【”深さ”を出す】セリエA第28節インテル-サレルニターナ 緊急レビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回は4節ぶりのちゃんとしたマッチレビュー!
※ちゃんとしてないレビューはこちら
インテル-サレルニターナ戦を取り上げたいと思います!
のつもりだったのですが急遽仕事が入り、出先での作業で記事の内容やらヘッダーやら未完成となってしまいました。
今回はスピード重視と思ったので緊急レビューとしてアップいたします!
2月から本節までインテルは絶不調!!!
試合結果もさることながら、4試合連続無失点と内容も悲惨なものでした。
ゆえにレビューを書かなかったわけではありませんが、鬱憤を晴らすかのような大勝が筆を乗らせたのも事実です笑
選手たちを褒めちぎるような構成にしたい!
…ところですが、「なぜ絶不調だったのか」を避けて通るわけには行きません。
そもそも僕はインテリスタなので、レビューもフラットではなく明らかにインテル目線な内容なんですが、今回はさらに偏った超インテリスタ向けの内容でお届けします。
●なぜ不調だったのか-変換器不全
ぶっちゃけ、最大要因は肉体的&精神的疲労だと思うんですけど、それだと否が応でも着地してしまい、ファンならでの特権である「あーでもない!こーでもない!」に発展しません。
僕は「あーでもない!こーでもない!」したいんです笑
というわけで、今回は戦術面にフォーカスしてメスを入れていきたいと思います。
原因はビルドアップ、特に変換器の不全
戦術面における不調ポイントはコレ。
もちろん他にも細々した点はありますが、焦点を当てるべきはビルドアップと考えています。
「つまらない!」、「可能性がない!」と斬って捨てられた直近のコッパ・イタリア準決勝ミランダービーを例に見てみましょう。
はい。このシーン、何度あったでしょうか。
以前、昨季のルカクはインテルの加速器、ビルドアップにおけるブースターである。
一方、今季のジェコ(もしくはサンチェス)は変換器。
・変換器とは
電気エネルギーまたは電気信号の伝達系を変換する装置。
基礎配置である3‐5‐2からブロゾヴィッチが最終ライン付近に降りて4‐2‐4へと可変。
これはインテルが「自陣でボールを保持する選手配置」であり、いうならば自陣深くにおけるビルドアップの伝達系。
この伝達系をジェコが最前線から降りることで『変換』する。ゆえに変換器。
似て非なるものだけれども、結局コンテ政権もシモーネ政権も最前線のFWがビルドアップのキーポイント。
ここが機能しないとどうなるのでしょうか。
考察していきましょう。
●様々な弊害
ⅰ)高めかつワイドに張っているWBの効果が薄れる
バレッラが右に膨らみ、チャルハノールが連動して中央にズレることで、中盤の重心をズラす。
ブロゾヴィッチが最終ライン落ちする代わりにバストーニが上がり、配置のバランスを取る。
タイミング良く降りてくるジェコは彼らと多角形を構成。
楔をパスを受けるとすかさずサイドのアイソレーションを活かす展開に。
今季を象徴するパターンのひとつでしょう。
再現性が非常に高く、試合の平均ポジションにもよく現れます。
絶好調のペリシッチはDAZN解説者細江さんも仰る通り、抜き切らなくても仕事ができる稀有なアビリティを保持していますので、これだけ時間と空間を与えてあげれば業務遂行してくれます。
というか、この仕組みがペリシッチをノセてるのでは?とも気がします。
ⅱ)スカッドとの乖離
件のコッパ・ダービー後半、インテルは修正案として下記の形に再現性を持たせました。
WB、特に右のドゥンフリースをビルドアップ隊に編入。多角形の構成も変わりました。
代わりにチャルハノールやバストーニの位置を上げて配置的なバランスを取りましたが、いまひとつ機能しません。
何故か。
特記したいのは2点。
ひとつはドゥンフリースのプレス耐性の低さ。
この試合に限った話ではありませんがちょっと悪目立ちしますね。
もうひとつはCB横のスペースを上手く使えなかった点。
ラウタロ・ジェコともに頑張ってはくれましたが、良いパフォーマンスに繋がっているとは言い難い。
口惜しいんですが、ここにルカクがいたら!と思いますね。理由は書く必要もないでしょう。
この2点で何が言いたいかと言うと、仕様変更がスカッドと乖離しているんですよね。
前者はこの状況でしたらダルミアンを起用すべきでしょう。
後者は好調なラウタロとジェコならできるんですが、今はコレアを試して欲しいですね。後方支援を待てるようなボールの持ち方は上手い印象なので。
で、結果どちらも投入されましたけど、その背景がビルドアップの変更と紐づいていたか、と問われると首を捻らざるを得ません。
ⅲ)”深さ”を出せない
ここが一番のネックであると強く主張したいです。
変換器が潰され続け、高い位置WBの意味がぼやけて、やり方を変えても効果が薄い。
