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【データ考察】セリエA20-21シーズン前半戦の全20クラブの傾向を読み取る−後編

こんにちは!TORAです🐯

今回は考察記事。

「【データ考察】セリエA20-21シーズン前半戦の全20クラブの傾向を読み取る」

の後編になります。

未読の方はぜひ前編からご覧くださいませ!

と言っても「ちゃんとデータ分析してまっせ!」っていう記事なので、そこを信頼してくださる方は後編のみで問題ありません笑

後編は前編を元に、各チームの傾向やスタイルを言語化していきます。

めちゃめちゃ長いので一気にご覧になられるよりも、推しチームの対戦相手のプレビュー的な感じで適時ご覧になられることをお勧めいたします。笑

■リマインド
本考察記事において特に重要な部分をリマインドさせてください。

✔︎セリエA第19節までのデータによる考察記事です。他コンペティションや20節以降は反映しておりません。

✔︎主観による試合のインプレッションも取り扱いますが、客観視できるデータを核とした分析です(一応、筆者は今シーズンのセリエAの試合を3/4以上はチェックしてます)。

✔︎第3節のユヴェントス−ナポリ戦が未消化なのでスタッツは累計ではなく1試合平均を参照しております(累計を用いる場合は注釈を入れます。入っていない場合はすべて平均と認識してください)。

✔︎リーグにおけるパス総回数、平均508.3回を軸に本考察では便宜上、
ⅰ)平均以下をボール非保持型
ⅱ)平均以上をボール保持型
と定義します。

では、見ていきましょう。

当然ですが、下位に進めば進むほどネガティブな表現が増えていきます。ファンの方、あらかじめご了承下さい。

●1位ミラン(順位:KEEP→)

ポゼッションバランス型+武闘派+効率重視

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”疾風怒涛”を持続可能に

■第7節時点の傾向まとめ
【疾風怒濤の局面制圧】

平均以上のパス総回数とリーグトップとなるデュエル勝利数でボール保持、非保持、ポジティブ&ネガティブトランジションの4局面を制圧する超武闘派軍団!

得点期待値、つまり組織的なチャンスの質と量もリーグ2位と”制圧した後”の設計も素晴らしい。

チームの指針やスタイルとスカッドがバッチリ噛み合っている理想のチーム!
あまり余計な言葉で飾るのは無粋で、データ面からでも納得の順位。

シーズン前半終了時点の傾向

✔︎デュエル勝利数が減少、代わりにボール奪回数が増加。
✔︎パス総回数が減少、得点期待値も若干減。
✔︎上位チームの中ではプレス総回数が最も多いが、前からはあまり行かない。

パス総回数、デュエル勝利数ともに低下。特にパスはリーグ平均を下回る値に。

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とは言え、ほんのわずかな値なので”ボール非保持型”ではなく”ポゼッションバランス型”と表現しています。

守備はデュエルの代わりに組織的にボールを奪回する機会が増加しました。

得点期待値も若干ではありますが減少。が、統計的にまぶされただけで、未だリーグ屈指です。
これをイブラヒモヴィッチをはじめとした離脱者多数の中で保てた点はむしろポジティブ。

ミランは長いシーズンを安定して走り切る為に”効率化”にも舵を切ったんだな、と考察します。

現時点では結果が出ているので舵取りは合っていたと言えるでしょう!
しかし、ミランのストロングポイントはクラブが一本化して、ハード面とソフト面を見事にリンクさせ戦術に具現させてる点にあると見ています。

今はまだコンセプトをややマイルドにした程度ですが、今後濃度を薄め過ぎると根幹が崩れて危うい気がします。若手重視なら尚更。

とは言え、テンションをピンと張り続けるのもどこかでガタが生じそう。ミランは嫌な日程のELもありますし。ピオーリ監督の”塩梅さ”がシーズン後半は見物そうです。

その他、印象的なスタッツ

✔︎イブラヒモヴィッチ、1試合当たりの得点期待値リーグトップ。決定力◎。出場すれば得点の可能性が非常に高い。
✔︎チャルハノール、キーパス(シュート直結パス)累計リーグトップ。イブラヒモヴィッチと相性良し。

●2位インテル(順位:UP↑)

ボール保持型+ハイプレス+効率重視

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道は正しい

第7節時点の傾向まとめ
【揺れるバーサーカー】

筆者がインテリスタであることを差し引いても(贔屓目抜きに)、パス関連や攻撃関連のスタッツにおける”見た目の良さ”はトップと言っていいかと。検証したわけではありませんが笑

特にアタッキングサードやPA内でのボールタッチが最も多く、相手チームが引いて守る時間が最も多いと予想できるのに、実得点も期待値も結果が出ている点は賞賛に値します!

が、攻撃に全振りし過ぎてリスクマネジメントや予防的プレーが出来ていない=相手の一撃ダメージが大きい!と推察。
ロールプレイングゲームで良く出てくる状態異常「バーサーカー」みたいです(FF派)。

シーズン前半終了時点の傾向

✔︎ポゼッション関連のスタッツは軒並みダウン。
✔︎にも関わらず得点期待値はあまり変わっておらず効率性が窺える。
✔︎一方でデュエル勝利数とボール奪回数の異常な少なさも相変わらず。

シーズン序盤にトライしていた3-4-1-2を諦め、3-5-2に回帰。その為、最もドラスティックにスタッツが変化したチームのひとつです。

ポゼッション関連のスタッツは軒並み見栄えが悪くなりましたが、得点期待値は変わっていない=組織的なシュートチャンスの質と量の高さは保てているので問題はありません。

なによりも実得点と実失点はむしろ上向き!結果が出ているので、コンテ監督がイタリアダービー後に発した「道は正しい」は立証されています。

つまり、額面上は以前よりも効率的なチームになりました。

気になるのは前回同様、デュエル勝利数とボール奪回の値。

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ハイプレスが突破されたら選手配置優先の迎撃守備に移行するので、少なくなる要因は理解できるし頷けるんですが、だとしてもあまりに極端じゃないか?という疑問が拭えないこと。

3-4-1-2時代と守備のアプローチや手段は変わりましたが、”人に対する考え方”に変更はないんでしょう。

しかし、実際の試合でも陣形や人数が揃っているのに人にチャレンジできず、相手選手に時間と空間を与えてしまい精度の高いプレーを許してしまうシーンはよく見られます。

「道が正しい」のであれば、この考え方でも失点減や相手選手のプレー制限を実現してほしいですね。

その他、印象的なスタッツ

✔︎ルカク、PKのぞく得点期待値の累計がリーグトップ。セリエAで最もチャンスの質と量を得ている。
✔︎さらに得点期待値+アシスト期待値の累計合算でもリーグトップ。つまり、セリエAで最もチャンスが期待できるプレーヤー。
✔︎シュクリニアル、ドリブル突破阻止 成功率リーグ2位。

●3位ローマ(順位:UP↑)

ボール保持型+組織重視+万能対応

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狼の強さは群れにあり

第7節時点の傾向まとめ
【卓抜のコストパフォーマンス】

上位陣の中では少なめのパス総回数。が、その少ない手数で質の高いシュートチャンスを演出できる組織力に感服!

