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洗い場に行ったら手ぶらで戻るな

 お昼、焼きそばと豚キムチ炒飯を作った。
いかに段取り良く、料理をして片付けるか考えながら体を動かすのは気持ちがいい。

 昔、チェーン店のとんかつ屋でアルバイトをしていたことがあるのだが、アルバイトを始めた頃に店長に言われた「お皿を洗い場に持っていったら手ぶらで戻るな」という言葉を思い出した。
 調理中に使ったものを業務用の洗浄機に放り込むのだが、洗い終わっているお皿や調理器具を次に使えるように持ち帰らなかったため注意されたのである。
注文が入ってから10分以内に提供するよう求められていたので、効率良く動かないと料理の提供が間に合わなくなるのだ。

 注文が入るとキッチンのメンバーにメニューを伝え、味噌汁とご飯担当は必要なお皿を揃える。必要な肉の枚数を手早く揃え、パン粉を付けてフライヤーに肉を放り込んでゆく。キッチンのメンバーは基本的なフォーメーションでは4名だ。フライヤーでは夏休みの賑やかプールのようにワイワイしている肉を見分けてピックアップし、サクサクサクサクとカツを盛り付けてゆく。「うわ、海老が凍ってるー!」と時間のかかるハプニングが起きると、ピピピっ、ピピピとオーダーリストーが床まで伸びてゆく。肉をフライヤーにポイポイ、侍になった気分で包丁で肉を切捌く。
昼食と夕飯の時間帯はとても忙しかったが、すべての注文を捌き切った時、侍が鞘に刀をしまうかのように包丁をおさめ勝利を確信し、頭の中で「ちょー気持ちいいー!俺たち最強!」とチームスポーツで勝利した選手のような気分を味わっていた。
 
キッチンからお客さんの顔が見えるのだが、美味しそうに笑顔でモリモリ食べていたのは、嬉しかった。
 



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