となると、保持時に”深さ”が出せない。
相手チームに『前傾』で守られる
実際は図解以上に細かい点も絡み合っていますが、詰まるところ『前傾』で守られるに着地し、これがインテルを苦しめる(た?)最たる事象です。
前傾で守られるとなぜが苦しむのか。
それは変換器が機能しなくなる、WBが高い位置を保てなくなる、という点に帰結。
特にジェコはスキルフルなポストプレーが売りですが、対面のCBが『前傾』に襲い掛かってくるので「剛よく柔を制す」状態に。
また、ジェコが降りて行った先で引っかけられると、相手チームの最終ラインや中盤底の選手たちのリカバリーが主。そこから発進されると、必然的にラインが上がる、ショートカウンターの餌食に。
インテリスタの皆様におかれましては、こと2月において親の顔より見たことと存じます。
ちなみにサンチェスはジェコよりもボールを引き出す動きや収めて反転するスキルに長けていますが(特に後者)、ジェコ以上に降りるので引っかけられるとより致命傷となります。諸刃の剣。
こういった面からもシモーネ監督はジェコに依存してしまうのでしょう。現状況下では猶更かもしれません。
●なぜ”深さ”を出せないのか
一口で済まない問題です。
まずは深刻な問題である変換器。
酷使されているジェコのコンディション低下は間違いないでしょう。
冒頭で「疲労で終わりにしたくない」と言っておきながら、やはり避けて通ることはできません。
その上でジェコがあまりにもボールを収めらないのは、重複ですが対面CBが『前傾』で守れているという因子があまりにも大きい。
前傾前傾と、これまで便利なワードで片づけてきましたが具体的に言えば、
体勢も態勢も整っている
意識を向けられ、やるべきことに集中できる
リソースの使い方がシンプル
こうなると必然的に自分のステージで戦えます。
これはサッカーに限らずで、身に覚えのある方も多々いらっしゃると思います。
ここ最近、ジェコと相対するCBは明らかにパワー勝負という土俵で戦っているので、技術でいなすタイプのジェコが苦戦するのもまた必然。
また変換器を活かすための潤滑油も枯渇している点も見逃せません。
相方であるラウタロ。
ルカクとのコンビは『直接的』。
ワンツーなど、ボールを通してのコンビネーションが鍵。なので、近い距離感が大事でしたし、分かりやすさがありました。
一方でジェコとのコンビは『間接的』。
降りるジェコに付いて行っては、自滅的に深さが取れません。0トップ的な考え方もありますが、インテルは該当しませんよね。
したがって、ラウタロはジェコの代わりに最前線で張り続ける必要がある。そこから裏を狙って相手CBを固定させたり、膨らんだ先で崩しの起点となる。
こういったムーブで相手CBに怖さを与える。
すると、ジェコが降りる動きが混乱を生みます。「付いていくのか、渡すべきか」こういった迷いは所謂「守備の基準点を乱す」ことであり、『前傾』させない為に必要です。
2月のラウタロは至っていませんでした。
情状酌量の余地はあります。
『前傾』で守られることで、特に監視が強かった中盤が彼に精度の高いボールを配球することが難しかったので。
しかし、ラウタロのパフォーマンス不足があり、変換器となるジェコも潰され続けたのも事実。
けどけど、ビルドアップユニットも頑張って欲しかった。
シュクリニアルは放るタイプでないことが完全にバレて狙われている印象がありますし、デ・フライは指示なのかは分かりませんが年々セーフティーなパスが増えてますし(長距離パス上手いのに)、バストーニは逆にセーフティーなパスに危いときがありますしおすし。
中盤の選手たちも監視が強いとはいえシーズン序盤はもっと躱せたでしょう、置いていったでしょうと。その流動性がシモーネ色でしょうと。
というわけで、点と点が繋がって線となっているのが不調の原因。
どこかを切り取ることに意味はないかもしれませんが、それでもピックしたいのは「インテルには”深さ”が出せない」一発の怖さがないということです。
もちろん自分たちのせいだけでなく、明確な対策もされています。
ディテールは各チームによって異なるので割愛しますが、要はインテルの中盤にはマンマークを徹底し、代わりに左右CBにボールを持たせる。対面のマーカーは外切りでプレスをかける(WBに出させない)ことで選択肢を削ぐような手法です。
ただ、これらも結局は「一発の怖さがないから」に帰結する。
一発で奥に起点を取れれば、そこからひっくり返せる。
インテルの選手たちは推進力のある選手ばかりなので、前傾姿勢でのプレスをかければ、それは自分たちに跳ね返って擬似的カウンターに。
このやり方で昨年カルチョを席巻したのが我らがコンテインテル、なんとも皮肉な話です。
一発の怖さがないから、前傾で力強くも余裕のある状態で守られる。
前傾で力強くも余裕のある状態で守られるから、一発の怖さが出せない。