額面上は非常にコスパが良いチームです。

上位チームの中にあってアタッキングサードでの圧の少なさは顕著でしたが、ミドルサード以下でボールを刈り取れているなら問題はないですね。

が、没収試合を加味しても、実失点が順位以上に多いことが懸念事項。

シーズン前半終了時点の傾向

✔︎スタッツの増減によって、全体的に分析傾向がトレンドライン寄りに。
✔︎目立つのはデュエル勝利数の低下、パス総回数とプレス総回数の増加。
✔︎7節時点では少なかったアタッキングサードでのプレス回数も増加。

声を大にして伝えたいトピックスは2つ。

ⅰ)リーグトップの得点期待値の内訳が1.2人に依存しているわけでなく、多くの選手に上手く分散できている。
=チーム全体で組織的なチャンスが作れている。その累計値がリーグNo.1!

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ⅱ)失点期待値と実失点の乖離が大きい。
=水際対策、つまり決定的な場面の脆さが懸念される。

・失点期待値とは?
単純に相手チームの得点期待値を割り当てたものです。「いかに組織的な被チャンスを許したか」と捉えて頂けるとイメージしやすいかと。

が、僕が発するまでなく、先日のASローマ速報さんの記事にて既に&当然ピックアップされておりました。

こちらの記事、本っ当に素晴らしいクオリティです!是非是非!ご覧ください(リンクはご本人様に了承を得ております)。

個人的にASローマ速報さんの記事で「おっ!」と感じたのはフォンセカ監督が度々「システムのバランス」を口にしているという部分。

そう。本分析でも、7節時点と比べて得点期待値以外のスタッツはならされており、バランスが感じられる結果に。フォンセカ監督の志向が反映されているかのようです。

実際の試合を見てても選手の特性と戦術をマッチさせて様々なシチュエーションに対応できている印象を受けます。システムが整っている故、万能な対応が可能なのでしょう。

しかし、意地悪な表現をすれば器用貧乏。上位陣の瞬間火力に耐えられない要因は”バランスそのもの”にあるのかもしれません。

データ考察と銘を打っておいて抽象的な表現で、根拠の薄さは否定できませんがこれを否定する根拠もまた、見つけにくいのではないでしょうか。

その他、印象的なスタッツ

✔︎ミキタリアン、得点期待値+アシスト期待値の合算値リーグ2位。シュートチャンスにとことん絡む。
✔︎パウ・ロペス、※シュート後失点期待値−失点数、つまり「統計による期待値より、どれだけ枠内シュートを止めているのか?」はリーグ全体の平均以上。

※シュート後失点期待値の詳細は説明が長くなるので割愛します。こちらもシーズン前半をまとめた記事がありますので宜しければご覧ください。

ローマのGKは割と賛否が分かれるなぁと思っているのですが、他サポかつデータ派の僕はパウ・ロペス支持派です。

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●4位アタランタ(順位:UP↑)

ボール保持型+敵陣制圧+縦志向

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表裏一体の縦志向​

■7節時点での傾向まとめ
【矛盾併存、だがしかし】

アタランタと聞くとその攻撃力の高さをイメージする方が多いと思いますが、それを支えている守備力の高さを見逃してはいけません。

リーグ3位の総デュエル勝利数と1位のボール奪取数は合わせて見ると突出したスタッツ。

にも関わず、短所が”実失点”。当時の失点数はリーグ中位以下の値でした。

「殺傷力のある矛と強固な盾を兼備している好チームだが研究が進み、90分は持たない為、一刺しにやられてしまう」こんな表現がピッタリに思えます。

シーズン前半終了時点の傾向

✔︎ドリブル突破のみならず、ボール前進パスの回数リーグトップに
✔︎ボール保持型なのにボールロストが極端に多い
✔︎ディフェンシブサードでのプレスが極端に少ない

アタランタは傾向変わらずで値が全体的に良化しています。また、今回の分析ではボール保持型で唯一、デュエル勝利数が多いチームに。

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アタランタが特徴的なチームであることは皆さんご周知の通りですが、データ的にも示されました。

オフェンス面の改善、というか本領発揮は断言していいいでしょう。細かいスタッツ抜きに得点期待値、実得点ともにリーグ2位で結果が出てますしね。

パプ・ゴメスが旅立った今、アタランタの爆発力を牽引するのは間違いなくイリチッチです!実際のプレーでもデータで見ても彼をシャットアウトするのは非常に難しそう。各チームの対策が気になります。

順位の推移通り好調に見えますが、あえて苦言を呈するなら「縦志向過ぎる」こと。

ボールロストが多いので、攻守が裏返るシーンも上位陣の中で目立つのは明白ですが、アタランタはマンツーマンなので、後手の踏み加減が他のチームよりも深刻になってしまう可能性が高いのは想像に難くありません。

したがって、極端なディフェンシブサードでのプレスの少なさは、守る時間が少ないだけではなく、「後手を踏んでプレスが上手くかけられない場合がある」という側面も否定できない気がします。

ストロングポイントがウィークポイントにもなっていると考察できるアタランタ。この辺はやはり研究されている感が否めません。

その他、印象的なスタッツ

✔︎イリチッチ、SCA累計リーグ7位、GCA累計リーグトップ。出場時間を考慮したら異常…!つまり、チャンスクリエイトの鬼。
✔︎
ロメロ、インターセプト累計リーグトップ。
・SCA、GCAとは?
FBrefのスタッツ。
シュート直前の2つのプレー関与。シュートに繋がるドリブル・パス・シュート(途中で味方が触ったり、ポストに当たったケースなど)、セットプレーからシュートに繋がった被ファウルを指す。GCAはそのゴールバージョン。

●5位ユヴェントス(順位:KEEP→)

超ボール保持型+ハイプレス+個を活かす組織

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発色、そして絢爛

7節時点での傾向まとめ
【フィソロフィで走る王者】

9連覇中の王者は、7節時点での傾向分析において全ての項目でトレンドラインから大きく外れることがなかった分析泣かせ!

無理矢理トピックスを挙げれば自陣での圧が多めでそこそこクリアもしてる”やや重心低め”。
また、ショートパスの割合も少なかったのでミドルサード以降ではバーティカル(縦方向)な展開が多いと考察しました。

率直に言ってこの段階ではピルロ監督が目指しているサッカーは体現できていなかったように思えます(あくまでデータ分析上は。実際のシステムは超モダンだと思ってます)。

シーズン前半戦の傾向

✔︎ポゼッション率、リーグトップに。
✔︎失点数、失点期待値、リーグトップに。
✔︎アタッキングサードでのプレスが大幅に増加。

1巡した結果、ピルロ監督の志向や企図が分かりやすく発色しました。「実験はおわり」というピルロ監督の台詞はブラフではなかったということがスタッツ面から証明されています。かっけぇ。

特に考察しがいがあるデータは

ⅰ)ポゼッション率が増加しているのにショートパスの割合は変わらず低め。
=ある程度距離があってもパスが繋がっている。

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ⅱ)アタッキングサードでのプレス割合が増え、ディフェンシブサードでの割合が減っている。=前線からの積極的なボールハントが明確に増えた。

ⅰの事実はユヴェントスがボールを握るチームにありがちな所謂「ボールを持たされている」現象に陥っていないことを示唆しています。

事実、ボール前進パスもアタランタに次ぐリーグ2位なので、ポゼッションするだけではなくしっかり仕掛けていることも読み取れますね。

ⅱは実失点、失点期待値とリンクさせれば、その練度の高さが見えてきます。単純に設計のクオリティが高いんでしょうね。

要はやってることが明確になっただけでなく、精度も伴っている。
チームの発色とその絢爛さが際立っています!

