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Bernsteinのシステム理論

運動制御とエングラム


人がテーブルの上のコップを取る動作を考えたときに、コップまで手を伸ばす軌道は無数に存在しています。しかし、自然な随意運動ではその中でも最適な1つの軌道が選択されます。

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軌道が決まっても、関節の角度の組み合わせは無数に存在しますが、これも最適な1つの組み合わせが選択されます。

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さらに、関節の角度が決まっても、筋肉の張力の組み合わせは無数に存在するはずです。ここでもある1つの組み合わせが選択されます。

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このように随意運動では、多くの自由度を持っている筋骨格系が、中枢神経によって操られ、円滑で、かつ柔らかい運動が実現されています。


このような特徴は、1930年にBernsteinによって指摘されているため、Bernstein問題とも呼ばれています。

Bernsteinによれば、Bernstein問題を解決するために中枢神経は、作用の似たいくつかの筋群が共同して働くシナジー(synergy)を利用しているといわれています。

シナジー(synergy)とは、相乗効果のことで、2つ以上のものなどが、相互に作用し合い、1つの効果や機能を高めることを指します。


シナジーの存在は、複雑な筋骨格系を制御しやすくしていますが、実際の随意運動は、さらに多様性に富んでおり、かつ正確です。

もしも、一つ一つの筋肉への運動指令が脳の中で別々にスイッチされているとすると、多関節の多様な運動を瞬時に行うことはできないはずです。

そこでBernsteinは、運動全体の「抽象的な形」での記憶が脳に蓄えられていると考え、これを「エングラム」と呼びました。

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