【データ考察】セリエA20-21 前半戦終了時点 スタッツで見る各GKのセービング
こんにちは!TORAです🐯
セリエA、シーズン前半戦が終わりましたね。1周回ったこのタイミングでデータ考察をしてみようと思います。
今回はGKのデータを覗いてみます。フォーカスするのはセービングに関するスタッツ。
尚、本考察記事はFBref(データ提供はStatBomb)を参照しております。
●データ考察の幹となるスタッツは”シュート後失点期待値”
GKにおける最もキャッチーでとっつきやすいスタッツは”セーブ率”だと思っているのですが、分かりやすい反面、「シュートにおける状況を一切加味していない!」という根拠の弱さを内包しています。
例えば
ⅰ)イブラヒモヴィッチがPA内フリーで枠内シュートを放った。結果、GKはなす術なく失点。
ⅱ)シュートが不得手な選手がPK外から無理矢理、枠内シュートを放った。結果、威力もなくGKの正面。楽々キャッチ。
これで、ⅰのGKのセーブ率が悪く、責められるのは流石に酷。正鵠を射ることは出来ていないですよね。
というわけで今回はよりピュアなセービングスキルを確認する為に”シュート後失点期待値”というスタッツを取り上げます。
・シュート後失点期待値って?
データサイトによって名称が異なったりもしますが、本考察記事ではFBref(StatBomb)を参照しておりますので、該当サイトの表現を用います。
シュート後失点期待値を短いセンテンスで表すならば
シュートそのものの難度を表す指標
が適当だと考えます。
もう少し噛み砕いていきましょう。尚、長文に加えて、上述の認識でも誤りではないのでスキップ可能です笑
今やマスに広がりつつある得点期待値(Expected Goals)が
✔︎シュートが放たれる直前までのプレーを評価する指標
✔︎シュートのお膳立てを数値化
✔︎シュートの打ち手側目線
であるのに対し、
シュート後失点期待値(Post-Shot Expected Goals)は
✔︎シュートが放たれた後、そのシュートの質によって、どれだけ失点する可能性があるかの指標
✔︎枠内シュートそのものを数値化(枠外は失点する可能性がないので除外)
✔︎GK目線
です。
例えば、
■クリスティアーノ・ロナウドがPA外からロングシュートを枠内に放った。
統計的に得点期待値は低く、仮に0.03とする。
■しかし、流石はロナウド。威力とコース、個のスキルで精度を上乗せし、GKを脅かす。
そのシュートの質は高く、仮にシュート後失点期待値は0.5とする。
■ロナウド目線では得点の期待値3%が与えられた(平均的な選手であれば)。
■しかし、その枠内シュートはGK目線で50%、失点の可能性がある(同じく平均的な選手であれば)。
ということになります。
・読まなくてもいい蛇足その1
「PA外からのシュートがたったの0.03(3%)って!」と思われるかもしれませんが、期待値は過去の膨大なデータの統計で算出されており、難しい角度のシュートやPA外からの距離のあるシュートの期待値は非常に低いです。
よって、これらのシチュエーションからゴールが生まれた場合、基本的にはシューター由来。統計的にはゴラッソだと言って過言ではないです。
・読まなくてもいい蛇足その2
逆を言えば、いわゆる”決定機”と呼ばれるビッグチャンスは0.6、0.7(60、70%)あたりの非常に高い期待値になりますが「これを逸した際に与える影響が大きすぎるのでは?」という意見も存在します。
額面上は「枠内シュートvsゴールキーパー」で切り取られているので、シューターの状況もGKの状況も一切含まれていない”セーブ率”よりもGKのセービングスキルを評価するスタッツとしては優れていると言えるでしょう。
とは言え、シーンを限定したシュート後失点期待値もその中身がどこまで考慮されているかの詳細はオープンになっていません(たぶん)。
ⅰ)直前のプレーでGKの態勢が崩れている
ⅱ)ニア側を攻められ絞っていたものの、見事なパスで振られて即シュートを放たれた
など、「GKがどうシュートに向き合えているか?」という点。
また、各人の主観とどうしてもギャップが生じる点も僕は否定しません。
例えば、ナポリ戦のインテルGKハンダノヴィッチは鬼神の如きセービングで勝点3を守り切った印象ですが、実は本試合のシュート後失点期待値はさほど高い値=難度が高い被枠内シュートではありませんでした。
「いや、統計的に見たらそうゆうことだから」
と言われればそれまでかもしれませんが、消化し切れない思いはあるでしょう。
これはデータ人間の僕ですら感じます。
ということで、毎度お伝えしておりますが、あくまで参考まで。
すべての考察に「額面上は」の前置きを念頭にお願いいたします。
●シュート後失点期待値から各GKセービング−ハンダノヴィッチを除く
では、確認いたしましょう。
✔︎セリエAの全チーム
✔︎5試合(450分)以上に出場している
✔︎ハンダノヴィッチを除く
※ハンダノヴィッチを含むデータは本記事をご購入頂けた場合にご覧になられます(理由は後述)。
上記の条件でソートし、
ⅰ)シュート後失点期待値
ⅱ)シュート後失点期待値−実失点
で散布図を作成し、
ⅲ)実失点
を組み込んでみました(選手名、上の”GA”が実失点です)
散布図、執筆画面では鮮明なんですが、データが重いせいかアップするとぼやぼやに…見づらくて大変申し訳ございません。
↑分割してみました
横軸はシュート後失点期待値の累計。
右に行けば行くほど、「シーズン前半で難度の高い枠内シュートを浴びてきた。その量が多かった。」ということになります。
この値が多いほど、データの分母が多いので信頼性は増します。