強いて欠点を挙げるとすれば、クリスティアーノ・ロナウド以外の選手の得点期待値が低いことでしょうか。
が、他の選手の奮起に期待するというよりは「如何にロナウドに点を取らせるか?」がこのチームの本質だと、僕は思ってます。

印象的な選手累計スタッツ

✔︎ロナウド、実得点、シュート数、枠内シュートのそれぞれの累計でリーグトップ。シュートとゴールの化身。
✔︎運ぶドリブル回数累計リーグトップ。個人のトップ10にダニーロ(3位)、デ・リフト(7位)、クアドラード(10位)がランクイン。後方からの攻め上がり◎。

●6位ナポリ(順位:DOWN↓)

ボール保持型+ハイプレス+敵陣コントロール

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イニシアチブtoコントロール

第7節時点での傾向まとめ
【疾風迅雷の敵陣制圧】

精度の高いショートパスと積極的なデュエル&プレスで敵陣を制圧。

インテンシティの高さとパス回数の割に低いポゼッション率、シュート数の多さを考慮すると攻守ともにハイテンポなサッカーを展開していそうです。

それでいて、アタッカー陣のスタッツも良い意味で偏っておらず、枠内シュート数リーグトップなどのデータからチーム全体の組織力や精度も伴っていることが分かります。

シーズン前半戦の傾向

✔︎デュエル勝利数が大幅に減少。とは言え、未だ水準のちょい下に位置。
✔︎ポゼッションはショートパスがメイン。
✔︎プレスはハイプレス志向。

ミランに似た傾向ですね。球際のインテンシティを落とす代わりに安定してシーズンを走り切ろう!的な思惑が伝わってきます。

ただ、ナポリはスタイルを変更、というよりも自身のスタイルを尖らせてきた印象

ⅰ)ショートパス主体のビルドアップ(ポゼッション率リーグ3位)

ⅱ)アタッキングサードでのプレス回数が非常に多い。

ここから推察できることは、単に前からプレスが積極的なだけでなく、即時奪回を試行しているであろう点。

前回は”敵陣制圧”と表現しましたが武力の回数が減ったので、「ポゼッションやプレスによって敵陣でイニシアティブを握り、結果、ゲームそのものをコントロールする」が、より近しいかと。ユヴェントス同様に選手配置の練度が窺えます。

ゴールやアシストも特定選手に依存することなく、うまく分散しておりチーム全体で得点が取れることも証明!
しかし、実はナポリ、得点期待値の累計・平均ともにトップ10入りする選手がいないんです。

シュートチャンスが分散されている。裏を返せば、

・シュートチャンスを創造の”質”の物足りなさ。
・チャンスを預けられる確固たるプレーヤーの不在。

が暗示されている、ということですね。

オシメーンの復帰やペターニャのさらなるフィットでどうなるか?要注目!

その他、印象的なスタッツ

✔︎ナポリで最も得点期待値の累計が高いのはインシーニェ、リーグ12位。
✔︎しかし、シュート数累計はリーグ2位。ナポリはシュートシーンの量は多いが、質が低い?
✔︎ディ・ロレンツォ、パス総回数累計リーグ5位。ショートパス回数累計リーグ2位。ナポリのポゼッションの核。

●7位ラツィオ(順位:UP↑)

ボール保持型+組織的守備重視+カウンター

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長所を伸ばし、短所を改善

■7節時点の傾向まとめ
【そのバランスは万能かどっちつかずか】

水準よりも少ないパス総回数、高いボール奪回数、低いデュエル勝利数。組織的な守備で堅実に守るタイプだと言えます。

ロングが多いパスの内訳とアタッキングサードでのプレス割合が低いことを踏まえると「ミドルサードでボールを奪って、相手の陣形が整う前に攻めたい!」というシモーネ・インザーギ監督の目論見が感じられます。

だとすれば、効率性を望みたいですがそれが叶っていないのが課題として挙げられます。

シーズン前半戦の傾向

✔︎ボール奪回数はリーグトップに
✔︎得点期待値も良化

データ上から読み取れる傾向は、7節時点と特に変わりがありません。かなり一貫してますね。
これがポジティブ!

強みであったボール奪回、つまり組織的守備でクリーンにボールを奪う回数は増加。
そもそも奪回する機会が少ないボール保持型にあって頭抜けているのでクオリティはバッチリ。

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弱みであった組織的なシュートチャンスの質と量は良化しました。

長所を伸ばし、短所を改善!
どシンプルですが最も理想的かと思います。

ただ、それでも得点期待値はトレンドラインよりも下で「もう一歩!」が拭えない点。

そして、そのもう一歩!のシュートチャンスはチーロ・インモービレ、ルイス・アルベルト、フィリペ・カイセドらの決定力によって得点に昇華している点が懸念でしょうか。

実はラツィオ、複数得点者で期待値を下回る得点の選手はホアキン・コレアしか存在せず、額面上は他のアタッカー陣は軒並み、決定力があると言えます。

よって、得点は組織由来ではなく個人由来の側面が強めであると(これはこれでポジティブでもあるけど)。

データの冷たいところだけを切り取れば、試行回数を重ねれば偏った確率は収束されていく予想が立てられます。

しかし、サッカーをプレーしているのは人間。インモービレらは、期待値など単なる数字の飾りだ、と言い切れるでしょうか?
個人的にはデータ派だからこそ言い切ってほしい。予想を覆して欲しい!と願っています。

その他、印象的なスタッツ

✔︎インモービレ、PKのぞくゴール−得点期待値の累計値。つまり、「統計による期待値よりもどれだけ実際に決めてるか?」の指標でリーグトップタイ(ちなみに、期待値よりも4点分多くのゴールを決めている)。天性のストライカー。

●8位ヴェローナ(順位:KEEP→)

超ボール非保持+超武闘派+ハイテンポ

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突き詰めたソリボール

■7節時点の傾向まとめ
【ソリボール】

リーグ屈指の非保持スタイル、リーグ2位となる総デュエル勝利数が特徴のチームで、所謂”ソリボール”に当てはまりそう。

スタッツを見る限りややマイルドで体重を預け過ぎているきらいはなさそうです。が、実得点に繋がっていないところを見ると二の矢、三の矢がないと思われる点が課題かな、と。

いっそソリボールを突き詰めるか?やっぱり二の矢を用意するのか?なにかしらアクションは要りそう。

シーズン前半戦の傾向

✔︎デュエル勝利数がリーグトップに増加
✔︎クリア回数リーグ2位
✔︎ボールロストリーグ1位

前回、僕が言及した「いっそソリボールを突き詰めるか?やっぱり二の矢を用意するのか?」
ヴェローナのアンサーは”突き詰める”、でした。

もうゴリッゴリの武闘派に!

