的に位置の変化が少ない。ゆえに『恒星』。
パートナーを組むラウタロはビルドアップユニットと恒星を繋ぐ初期配置。
昨季のジェコやサンチェスのように中盤に降りるというよりも、セカンドトップ的な立ち位置。ルカクという恒星の周囲に位置する、謂わば惑星。
一見しっくりする配置ですがセリエAフリークス、特にインテリスタからすると驚きがあったのではないでしょうか。
ⅰ)従来のラウカクコンビを(ざっくり)逆転させた配置とタスク
ⅱ)セリエA MVPに輝いたルカクの機能はセカンドトップ的な位置でこそ
ⅲ)昨季ピュアCFとしてリーグ20得点超えのラウタロの位置を(再び)下げる
これらの因子よりも未だ見ぬ進化のために選手を信じたシモーネ監督。
PSMでは結局ネームバリューのあるチームには未勝利。不安の残る開幕となりますが、上記を貫いてくるかは要注目と断じます。
しかし、この新たなラウカクコンビのスキームは新戦術であるという面を考えれば、PSMは十分に合格点であった、というのが個人的な感想。
特にルカクは相手の圧力が強い最前線でもやはり戦えてましたし、そこからサイドに展開→クロスのフィニッシャーとしても活躍。
空陸両用のターゲットマン、つまり攻撃における目印として機能し、彼に対して未だ不満や怒りがあるファンのトーンを下げた印象すらあります。
まぁツートップに関しては本番のテンションとインテンシティで通用するかどうかでしょうね
で、仮にこれでルカクがタスクを遂行できなければ方向転換は必須。この場合、昨季以上に深さを取れずブラックアウトする恐れがあります。
ルカクが最前線の範囲で戦う以上、楔のパスも長くなりますから収まらないし引っかけられるリスクもあるとなると、悪い意味でハマった場合は悲惨なことになるでしょうからね。
余談ですが、楔のパスが長くなる=出し手のスキルが求められますが、その点でアスラニは及第点。
で、ブロゾヴィッチの代わりで及第点を取れることの価値はインテリスタのみなさまに説く必要はありませんね。
閑話休題。
ルカクが孤島になってしまう懸念があるのでルガーノ戦では3−4−1−2を試したと思っていたのですが…結局、その後採用しなかったのは私的にしこりが残りました。
ただ、ジェコとコレアに変更することで選手特性面で変化を出せるので、それでイケると判断したかな?
実際ジェコは変わらず降りてビルドアップに関与していましたね(ただ、可動域や回数は減少したような…自身の説に引っ張られてそう見てるからかもしれないけど)。
うーん、この辺はかなりぼやぼやしていてぶっちゃけ不安。
がしかし。
重複ですがPSMでのツートップの変化はポジティブでした。
が、チームの結果が伴わなかった。
その理由をボール保持面でひとつピックアップするならば、大きな変化があったツートップではなく、そのツートップに恩恵を受け恩恵を与えるWBを挙げます。
●懸念と可能性はWBに
昨季終盤、チームの低空飛行と反比例するともに左サイドを駆け上がり、蹂躙したペリシッチがチームを離れゴセンスが収まりました。
その立ち位置や機能性・懸念点はざっくり下記のイメージを持っています。
ドゥンフリースは判断の速さやフリーランニングの質が向上し、ルカクに次ぐ第二の深さ役として機能していました。
縦への突破や良質なクロスも見られ、プレシーズンの通信簿では”大変良くできました“を与えられる一人、が個人的な評価(とはいえ、課題ももちろんありますけどね)。
移籍の噂もありますが放出NGな選手ですね。
おそらくこれはインテリスタの中では少数派意見だと思っており、「ある程度のキャピタルゲインを得られるなら放出OK」がマジョリティかと察します。
その意見や妥当性・必要性も分かるのですが、”インテルのスカッド”、”シモーネのやりたいこと”を鑑みれば、上記の主張は揺るがないですね。
一方のゴセンスは明らかにドゥンフリースよりも低めに位置しています。
もちろん高めを陣取る時もありますが基本的はちょい低めでビルドアップの関与も相対的に高い。
理由は推断できるものではありません。
このタスクにまだフィットしていないというのもあるでしょうし、そもそも選手特性的にちょっと低めから周囲と連動して攻め上がりたいのもあるでしょう。
以前、データでも後押ししましたがゴセンスは単騎で崩すタイプではなく、良くも悪くも超オーガナイズドな選手ですからね。
で、PSMの課題は
ⅰ)左サイドで組織的に攻め上がる練度が低い
ⅱ)右サイドからの弾数不足
が挙げれます。
前者、上述でゴセンスが「ビルドアップに絡んでいる」と表現したものの、これはあくまで大枠というか立ち位置的なところというかハード面でのお話で、ソフト面に目を向けて効果的か否かを問われると、首は横に振らざるを得ないです。
昨季冬加入ということを考えると「そろそろフィットしてほしいな」が本音。
しかし、僕は以前「ペリシッチはもうインテルのWBにはフィットしない!」と自信を持っていた人間、WBのフィットには見る目がない!に定評がありますwww
加えて、前々シーズンにスクデットを獲得した際は1年越しにフィットしたエリクセンがラストピースだったことを考えれば、まだまだ信じて待てますね笑
後者も単純でドゥンフリースとベッラノーヴァ、彼らがどこまで効果的なクロスを放れるかが重要です。
昨季のペリシッチとまでは言いませんが、配球を確立できればやや低めの位置からダイアゴナルに飛び込んでくるゴセンスは厄介極まりない。
肉体派と思いきや、クイズ王になる程のインテリジェンスも兼ね備えますし。
左右から放れて、左右から飛び込める
