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議事録は雑務じゃない。魂込めてやろう

議事録書いてますか?

会社によって文化が180度違うもの、それが議事録だと思います。残さない会社も残す会社もあります。コンサルであればクライアントへの提出資料として、会議時間の数倍かけて議事録を作ることもあると思います。

私は、「議事録はチーム全員で、魂を込めて書くべき」と思っています。会社でも周囲にそう伝え、チームで取り組んできたので、その話を今日は書こうと思います。

議事録は書くべきです。そして質が高くあるべき。

議事録は社内向けであっても最高品質で書くべきである。議事録は社内で一番重要な資料。私はそう考えています。

あまり一般的じゃない、なんなら極端な意見だと思うので、理由をパッと3つ書いていきます。

元の資料では内容が不十分だから、会議がされている

資料には書かれていない、資料だけでは伝わらない。だから会議が実施されているはずです。つまり「資料にないこと」が会議の中で扱われています。

チームで話されたことは、できるだけ資料にすべきです。資料化されなければ、「一部の人だけが知っている情報」が増えて悪さをします。

例えば…
・聞かなきゃわからない情報が増え、知っている人は何度も聞かれてウザいと感じる
・知っている人とそうでない人が生まれ、組織の分断が起きる
・「自分たちしか知らない情報は何か」を覚えている人はまずいないので、新メンバーが入ったときに全然伝わらなくて苦労する

他にもあげればキリがありません。資料化されていない情報があることで、ナレッジマネジメント(組織内の情報流通)が滞り、長い目で見ると大きなダメージとなるので、できるだけ避けるべきと私は考えています。

わざわざ確認されるほど重要だから、話されている

会議資料と議事録、どちらの方が大事か聞かれたら、私は「議事録」と答えます。

資料だけでは意思決定に至らなかった、みんな納得できなかった。だから、会議中に質問されたり反論されたりしているわけです。つまり、意思決定の最後のピースが会議の中にあり、議事録に書き記されるのです。

私は議事録で次の2点を注意深く観察します。
・メンバーそれぞれが何を言ったか、何には反応しなかったか。
・どんな懸念点が誰から出てきたのか。

仕事においては「成果が出るまでちゃんと進みそうか」「途中で思わぬ落とし穴がないか」を把握するのが重要です。成果を出すのは人だし、失敗するのも人。人起因で成否が決まると言えます。だから、議事録に表現される「誰が何を言った」はとても重要な情報なのです。

Slack始めとしたチャットツールが当たり前になってきていますが、それでも重要な話が会議(やタバコ部屋や飲み会)で話されやすいことに変わりはありません。議事録を取りましょう。

議事録が「伝える力をつける」ベストな機会

議事録は読まれるために存在します。読者の代わりに、会議で話されたことを正しく理解して、読みやすく整理したのが議事録です。

「正しくて、読みやすい文章を作る」はスキルが必要です。身につけるには適切なレビューと、繰り返しの鍛錬が欠かせません。

しかし、「読みやすい文章を作る機会」を得るのは難しい。文章はいつでも書いていますが、自分のメモや、数人しか読まない手順書を時間をかけて読みやすくするモチベーションはないでしょう。訓練にはなりますが、メリットが小さいので、人は本気で取り組みません。

一方、議事録は違います。大事な資料なのでたくさんの人に読まれます。丁寧に作れば、読むのにかかる時間が5分減り、100人の組織の場合、500分(約8時間)も削減されます。とても大きなメリットです。

また、読んだ人からきっと「ここ、よくわからなかったので教えて」「この話の詳細ってどこにある?」といったコメントも来るので、読者からの正直なフィードバックを通して、スキルアップもしやすいのが議事録です。

「正しくて読みやすい議事録」を作るのは誰でも難しい

ここまで話してきた通り、議事録作成はメリットだらけ、絶対やるべきです。しかし、議事録をとらない組織もある。それはなぜか。「正しくて読みやすい議事録」を作るのが非常に難しいからです。

このままでは「議事録は作りたいけど、作れない」で終わってしまうので、難しさを分解して、要素ごとに理解していきたいと思います。

テーマに対する広く深い知識がないと話が理解できない

私がセールス時代にやった「朝会の議事録作成」がつらかったので話させてください。

・知らない社名が頻出して、聞き間違う。検索できなくて詰む
・「想定売上数百万円」と言われても凄さがわからない
・「A社の田中さんが〜」と先輩同士が談笑。何が面白いかわからない