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データ上はセリエAで最も特徴的で、実際の試合と照らし合わせても間違いなく”ソリボール”だと断じれます。

得点もさることながら、得点期待値が順位の割に低すぎる!

とか、

少ないチャンスなのに、決定力がない!

などの分かりやすいウィークポイントもありますが、これは泥臭くデュエルして相手のミスや事故を誘う「能動的だけどある意味、受動的でもある」ソリボールの特性っぽいところなので、僕は気になりません。

むしろ、リーグトップとなる実失点の低さを称賛すべき。

ゴリゴリな上にとっても堅い、いやらしさ。

…ん?なんか勘違いされそうな表現になってしまいましたが笑
改めて、前回考察時に続いて言わせてください。これは上位チームに嫌われますね!(褒め言葉)前半戦の”対上位チームの実績”もそれを物語ってます。

ちなみに上位チームで唯一、ヴェローナに勝利したインテルは「あえて自分たちのスタイルを捨てて、同じソリボールで文字通りのミラーゲームを仕掛けた」という奇策に出ました。

意外とこれがヴェローナの攻略法に思えます。後半戦、似たような手段を用いるチームは現れるでしょうか。

その他、印象的なスタッツ

✔︎パス成功率リーグワースト。
✔︎浮玉のパス、ヘディングでのパス、空中戦デュエル累計リーグトップ。この辺もソリボールっぽい笑
✔︎ディマルコ、キーパス(シュート直結パス)累計リーグ3位タイ。ヴェローナの少ないチャンスを考えれば立派!

●9位サッスオーロ(順位:DOWN↓)

超ボール保持型+ゲームコントロール+即時奪回

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土台は確立も、決定的な部分に難あり​

7節時点の傾向まとめ
【王道のポゼッションサッカー】

練度の高いポゼッションでゲームそのものを掌握。教科書通りのパスサッカーであることがデータからも読み取れます。

ショートパス多め、ボール奪取多めであることから攻撃時の選手配置や距離感が抜群、ゆえ”即時奪回”も効果的で二次攻撃が期待できるクオリティなんでしょう。

改善点があるとすればポゼッションの割にシュートやチャンスに繋がりそうなプレーが少ない点。

シーズン前半戦の傾向

✔︎ショートパスの割合がリーグトップ。
✔︎パス総回数は3位だが、ポゼッション率は2位。
✔︎ボール保持型にあってクリア回数が突出。

データ上から読み取れるチームスタイルは全く変わりがありません。

むしろ、パス総回数がリーグ3位なのにポゼッション率は2位というギャップにサッスオーロのゲームコントロール力の成長すら感じます。

と、言いたいところなんですが…。

繋いで作り上げたポゼッションを質の高いフィニッシュまで持っていけないという前回も指摘したファクトがさらに顕在化。
データ上はここですね。順位が落ちてしまった最大原因と認識してます。
ユヴェントスと異なり、ボールを持たされている感が垣間見えるということです。

また、超がつくボール保持型なのにクリアの回数がやたらと多い点。

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ⅰ)実は”押し込まれ度”が多い。

ⅱ)自陣ではセーフティー。迷ったらクリア!

意見が分かれそうですが、僕は実際の試合を見てる限りは前者。”押し込まれ度”が多い点に1票。

主観ですが、サッスオーロは即時奪回やプレスがハマらないと、意外とずるずる深い位置まで持ってかれちゃうイメージが強いです。ポゼッションサッカーにありがちな撤退守備への移行が苦手な感じ。

まとめると、「攻守ともに決定的な場面に関する”難”が存在する」と考察します。

分かりやすいけど、かなり闇深い問題に思えます。土台がしっかり確立できているだけに非常に非常に勿体ないですね…!

その他、印象的なスタッツ

✔︎ボガ、ドリブル突破数の累計リーグトップ。ドリブルキング!
✔︎ロカテッリ、ボールタッチ数累計リーグトップ。前半戦で最もボールを触ったプレーヤーに。
✔︎クロスがPA内の味方に通った回数リーグワースト。

●10位サンプドリア(順位:UP↑)

ボール非保持+プレッシング+個を活かす組織

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さらに熱血、もはやオンリーワン

7節時点の傾向まとめ
【熱血で狡猾で環境適応】

特色はなんと言ってもプレス総回数の突き抜けた多さ。非保持のチームなので試行数は自然と高くなる傾向にありますが、あまりに顕著なので”プレッシングスタイル”と断じて良さそうです。

特定のゾーンに偏って圧をかけてはいないし(すなわちハイプレススタイルやリトリートスタイルではない)、”押し込まれ度”も水準なので、バランスを崩しても献身的にプレッシングをかけて事故らせる→裏返しを狙う、熱血だけど狡猾なチーム!と解釈するのが最も頷けました。

シーズン前半戦の傾向
7節時点の傾向はカリアリと酷似してましたが、1巡した結果、カリアリが劇的に変化したので、”熱血で狡猾”はサンプドリア唯一の冠になりました。

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チーム単体で見ると自身のスタイルを引き続き保ちつつ、デュエル勝利数の増加が目立つことに気が付きます。いや、めっちゃアグレッシブ!

攻撃面に大きな変化は見られず。データ的にはクセがないボール保持ですね。相変わらずシュート数はリーグ下位でやや順位とリンクしません。
しかし、選手の特性を上手く活かせてるのでは?と読み取れるんです。

得点(決定力)はクアリアレッラ
ドリブル突破はダムスゴー
チャンスメイクはカンドレーヴァ

と、〇〇と言ったら?で明確なネームを挙げられる点に、個と組織が上手く融合してるなぁという感想を抱きます。

ゆえ、「これらの選手がいなくなったら?」が不安要素ですね。どのチームもこの問題は常に付き纏いますが、スカッドやクラブの規模を鑑みれば、サンプドリアの影響度は大きい気がします。

その他、印象的なスタッツ

✔︎トルスビー、プレス成功数累計リーグトップ。プレッシングスタイルの象徴!
✔︎ダムスゴー、ドリブル突破の累計リーグ3位。

●11位ベネヴェント(順位UP↑)

超ボール非保持型+超迎撃+だけどオープン

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続・がっぷり四つの戦い

■7節時点の傾向まとめ
【がっぷり四つの戦い】

リーグワーストとなるボール非保持型でありながらプレス総回数が少ない。すなわち、対戦相手がボールを持つ時間が多い、超迎撃スタイルと言えます。

そこから、バーティカル(縦方向)に一気に持って行く形だとデータから推察。

人数が足りている機会が多いであろう迎撃型なのに失点数がリーグワーストなのは、おそらく組織的守備が至らない!というよりも、自分たちの攻撃の方が優先度が高いから!だと思います。

となると、迎撃型の守備だけど引かずにがっぷり四つで戦う!少し矛盾するような試合展開がイメージできます。オープンな感じでしょうね。

シーズン前半戦の傾向

✔︎ディフェンシブサードでのプレスが大幅に増加
✔︎それに伴いアタッキングサードでのプレスが大幅に減少

傾向は変わらずですが、元々低かった重心がさらに落ちました。
序盤はハイプレスでアグレッシブに行く試合もありましたが、”対策”由来だったり、持続できなかったりと、地のスタイルはどっしり構えての迎撃ってことだと想定されます。

ボールロストが水準よりも大幅に低い点は、ここに起因するはず。相手チームがボールを持つ時間が長いんでしょうね。

にも関わらず、クリア回数が水準以下=”押し込まれ度”が少ない点がこのチームのユニークなポイント!

