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インドの落ち武者

 数年前、中古の真空蒸着機をインドに輸出した会社の社長から相談され、インドのムンバイへ行った。真空蒸着機は真空にした釜の中で材料をレーザーで蒸発させて、釜の内部に設置した物にコーティングをする機械である。メガネのレンズのコーティングなどに使われている。その機械を駆動、監視する中古のソフトウェアを動かせるようにするのが目的だった。GE製で既に販売もメンテナンスもされていないソフトウェアで、ライセンスキーもなかったので動かすことは不可能に見えた。VBで作られていること、データベースにデータが格納されていることはわかったがライセンスキーが無くてはどうしようもならない。機械やソフトウェアがどういうものか把握し、日本からリモートで操作できるようにした。
 そのような理由でインドに行ったのだが、インドの若者たちの髪型がカッコ良かったので、真似をしてみようとインドの路地にあった床屋にふらっと入ってみた。お店は3畳の広さで、椅子は日本の床屋にあるのと同様の人工の革でできた椅子の一席であった。鏡はインドの土埃で汚れており、所々にヒビが入っていた。70歳前後に見える白髪の床屋のおじさんは英語を使えなかった。身振り手振りでなんとなく、どんな髪型にしてほしいのか伝え、髪を切ってもらった。
たしかに、インドの若者の髪型に近いカットなのだけども、私は髪質がインド人と日本人で異なることに気がついていなかった。サイドとバックは刈り上げ、フワフワした厚みのある上部になるはずだったが、サラサラしている髪が上部にさらりと乗っているその髪型は落ち武者化したカッパのようであった。
 床屋のおじさんにいくら払えばいいのか分からなかったのだが、まぁこのくらいだろうと小銭を日本円換算で約200円くらい払ってお店を出た。床屋のおじさんはお金を受け取る瞬間に少しニヤッとしていたのでおそらく払った金額が多かったのだろう。もしくはめちゃくちゃダサい髪型に心の中で笑っていたのかもしれない。
どちらにせよ、私自身も心の中で笑っていた。「猛烈にダセーっwww」と。

 海外に行ったら現地の床屋に入ってみる体験は面白いと思います。ぜひやってみてください(笑)

 日本に戻ってきて自宅でバリカンで坊主にしました。


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