嗚呼、負のスパイラル。
●サレルニターナの戦はなにが違ったのか
スタメンはこちら。
ダヴィデ・ニコラ政権、新生サレルニターナがどんなサッカーをするのかはまだ様子見したいのですが、本試合においてはコッパ・ミラン戦を倣っていた印象を受けました。
✔︎中盤はマンツーで徹底マーク
✔︎左右CBにはボールを持たせてOK、SH(WG)は外切りプレス
ガワはハイプレスです。
データサイトFBrefによれば本節のサレルニターナのアタッキングサードでのプレス回数は48回(プレス総回数の28%)。
サレルニターナのリーグ平均は27.6回(プレス総回数の20%)。
政権交代があるので単純比較はできるものではありませんが、それでも本節はチームのこれまでの歩みからは異端と言えるでしょう。
この人重きの前からプレスで狙うはインテルの中盤と高い位置を取るWBの選択肢を削ぐこと。
左右CBの出しどころをなくすことで、WBをビルドアップのフォローに落とさせる。
インテルの課題である「深さを出せない」をさらに顕在化させる目的です。
しかし、本節は全くハマりませんでした。
主たる要因は2点。
ⅰ)中盤がボールを引き出せた
上記のインテル対策は「中盤が対面を徹底監視し続ける」のが大前提です。
もちろんマークを引き渡すときもありますが、そのジャッジを『監視』に内包されます。
しかし、本節のサレルニターナは叶いませんでした。
サレルニターナの監視役が業務を遂行できなかったのか。
インテル中盤が振り解いたのか。
個人的には両方。
インテルの選手たちの動きが目に見えて良くなったのもありますが、サレルニターナの選手たちも付き切れなかったかなと。
立ち上がりは呑まれましたが、徐々に中盤が持てるようになると主導権はインテル側に偏りました。
ⅱ)ラウタロの復調と変換器の起動
主導権をゴールに昇華した要因に彼らの名前を挙げない訳にはいきません。
僕は試合中にこんなツイートをしました。
最終ラインの裏を狙う意識、ギャップを突く意識。そしてアウトプットに繋がる技術。
素人目で見てもあからさまに1.2月の彼ではありませんでした。
これにはサレルニターナも予想外だったと推察します。
理由は1点目のシーン。
バレッラがボールを引き取り、切り返しでエデルソンを剥がして前を向く。
この瞬間、ドラグシンが最終ラインから飛び出し、結果としてそれがラウタロにスペースを与えることになるのですが、これは「裏には来ないだろう」という判断があったものと見ています。
戦術ボードでの図面、用意できなかったので引用させて頂きます。
つまり、サレルニターナはスカウティングが仇となったのでは?と推察します。
インテルは直前のシーンでもラウタロが裏抜けしており、最終ラインに怖さを与えていました。
失点が決定打となったでしょうか。
サレルニターナはさらに前からプレスがぼやけます。
インテルの変換器は通常起動され、フレキシブルなポジションチェンジも活発になりました。
久しぶりに「THE・シモーネインテル」が見られましたね。
こうなると中々止められないのはシーズン前半で証明してきました。
深さを出す、裏を狙う
サッカーにおいてマスに親しまれる表現ですが、多用される理由は「基本にして奥義」だからでしょう。
監督や選手が入れ替わって、出力の色が変わってもインテルは縦のサッカー。
局地的にひっくり返すことが理想像なので尚更です。
●雑感
サッカーは目に見えないものが多過ぎるので断言なんかできませんが、個人的には一時だけではなく継続的な復調が期待できるような一戦でした。
特にラウタロとジェコは「なぜこの2人なのか?」に100点満点の解答を突き付けることができたでしょう。
ラウカクのようなキャッチーさはありませんが、彼ら2人の”戦術的なコンビネーション”は今のインテルの軸で間違いありません。
あとはこれを本当に継続できるか、が焦点ですね。
CLでベスト8に進むのは非常に難度が高いですが、このタイミングでこのサッカーが出来たことは実に意義深い。
結果はともかく内容を再び示せば、今季終盤まで、いや、来季にも繋がる岐路になり得ます。
そんな大言を発せられるほどに会心でした。
なにより1ヶ月以上、耐えに耐えたので見栄のひとつも張りたくなるのです!!!!!笑
今季のインテルはCL圏内であれば『成功』と呼べる船出をしました。
しかし、航海を進めた今、CL圏内という結果は『及第点』。
現在の順位とサッカーの質を鑑みればスクデットを目指すという目標は口に出さなければいけないと考えます。
過去一を更新し続けるロマンティックセリエA。
今季もインテルがその主役でありますように!
シーズン終盤!FORZA INTER⚫️🔵
最後までご覧頂きましてありがとうございました🐯
もしサポートを頂戴した場合はサッカーのインプットに使用し、アウトプットでお返しできるよう尽力いたします。