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意図的にクリアしないで丁寧に繋ぐ!というコンセプトも考えられますが、リーグワーストの超ボール非保持であることを考慮すれば、

「迎撃だけど攻めるときは一気に攻めるぜ!」

だし、

「実際、深くまで攻め込めている!」

と推察できます。やっぱりオープンでゴールやシュート数も順位とリンクしますね!

となると、やはり怖いのはトランジション。攻→守への切り替えです。
失点数はリーグワースト3位タイ。こちらは順位と紐づいてないので変わらぬ課題ではあります。

とは言え、失点数は7節時点ではリーグワーストだったので良化。なによりも順位も4つ上昇しています。昇格チームであることを鑑みれば、十分過ぎるシーズン前半だったと評価できるでしょう。

私情全開ですが昇格チームでは最も好き。

その他、印象的なスタッツ

✔︎スキアッタレッラ、アタッキングサードへのパス回数の累計リーグ20位タイ。リーグワーストのパス総回数を考慮すれば素晴らしい回数!ベネヴェント攻撃の最大のスイッチ。


●12位フィオレンティーナ(順位:KEEP→)

ポゼッションバランス型+バランス+クロス特化

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スカッドと戦術は一致しているか?

■7節時点の傾向まとめ
【プランデッリ、カオスを整理できるか?】

クロスあり、ドリブルありとサイド攻撃が得意そうなスタッツが目を惹きます。クロスはPA内の味方に通った回数が多く、歩留まりが非常に良い。

攻撃面に関しては順位以上の火力がある印象ですが、大きな課題が守備面。
とにかくボールが奪えない…!

多角的に考量した結果、中盤を行ったり来たりする展開が多いんじゃないかと推察。
悪い意味でゲームをコントロールできていない感がデータから香ってきます。

シーズン前半戦の傾向

✔︎クロスの回数が大幅に増加。リーグトップに。
✔︎ドリブル突破数が超大幅に減少。
✔︎パスを総回数も平均以下から平均以上。すなわち本記事定義のボール保持型に。
✔︎その他の傾向は変わらずでトレンドライン寄り。

早い段階から監督交代が発生したチームなので7節時点との比較が楽しみでした。
大きな変化が見られたのは

ⅰ)クロスの回数の増加(リーグ6位→1位に)

ⅱ)ドリブル突破数の減少(リーグ4位→ワースト4位、めちゃくちゃ減った!)

です。

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守備においては全体的に数値が耕されています。悪目立ちしたボール奪回数も実はちょっと良化。とは言え、まだリーグワーストですが…。

試合のインプレッションも守備面はけっこう整備されている感。「やっぱりプランデッリ!」とプラス思考が働くのは”愛ゆえの厳しさ”がない他サポだからでしょうか。

攻撃面は上述の通り、クロスの本数増加が特徴ですが歩留まりはガクッと落ちています。したがって、ただ本数だけが悪戯に増えてしまっているという結果に。

となると、パス総回数が増えているのとドリブル突破数が減っているのは攻撃が詰まってクロス逃げている、無理に頼っている、という解釈が最も腹落ちします(ドリブルはリベリ不在の時間が少なくなかったのも一要因)。

Twitterで前編をアップした際に「ヘディングが上手いFWがいない!」というコメントを頂いたのですが、「あ、繋がってるんだな」とピンときました。

もちろんクロスの受け手だけではなく、出し手側の問題もあるでしょうが、いずれにせよスカッドとチームの手段が合致しているのか?と問題提起したくなるチームですね。

タレントは間違いないですし、刹那的に見せるプレーはそのポピュラリティーが誤りでないことを証していますので個人的にはまだここから!と信じたい。

その他、印象的なスタッツ

✔︎ビラーギ、PA内の味方にクロスが通った回数の累計、リーグトップ。クロス爆撃王!
✔︎ミレンコヴィッチ、ドリブル突破阻止 成功率リーグトップ。ザ・ウォール。

●13位ボローニャ(順位:UP↑)

ボール非保持型+ドリブル志向+ハイテンポ

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リスク管理は変わらずも、文字通りの”前進”を

7節時点の傾向まとめ
【ローリスク、ミドルリターン】

7節時点で最も分析が難しかったチームです笑
本記事のいずれの傾向分析でもトレンドライン寄り。唯一、特徴があったのはクリアの多さ。

もうちょっと細かく見てみると、プレスはかけるけどそこまでガツガツ行かないよ!と読み取れるのでクリアの回数が多いのは安全策。リスクを取らないコンセプトゆえかもしれません。

にも関わらずそれなりのリターンを得ているのが面白いんです。シュートの回数はリーグ4位。枠内シュートに至ってはリーグ2位でした。

シーズン前半戦の傾向

✔︎ミドルサードでのプレスが減少。
✔︎クリア回数が大幅に減少。
✔︎ボールロストが水準よりも高く、トランジションは多め。

・チームのドリブル突破数、リーグ3位。
・ボール前進パス、リーグ6位。
・アタッキングサードでのプレス割合が増加。
・が、ディフェンシブサードは変わらずなので、割合を減らしたのはミドルサード。

うん!チームの個性が出てきました!

興味深いのはすべての要素がひと繋ぎになっているのでは?と思われる点。

ⅰ)ドリブル突破とボール前進パスはロストと紐づいているでしょう。

バーティカル(縦方向)志向だと読み取れます。その為、クリアが少ない。これはベネヴェントと似た傾向です。

ⅱ)ミドルサードのプレス減は、トランジションが起きたら即時奪回or自陣撤退の2つのシチュエーションをパキッと使い分けていると思われます。

積極的になったけど、リスク管理の意識の高さは変わらず。
したがって、アタッキングサードでのプレス割合増がディフェンシブサードではなく、ミドルサードの割合減に連関しているはず。

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アタッキング&ディフェンシブサードでのプレスが水準以上=ミドルサードの割合が少ない。です。

要するに、以前よりもハイテンポなサッカーになったと考察しました。

シュート数や実得点、得点期待値などの順位を落としていますが、これはボローニャ云々じゃなくて収束された結果「上位チームが当然のように得点関連のスタッツも上位に」ってことですので評価を下げるものではないかと。

実際の試合と掛け合わせるともう少し順位が上でも不思議ではないな、と思うチームです。
前に前に!という姿勢が順位にも反映されるといいですね!