どの話が重要なのか分からないので、全部の会話を記録しておくしかない。話の繋がりがわからないから、議事録の構造化ができず会話メモから進化できない。どうしようもなくなって、過去の議事録を真似して、それっぽく構造化して提出して、仕事終了。お粗末な議事録でした。

しかし、2ヶ月もすると自然に議事録がとれるようになってきて、「知識/経験がないと理解ができなくて、議事録をきれいにできないんだな」と感じたのを覚えています。

タイピングが遅いと書き漏らす

遅いの自体は大問題ではありません。インタビューではボイスレコーダーで録音し、後程文字起こしをするのが一般的で、タイピングが遅いことは問題になりません。

普段の会議ではそうもいきません。ボイスレコーダーで録音しても聴く時間がありません。会議中に頑張ってメモを取ることになります。

しかし、タイピングが遅い人が議事録とると致命傷が起きます。特に知識や経験が少ない人が議事録をとった場合、情報の改竄が起きるのです。

タイピングが遅い人は、遅い分を工夫でカバーしようとします。全部書き取るのではなく、要約しながら書き留めたり、キーワードを書き留めたり。このときによく起こるのが、「本人が理解できていないものやよく知らないものが書かれない」という現象です。

「そんなにいうならやってもいいよ」が「やってもいいよ」に書きかわったり、専門用語で確認を取り合った内容がごっそり議事録に書かれなかったりします。

会議では「その場で初めて出る話」も多いので、自然と議事録上での情報改竄が頻繁に起きてしまいます。

発言をそのまま残すだけでは、読める議事録にならない

日本語はハイコンテキストな言語と言われます。ハイコンテキストとは「発言した内容以外の情報も含めて、相手に伝える」ということ。例えば、食事のときに「ん」と言ったら醤油を取ってくれる、これはハイコンテキストな伝え方です。

日本人は察するのを重視してきた民族です。5W1Hどころか主語がなくても文章は成り立つし、言わなくても伝わることをわざわざ聴くのは無粋と言われ、俳句というたった17文字で相手にメッセージを送る文化まであります。

だから、日本人の会議の場合、発言そのままでは議事録になりません。こそあど言葉や指示語を正しく置き換えたとしても伝わりません。「社長が、この時期に、わざわざ言った」という発言時の状況が、発言と一緒になって会議の参加者に伝わっています。

正しく議事録に書き起こすためには、誰も言葉にはしてくれない会議の雰囲気も議事録に表現する必要があります。

言語化力がないと、意味のある文章にならない

社長から「今期は、ROI向上を注力していきましょう」と会議でお達しがありました。議事録にそのまま書いていいのでしょうか?

企業活動は全て「ROI向上を狙っている」と言えます。組織内の活動はReturnを増やすか、コストを下げるかのどちらかには分類されます。だから、社長の言葉をそのまま書いても「じゃあ何をしたらいいんだ」となってしまいます。

実はこのとき社長は言いたかったことは「新しいことを始めるのではなく、すでにやっていることにおいて、低コストでも動かせるように、効率化を狙いましょう。」でした。社長の脳内にイメージしていることはあったけども、うまく表現できず「ROI向上」というそれっぽいシンプルな言葉になっていたのです。

こういった「その表現じゃ、本人が考えていたことは伝わらないよ」という発言はよくあります。察する文化の日本では特に、聞いた側が頑張って想像して補完する傾向にあるので、ちゃんと議事録をとったのに読んでもあんまり意味がないとなりがちです。

当たり前に質の高い議事録が作られる組織にするために

ここまで説明してきた難しさを「気合いで乗り越えろ」というのはちょっと無理な話です。もちろんスーパーマンであればできます。でもそれではずっとは続きません。

だから私は、皆で助け合って議事録を作り、議事録作成を通して成長するを狙っています。ここからは実際にチームでやっていることを話します。

1. 「議事録はちゃんと作らないと。でも難しいんだ」と皆で認識する

一番大事なポイントです。ここまで書いてきた話を、チームでします。

議事録作成は重労働です。誰もがサボりたい業務です。皆で協力し合わなければ続かないですし、誰か一人がサボり始めるとチームに亀裂が入ります。議事録は作る時点では、まだ会議の内容を覚えているので「正しく、わかりやすく書く」ことのメリットを感じにくいのも難しいポイントです。