とは言え、横軸はチーム次第。当然ですが攻められる機会が多い下位クラブが多い傾向。したがってGKマターのスタッツではありません。
縦軸は期待値から実失点をマイナスした値。つまり、「GKが期待値と比べて実際、どれだけシュートを止めれているのか?止めれなかったのか?」ということ。こちらはGKマターですね。
額面上は±0が平均的なGKの値になります。
例えば、”+1.0の値のGK”ですと「平均的なGKよりも1点分のゴールを防いだ」ということになります。
・読んで欲しい蛇足その1
尚、縦軸は±0が”平均的なGKの値”なのにも関わらず、全体の平均が-1.0と低い値なのはトリノのシリグがマイナス値を大幅に稼いでしまっているのが最大原因です。
シリグ、額面上では非常に厳しいと言わざるを得ません…。もちろん守備陣の甘さもあるでしょうが。
・読んでほしい蛇足その2
とは言え、縦軸がマイナスの選手が多いのも事実。
「え、今季のセリエAのGKたちは微妙なの?」
もちろんそんなことはありません。これに関しては考察という名の妄想がありますが、有料版の購入特典にいたしますのでここでは割愛させて頂きます。
ちなみに大した話ではないです笑
横軸の平均は19.6。おおよそ20と高くない値ですが、これはナポリやアタランタ、ラツィオなどファースト&セカンドGKが様々な理由で出場機会を分け合っているチームが存在することに起因します。
それらのチームを見てみると、ラツィオはストラコシャは平均ちょい下なのに対し、レイナは「平均的なGKに比べ、およそ4ゴールを防いでいる」データで、軍配が上がる結果に。
同様にローマはパウ・ロペス、アタランタはゴッリーニが優位ですね。
一方、ナポリはバッチバチ!データ上は素晴らしい正守護神争いが繰り広げられています。
ただ、このグループは分母が少ないのでジャッジするにはまだ積み重ねが必要です。
出場数が多い選手たちの中で着目したいのはヴェローナのシルヴェストリ。彼は19試合全てに出場しているのにも関わらず、被枠内シュートの難度、頻度が全体平均よりも低い値。
これはシューターの問題もあるかもしれませんが彼だけたまたま「枠内シュートの難度が低く、量だけがただただ積み重ねられた」とは考え難く、ある程度チームとして、水際のプレーを防げている!と言えます。
その上でシルヴェストリは縦軸が全体平均-1.0と全く同じ値ですので、ヴェローナのユヴェントスと並ぶセリエA最小失点はデータ的にも非常に妥当な結果だということが読み取れます。
横軸×縦軸のバランス、つまり”実績”的な部分だと最優秀はドンナルンマとクラーニョでしょう。
画像等で控えておらず申し訳ありませんが、前者は5試合前くらいは+5に近しい値(たしか4.8だったはず。およそ5点分を防いでいる!)でセリエAでダントツトップをひた走っていました。
残念ながらその後、値を少し落としてしまいましたが(特にユヴェントス戦とアタランタ戦)、それでもこのグループの中ではトップ。
本データ考察上ではカテゴリーリーダー。セリエAベストのGKと言えます!
後者のクラーニョ。
個人的には本項で最も興味深い!
失点数はリーグワースト2位、さらに全GKの中で最も多くの枠内シュートに晒されていますが、平均的なGKと比べ、およそ2点分ものシュートを防ぐ活躍っぷり!
もしもGKがクラーニョでなければより失点が嵩み、順位も沈んでいると推察できるでしょう。
2大巨頭に少し遅れを取りますがウディネーゼのムッソも目を惹きますね!セリエAファンならお馴染みのホープはその評判に違わぬスタッツを残してます。
ちなみにムッソはドンナルンマと逆で、シーズン序盤はかなり厳しい値だったのですが(細かい数値は失念してしまいましたが、下から数えた方が早いマイナス値だったはず)、いつの間にか巻き返して、この値まで登り詰めてました。
シーズン後半戦に期待!ですね。
無料でご覧頂けるのはここまで。
ここから先はインテルのGKハンダノヴィッチのスタッツを有料でご覧頂けます。必然、インテリスタの方以外はふるいにかかるはず笑
ということで、セリエAファンの方、サッカーファンの方、いかがでしたでしょうか?
「印象通りだった!」、「ギャップがあった!」等、様々なご意見があるかと思いますが、統計という根拠足り得るデータで、各GKのセービングを数値で確認できたことは意義深いんじゃないかな、と考えます。
また、お伝えしている通り、あくまでデータ上の冷たい部分のみの考察ですのでご参考まで。
ご覧頂きましてありがとうございました🐯
●有料版の説明
さて、インテリスタの方向け、有料版の説明です。
✔︎この散布図にハンダノヴィッチを組み込みます。
✔︎さらに過去4シーズン(17-18シーズンから)のシュート後失点期待値の推移をグラフ化します。
有料の理由は偉大なキャプテンであるハンダノヴィッチ関連の話はネガティブな論争の危険を孕んでいる為。フィルターをかけたかったんです。
ディスカッションは大いにすべきであると考えますが、暴力的な言い争いは断固として避けたいんです。
それでも尚、可視化に踏み切った理由は下記にございます。
主観だけでなく、客観視できるデータも確認することで「サッカーを多角的に見て、より楽しみませんか?」をご提案することにあります。
決して、ハンダノヴィッチを貶める為ではございません。
ご理解頂けたら幸いです。
続いて注意事項。
⚠︎こちらをご覧になり、もしも気分を害されてしまっても自己責任でお願いいたします。
⚠︎ここから先の”詳細”は他言無用、SNSで取り上げることはご遠慮願います。
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