その他、印象的なスタッツ 

✔︎チームのドリブル突破数はリーグ3位なのに、個人の突破数累計はバロウの13位が最高位。つまり、チーム全員でトライして突破できてる。
✔︎冨安、クリア回数累計リーグトップ。危機察知能力!!

●14位ウディネーゼ(順位:UP↑)

ボール非保持+迎撃+スローテンポ

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完全なる上積み​

■7節時点の傾向まとめ
【クロス・クロス・クロス】

土台となるのは、やや重心重めのミドルブロック。デュエル志向は薄く組織的に守ります。
守備面は失点数が示すように降格圏内グループの中ではしっかりとした設計。

問題は攻撃面。
ロングパス、クリア回数がトレンドラインよりも下回っており割と丁寧に繋いでビルドアップしていると推察できます。
この狙いはサイドの押し上げを狙う為のものでしょう。リーグ断トツトップとなるクロス回数がそれを物語ります。

しかし、そのクロスがPA内の味方に通った回数が絶望的に低く「そもそもスカッドと合った戦術なのか?」と懐疑的になってしまいます。

シーズン前半戦の傾向

✔︎クロスの回数が大幅に減少。
✔︎ディフェンシブサードでのプレス割合が大幅に増加。
✔︎得点期待値が微増。

なんと言っても順位が当時から5つも上がってますからね!そりゃデータで見ても改善はハッキリしてます。

無謀なクロスの大幅減は得点期待値、すなわちチームの火力の底上げに繋がりました。
パス総回数がほば横ばいなのに、ボール前進パスの増加が目立つので変わらないポゼッションでもゴールを目指す為の”崩しのパス”がしっかり増えているということです。

「え?ボローニャのようにハイテンポなんじゃない?だから増えたんじゃないの?」と思って下さったそこの貴方、こんな長ったらしい記事を良く読んでくださってありがとうございます。

ウディネーゼは下記の特徴を併せ持ちます。

ⅰ)クリアの回数が水準以下=”押し込まれ度”が低い。

ⅱ)ボールロストの回数が水準以下=トランジションが少ない

非保持型の数少ない一手一手に丁寧さを求めていることが推断できます。
よってもって、これらのピースの中でボール前進パスが増えていることは単純にポジティブでしかありません。

ディフェンシブサードでのプレス割合の多さは元々優れていた迎撃守備にさらに重きを置いた結果か。失点期待値なんとリーグ3位!の鉄壁となりました。

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実際に試合を見てもめちゃくちゃ良くなったと僕は思ってます。
攻撃も守備もベースがある上に1試合ごとに工夫もあって、それぞれに練度を感じられる。良き。

さらに攻守の要となる選手がネームバリューに違わず活躍している点も無視できません。デ・パウルとムッソです。

前者はセリエAファンなら当然ご存知。元々評価が高い選手ですが、今季さらにワンステージ上の選手に成長した印象を持っています。

後者は序盤こそ調子を落としていましたが、徐々に真価を発揮しているのがデータにも現れているんです。チームの好調と時期が被るので相関関係は少なからずあるのではないかと。

ボリュームが多くなってしまいましたが、それだけトピックスがある事実に、順位の推移がマッチしますね!

その他、印象的なスタッツ

✔︎デ・パウル、ボール前進パス累計・ドリブル突破数累計ともにリーグ3位。崩しのキーマン。
✔︎
クロスがPA内へに通った回数、リーグ10位。散々だった歩留まりも実は向上。

●15位スペツィア(順位:DOWN↓)

ボール非保持型+ロングパス特化+武闘派

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質がないなら量を増やそう

■7節時点の傾向まとめ
【発射台とシャトルのギャップ】

ボール非保持スタイルでありながら肉弾戦をとことん嫌うユニークなチームです。
組織的守備でしっかりとブロックを形成して守ることがベース。

マイボールになったら狙うはロングパス!その割合はリーグトップ。成功率も良好。クリア回数も少ない、すなわち自陣でも落ち着いて態勢を整え前方に射出できる土台を持っていそうです。

が、問題はその先。得点期待値はリーグワースト2位。「ボールが通った先は個人でなんとかして!」感が否めません。
発射台はしっかりしているのにシャトルに不備があって墜落してしまう。そんな絵を頭で描いてしまいました。

シーズン前半戦の傾向

✔︎リーグトップだったロングパス回数をさらにグッと伸ばす結果に。
✔︎デュエル勝利数が超大幅に増加。
✔︎アタッキングサードでのプレス割合が微増。

攻守における変化のコントラストがユニーク!

ボール保持はロングパス割合の顕著な多さを鉛筆削りにかけ、さらに尖らせてきました。

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実得点や得点期待値、つまりチームの火力は額面上変わりありませんので、データ上位陣の客観視では一応「質は変わらず」と評しておきます。

もしかしたら「質は変わらないから(変えられない)、量を増やそうぜ!」ってことかもしれません。乱暴かもですが、ロングパス割合の極端な値からあながち馬鹿にできない予想かも笑

非保持はアタッキングサードでのプレスとデュエルを色濃くして積極性が見られますね。
インテル戦マッチレビューでも言及しましたが、実際の試合を見ても「序盤と守備が変わった説」は強く推していきたいところ。

これはパルマも同様なのですが、引いて守ることに付き纏うデメリットから脱却したかったんじゃないかな、と妄想します。 

試合のインプレッションにも触れておくと、スペツィアは確かにロングボール偏重ですが、両SH(WG)がめちゃくちゃフレキシブルだったり、エンゾラなどのサプライズもあって見応えがある。

ベネヴェントもですけど、昇格チームは個性がハッキリで面白いですね!個人的には来季も見たい。

その他、印象的なスタッツ

✔︎テルツィ、ロングパス総回数累計リーグトップ(GKのぞく)。スペツィアの発射台!
✔︎ちなみにGKを含むと、当然スペツィアGKプロヴェデルがリーグトップ。2位とは100回差という圧倒的な開き具合!笑

●16位ジェノア(順位:UP↑)

ボール非保持+超撤退守備+個を活かす組織

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ブラッシュアップも、その中身は…

7節時点の傾向まとめ
【ワンチャンスに賭ける】

ジェノアは分かりやすい傾向でした。撤退守備、しかもパルマと並びリーグ屈指の重心低め。

課題はボール保持、攻撃です。ロングパス主体のスペツィアとよく似た傾向ですが、彼らと比べるとその成功率が明白に見劣ります。

興味深いのはジェノアはパス総回数から”ポゼッションバランス型”にカテゴライズされますが、実はロングパスだけでなくショートやミドルパスの成功率も今ひとつ。

加えて、ボールタッチの割合、つまり主なプレーエリアはディフェンシブサードに偏重しており、十中八九、ボールを前に運べず、パス総回数が無駄に増えてしまっていると思われます。