ゴセンスを獲得したのはこの実現の為でしょうからね。
ただ現状は個で突破はできないけど、様々なレンジから愚直にクロスを放れるディマルコにひたすら発射台になってもらい、ドゥンフリースが飛び込む片翼空爆が最も機能してますね。
という訳で、ゴセンスには期待していますが、開幕はぶっちゃけディマルコ派です(とはいえ先発でゴセンスをチョイスするだろうけど)。
ただ、この場合はディマルコの使い方がやや勿体無いのとバストーニとの後方管理がやや不安かな。
●トランジションで手数と火力を
さて、非保持にも目を向けましょう。
昨季はコンテ政権を踏襲しつつ、ボールの奪う位置をすこーし高めに設定したスタイルで着地しました。
ただ踏襲とある通り、基本線はコンテインテルのもので、その実はセリエA随一の組織的守備。
配置に重きを置き、個々というよりも守備ブロックそのものでボールを絡め取ります。
一方今季、ベースは引き続き配置重視だけど、局所で対人要素が色濃くなった感想を抱きました。
事実、練習からフィジカルコンタクトは注力している様子が伺えます。
印象的だったのは2点。
まずはカウンタープレス。
保持時にボールを引っ掛けられトランジションが発生した際に、すぐさま圧をかけて再度攻守をひっくり返すカウンタープレスが以前よりも散見(流し気味だったビジャレアル戦除く)。
筆者としてはこれもルカク加入に由来するもの、と見ています。
「ある程度のスペースありきで、前を向いてボールを持つ」
ルカクに本領発揮できるタスクをあえて与えなかったシモーネ監督。
ただし、彼の真骨頂シチュエーションはカウンターでこそ!というのは至極当然、理解しておりその手数を増やすためにカウンタープレスを強化したのでは、と見ています。
実際ショートカウンター時は明らかにルカクがスペースへ走らせることを第一目標としていましたよね。
この辺も目印たる所以。
が、カウンタープレスで引っ掛けて裏返しにしたけどゴチャっとしてまたひっくり返された!的なシーンは散見されたのでまだまだ研磨が必要。
個人的にはこのシーンでムヒタリアンにモデルケースとなって欲しいんだよなぁ。
もう一点は前からプレスを突破された後のミドルプレス。
インテルの前プレは、特に3バックや4バックで中盤が最終ライン落ちするチーム相手だと右IHバレッラが前線に上がる、が基本ルールです。
本ルールはコンテ政権からの地続きですが、焦点を当てたいのが前プレを突破された後。
前プレを突破されても数的同数もしくは優位のままミドルプレスに移行する、ということです。
最も分かりやすかったのはモナコ戦。
63分の選手交代で中盤が一気にスタメンに。それに伴いプレス勢いや強度が増した!と思われた方、いらっしゃると思います。
スタメンが多くなりギアを上げてきた!という理由もあると思いますが、そう見えた最大の要因は単純にスタメン組のミドルプレスがシンプルに上手かったことに起因します。
従来のインテルですと、このトリガーを引くのは好条件で囲めそうな場合。ディレイをかけて5-3ブロックを組むために帰陣を促すが最優先。
PSMも5−3ブロックを組むのが念頭っぽいですけど、ミドルプレスの発動条件はやや甘くなっている=積極的に仕掛けるようになっていると感じました(繰り返しますがビジャレアル戦はのぞく笑)。
ルカクの最大長所はポジティブトランジションで活かす
こちらもそのまま引っ掛ける→ルカクを走らせる、を理想としているでしょう。
昨季のインテルはボール保持の局面がウリで、セリエAの中では比較的トランジションにフォーカスしていなかったチームですが(といっても平均的とは思います)、今季は天秤のバランスを整えてきた感があります。
しかし、本項は今回挙げたポイントの中では最も整備できておらず、裏やギャップを突かれてあっさり失点!が悪目立ちしたので、シーズン中に修正しそうな予感も笑
コンテ政権2年目スタートも3-4-1-2の配置で、敵陣でボールを持つ→ロストしたらカウンタープレス→ショートカウンターor保持やり直し、という敵陣制圧型のサッカーを目指しましたが、7.8試合ですっぱりと方向転換したのはインテリスタの記憶に新しいはず。
データ分析的には戦術がガラリと変化するとスタッツも紐づく傾向にあるので面白いです笑
けど、そんなメタ的な考えよりも一ファンとしてはなるべく初志貫徹で成功して欲しいけどww
十中八九、レッチェ戦はボールを保持する展開になるでしょうからミドルプレスの具合は比較的チェックしやすい環境下にあると思います。
●総評
本当はまだまだ語りたいところではありますが、なんだかんだ5000文字越えですので締めます。
最後に総評。
PSMということで内容も結果も深刻視する必要はないんですが、それでもあえて苦言を呈します。
「昨季のこの時期よりも、やってるサッカーの質は低い」
率直に言えばシモーネ政権2年目なのにクオリティは落ちていると言わざるを得ません。
PSMは結局ネームバリューあるチームに未勝利、失点が多い、とかそういった分かりやすい事実のみならず内容自体も含めて断言できます。
しかし、それは試行錯誤しているからこそ。
ブレイクスルーを目指しているのは十分伝わりました。
あとは
練度を上げるのか。
元に戻すのか。
昨季と今季をミックスさせるのか。
別の一手を打つのか。
を本番で示して結果に繋げてほしい!
以上!
ついにシーズン開幕ですね!
スクデット奪還!頑張れ!インテル🖤💙
最後までご覧頂きましてありがとうございました🐯
もしサポートを頂戴した場合はサッカーのインプットに使用し、アウトプットでお返しできるよう尽力いたします。