こういった事象の推察はポゼッション率を用いると困難。改めて、パス総回数を指標に据える傾向分析は優れているな、と考えます。

シーズン前半戦の傾向

✔︎得点期待値が大幅に増加。リーグ唯一。
✔︎ロングパスの割合が大幅に減少。

ⅰ)デュエル勝利数少なめ
ⅱ)ボール奪回数多め
ⅲ)ディフェンシブサードのプレス多め

非保持のベースはコテコテの撤退守備で変わりはありません。

7節時点も今回もボール奪回数の水準はかなり高く、組織的なボールハントには定評があるので、変わりないことはむしろ前向き。

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一方、ボール保持には変化が見られました。
ロングパスの割合が減っただけでなく、そもそものパス総回数もかなり低下しています。パスが少なくなった上に割合も減ってる。

ということは、

試合の見た目は数値以上にロングパス1発構成が減っているはず。

これは僕の印象とも合致します。

結果、得点期待値がリーグ唯一、増加が目立つチームとなったわけでかなりポジティブに見えますが、データで踏み込むとデストロの依存度が大きいことに気付きます。

ジェノアのFW陣は様々な理由から出場時間を分け合っていますが、デストロの1試合あたりの枠内シュート、”シュートがどれだけゴールになっているか”、得点期待値などなど。総じて、シュートシーンの貢献度の高さはチームで頭1つ、いや、2つ抜けています。

さらに”数値上での決定力”もインモービレと並びリーグトップなので攻撃のブラッシュアップは個人由来の色が濃いのかもしれません。

「偏った確率の収束」
ラツィオ同様、そんなもん蹴り飛ばしてくれることを祈ります!

その他、印象的なスタッツ

✔︎デストロ、PKのぞくゴール−得点期待値の累計値。つまり、「統計による期待値よりもどれだけ実際に決めてるか?」でインモービレに並びリーグトップ。
✔︎ボール前進パス、リーグワースト。縦パス上手く付けれず。
✔︎それゆえか、シュート数もリーグワースト。額面上はチームとしての火力が上がったとは言いづらい…

●17位トリノ(順位:KEEP→)

ボール非保持型+撤退守備+バランス

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素直に謝れる上司は良い上司だと思います

7節時点での傾向まとめ
【その姿勢は好感が持てるが・・・】

ボール非保持型でありながらショートパスの割合がトレンドラインを大幅に上回っており、少ないパス回数の中でも丁寧に繋いで攻めたい姿勢が伝わってきます。

しかし、守備は撤退守備と読み取れるので重心重めです。自陣深くから細かいパスを繋いでゴールを目指す回数が多いのは強豪チームですらハードルが高いでしょう。
攻守の切り替えの危険度も高いので、けっこう綱渡り的な展開が多いんじゃないか?と危惧してます。

下位チームにあってその姿勢は好感を持てますが現実問題、身の丈に合っていないのかもしれません。

シーズン前半戦の傾向

✔︎デュエル勝利数が大幅に増加。
✔︎ロングパス割合が大幅に増加。
✔︎ショートパス割合が大幅に減少。

着目すべきはなんといってもパスの割合ですね。
こだわっていたショートパス志向はかなり丸みを帯び、落ち着いた形に。

「やっぱり自軍深くからの細かいビルドアップはリスキー過ぎた!ごめんなさい!方向転換!」というやりとりは流石にないでしょうが笑、かなりドラスティックな変化なのでテコ入れは否定出来なさそう。

7節時点の傾向分析時に「身の丈に合ってないんじゃない?」とか言及しておいてなんですが、その特徴は僕が思い描くジャンパオロ監督っぽくて側から見る分には興味深かったんですけどね!

ただ、大逆転を許したインテル戦で2度、高い位置からのボールロストで被弾するなど、危うさは明らかに表立っていたので着手はやむなし、か。

デュエル勝利数が増えた守備は実際の試合でも感じているのですが、抑えておきたいポイントはそこではなくて最後の砦GKです。

”シュート後失点期待値”という統計指標でセリエAの各GKを見てみると、シ、シリグが…

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トリノ、以前はゾーンで手堅く守る印象でしたが、人にも当たるソリューションを施し、所謂ゾーンマークっぽくなったのは相手のプレーを制限してなるべくシュートに持っていかせたくない!とも読み取れます。

もちろん、監督や選手たちがシリグ単品のデータを見て対応しているわけはありませんが、大局的に見たときに色々繋がってしまうのがデータ考察の面白いところ。

まぁ、こんな乱暴な妄想は置いておいて、個人的にトリノは結局、ボール保持と次局面のネガティブトランジションが厳しかったのかなぁと見立てています。

監督交代でどう生まれ変わるか。セリエAファンは気になりますね!

その他、印象的なスタッツ

✔︎ベロッティ、被ファウル累計リーグ2位。チーム内では良くも悪くも浮いたエースなので当然か。
✔︎それゆえか、シュート関連のスタッツは若干低下。とはいえ、まだストライカーとして高評価できる値!チームの絶対的エース。

●18位カリアリ(順位:DOWN:↓)

ボール非保持+バランス+スローテンポ

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コンセプトの瓦解

7節時点の傾向まとめ
【熱血で狡猾で一貫】

目立つ特色はなんと言ってもプレス総回数の圧倒的な多さ!非保持のチームなので試行数は自然と高くなる傾向にありますが、あまりにも突出。サンプドリアと同じですね。

サンプドリアの違いはボール保持の手段。
ボールを奪った後は割と手数をかけてそうです。少ない保持の時間で確実にFWに届けたいんでしょう。というのも攻撃はシメオネとジョアン・ペドロに頼っています。ここが強みであり弱みでもある。

開幕からのサッスオーロ、ラツィオ、アタランタ戦、地獄の3連戦こそ1分2負と厳しい結果でしたが、続く格下、同格チームとの4連戦は3勝1分と地力はありそう。

シーズン前半戦の傾向

✔︎プレス総回数が大幅に減少。
✔︎プレスのゾーン割合は変わらず。
✔︎得点期待値が大幅に減少。

7節時点の地力は試合面からもデータ面から窺えたんですが、1巡して順位を大幅に落としてしまいました。

致命的なのはプレスの総回数と割合の関係性と思っていて、総回数がドドーン!と落ちてしまったのに各ゾーンでのリソースのかけ方が変わっていないスタッツはオールコートのプレッシングでただただ強度が落ちてしまっただけ、ということです。

例えば、ディフェンシブサードでの圧を強めて、重心を低くしましたよ!なら理屈に合うんです。

が、プレスの割合はどのゾーンでも水準通り、すなわちボールの取りどころが定まっていないので、これを成立させるには強度が不可欠なわけです。
これはサンプドリアも全く同じ傾向にあります。

他にもちょっと気になるところはあるんですが、上記のポイントと比べると霞みます。カリアリはこれに尽きますね。

「プレッシングスタイルなのに強度を失った」というコンセプトの瓦解。

必然、被シュート数と失点期待値も増えていて相手に量と質、両面のシュートチャンスを許しています。

ここで取り上げたいのがGKクラーニョ。

シュート後失点期待値から読み取れる額面上は、セリエAで最も難度の高い枠内シュートを受けていて、かつ統計上の平均的なGKよりもセービングしている結果に。

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孤軍奮闘!!!

その他、印象的なスタッツ

✔︎ボール奪回の内訳、インターセプトはリーグ中位なのにタックル成功数がワースト2位。
✔︎プレス成功率、リーグワースト。当然、ディフェンシブサードでの成功率が高めなので、全チーム並べての比較は鵜呑みにできませんが、それでも…って感じがしませんか?

●19位パルマ(順位:DOWN↓)

ボール非保持+超撤退守備+カウンター

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初志貫徹だったリベラーニ監督

7節時点の傾向まとめ
【THE・リトリート&カウンター】

7節時点では最も分析しやすいチームでした笑

極端に多いディフェンシブサードでのプレス割合の多さと”押し込まれ度”の多さ。重めの撤退守備がベースで間違いないと断じます。

ある程度の質は感じられますが、意図的とはいえ極端に引いて守れば、どうしたって被弾する確率が上がる点は今後も覚悟と我慢が必要。

リーグワーストとなるショートパスの少なさから攻撃はカウンター主体!
前線のジェルビーニョ、カラモー。中盤のエルナニのドリブル突破回数や運ぶドリブル回数が多く、その推進力に頼ってる感があります。

が、自陣に人数を集めている分、手数はどうしても少なくなり、結果、得点力不足に繋がっている印象。
とはいえ、前がかりになったらリトリートの質は下がるでしょうし…一概に「改善に取り組むべき!」と言えないのが根深い。

ちょっと古き良きカルチョを匂わせるチームですね。

シーズン前半戦の傾向

✔︎7節時点との大きなギャップは特になし!
✔︎アタッキングサードでのプレス割合が極端に少ない、徹底して前から行かず。
✔︎ボールロストが少なく、相手チームの攻撃時間が長い。

データ上、7節時点ともちろんジャストな値ではありません。多少の増減はあります。
が、目立った変化は得点期待値の減少のみ。

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チームとしての傾向もさることながら、例えばボール保持型はジェルビーニョやエルナニの推進力に頼っている感など、個人のタスク傾向も変わらず!というのがまたそそられます。

リベラーニ監督が解任されてしまったのは16節後ですから、

ⅰ)リベラーニ監督が一貫したスタイルで戦っていた。

ⅱ)しかし、スカウティングが進んだか、歯車が狂ったか。徐々にチームは下方線を描く。

ⅲ)新体制はデータの分母的に、流石にたった2節分ではチームのスタッツに影響が生じなかった。

ということでしょうか。

ダ・ベルサ監督体制、僕はまだ1試合しかチェックできてないのでデータ面からも主観面からも言及するのは控えておきます。

となると…どうしよう、書くことがありません笑
代わりに冬の移籍市場でレンタル加入(買取OP付き)したザークツィーにちょっと触れたいと思います。

僕は恥ずかしながら実際のプレーを見たことはないんですが、どうやら高身長に違わぬフィジカルと足元のテクニックを完備しているっぽいです。

選手のタイプは全く違いますが、昨季のクルセフスキのサブスティテューションになれるなら、かなり面白いかも。
もちろん全ては望んでないし無理ですが、戦えて・捌けて・ゴーできるならパズルのピースになれるんじゃないかと考えちゃうんですよね。中継点的な。

選手単体でも気になる有望株ですが、”パルマでプレーする”という付加価値に惹かれています!
(パルマの項だけ、主観多めの内容で申し訳ありません)

その他、印象的なスタッツ

✔︎コーネリウス、空中デュエル勝利数 累計リーグ4位。FWではリーグトップ(ポジション上、DFが上位にきやすい)。カウンターの先鋒。
✔︎キーパス(シュート直結パス)、PA内へのパス、リーグワースト。やっぱり中継点欲しいと思うんだよなぁ。

●20位クロトーネ(順位:KEEP→)

ボール非保持+バランス

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暗中模索

■7節時点の傾向まとめ
【グリーンライトが灯る】

昇格チームでありながらアタッキングサードでのプレスの割合はなんとリーグ3位!と積極的!
勇敢に戦っているのが伝わる好感度の高いチームです。

このチームの深刻な問題は守備の面。
勘案の結果、相手の攻撃をストレートに通してしまってる機会が多いのかもしれません。常に青信号で「どーぞ!お通り下さい!」って感じ。

当時、GKセーブ率が最も低いチームでしたが、ここに原因がありそうです。7節時点のインテルと同じで質の良いチャンスをプレゼントしている回数が多いんでしょう。

シーズン前半戦の傾向

✔︎アタッキングサードでのプレス割合が大幅に減少。
✔︎ショートパスの割合が大幅に減少。
✔︎クリア回数が大幅に増加。

昇格チームでありながら勇敢に戦っていたチームの特有性は残念ながら失われてしまいました。

けど、それらすべては理解できます。

7節時点のクロトーネはおそらく純粋に守備のクオリティの問題が具体化していたので梃子入れはマスト。

その手段はデータ分析上、

ⅰ)アタッキングサードのプレス割合減=リスクマネジメントの強化。

ⅱ)ショートパス割合減=フィニッシュに繋がっていなかったので効率性の追求。

ⅲ)クリア回数増=リスクマネジメントと効率性の強化。

であると言えます。

うん。クロトーネにとっては良いパッチに思えます。が、如何せん結果に繋がっていない事象を顧みるに”妥当”という評価はし辛い。

そもそものタレントのクオリティ問題もあるかもしれませんが、それを言ってしまうと身も蓋もなくなってしまうので、チームとしては「手がかりがないまま、色々とやってみてる」との名状が適当と考えます。

となると、20チーム中、最も「どうしようもない」感が現状は強めで、ファンの方には誠に申し訳ありませんが、現在の順位は納得してしまう自分がいます…。

どうせ散ってしまうなら「個性があるまま当たって砕けて欲しかった」と思ってしまう僕。他サポの醜いエゴですね。

その他、印象的なスタッツ

✔︎メシアス、ドリブル突破数リーグ2位。抜いた人数は1位!クロトーネのメシア(救世主)!
✔︎自陣PA内、ディフェンシブサードでのボールタッチ数リーグで最も多い。ポゼッション率やクリアの多さに惑わされるかもだが、最も自陣でプレーする時間がチームのひとつ推察。

●あとがき

いかがでしたでしょうか?
普段はマッチレビューが中心の当noteですが、本考察記事はそれらの10倍以上の時間が溶けました笑

推しチーム以外のことも好き勝手に考察や解釈を進めてしまいましたが、時間をかけただけあって、表面的な部分や枠組みの部分はそこそこ的を得てると同時に、一定以上は網羅できていると思い切って自負しちゃいます。

とは言え、考察や解釈が検討外れな点もあるでしょうし、試合のインプレッションを鑑みればデータもまた違う見方ができるものも少なからず存在するでしょう。

本記事の目的は

実際の試合×データで、視野を広げる。サッカーを多角的に見る。

ことにあります。

僕の表面的なデータ考察よりも、ファンの方の試合のインプレッションやチームの詳しい動向の方が価値がありますし、それをデータと掛け合わせることでより深みが出ますので、インテリスタの方に関わらず、コメントやRTで意見を頂けると幸いです。

最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯

もしサポートを頂戴した場合はサッカーのインプットに使用し、アウトプットでお返しできるよう尽力いたします。