だから、「皆でやろう」「どうせやらないといけないなら工夫しよう。苦痛が少ない、楽しいところもある仕事にしよう」という雰囲気にならないと続きません。

全ての取り組みは、モチベーションありきです。丁寧に時間をかけて、まずは「頑張りたい」という気持ちを作りましょう。

2. 議事録作成を新メンバーの唯一の業務にする

知識・経験がないと会議の理解ができない。だからこそ新しく入ったメンバーにやってもらいましょう。

知識がある側は「知識がない側が何を知らないか。何を伝えたらわかるようになるか」がわかりません。だから、既存メンバーがレクチャーをしたり資料を渡したりしても、新メンバーがキャッチアップするのに最短じゃないことが多いです。

だから、議事録を作る中で「自分がわからないこと」に気づいてもらいましょう。議事録をきっかけに情報を知っていくから、チームで働く上で必要な知識がどれだけ多くても、明日使える知識からインプットすることができます。

また、議事録作成のモチベーションも続きやすいです。既存メンバーからすると「すでにわかっていることをきれいに整える時間」ですが、新メンバーからすると「議事録を作りながら、新しいことを深く知る時間」になります。楽しい時間です。

このとき注意です。新メンバーが議事録をとる場合とても時間がかかるので、他の業務と一緒にさせないようにしましょう。新メンバーはチームの一員と早く認められたくて、価値を出したくてうずうずしています。議事録以外の仕事を持ってしまうと、議事録を適当に作ってしまいがちです。

3. 発言者に、発言内容を自分で修正してもらう

日本人の発言はハイコンテキストで、そのままだと意味がない文章になりやすいです。だから補足したり、自分なりに言語化したりするのが欠かせません。

しかし、他人の発言に修正を入れるのはとてもやりづらいアクションです。私にはこう聞こえましたと伝えることで、相手に「ちゃんと聞いてくれてないじゃないか」「その意味合いで言ってないよ!」「そう読み取るのか頭悪いなあ」と思われるんじゃないかと大変不安になります。だから、放っておくと、会議の発言をそのまま記載した議事録が量産されます。

そうはならないように、発言者に最後修正をしてもらいましょう。2つメリットがあります。
・自分の意図しない伝わり方をしないように直せる
・自分の発言が、他人にどう受け取られるのかを知ることができる

読んでもらうための文章は「意図通りに伝わる」のが大事です。だからこそ、「私は、発言内容をこう捉えました」を伝えたのをきっかけに、「自分の言葉は相手にどう伝わるのか」をお互いに理解しましょう。

「発言の修正」はチーム内のコミュニケーションを見直すチャンスです。特にマネージャーの場合、「部下に意図通りに伝わっているか?」を知る機会は皆無だと思います。議事録作りはマネジメント力を上げる良い機会です。

4. 議事録を作りながら会議をする

ここまでで話したことを、全部、会議中にやりましょう。

私は「後で議事録を作る」を全力で避けます。会議では、必ず議事録を画面共有します。議事録のスピードに合わせてゆっくり発言します。議事録作りを待っている余裕がないときは、自分の発言を議事録に直接書き込みます。

「一人でやる議事録作り」は基本楽しくなりません。しんどい。だから負担を皆で減らしたほうがいいと思います。

そして実は…議事録を作りながら会議をするメリットもあります。
・自分の発言がどう伝わったかをすぐ確認できる
・わからないことをその場で確認できる

自分の発言がどう伝わったかをすぐ確認できて最高です。間違って伝わったり、知識がなくてわからなかったりすると、それから先の話は理解できません。だから「ここまでOK?ついて来れている?」を都度確認すべきです。会議で話せる量が減って一見生産性が下がったように見えますが、置いていかれる人が減るので、逆に生産性が上がります。

わからないことをその場で確認できるのもメリットです。本当は自分から「わかりません」と質問してほしいところですが、難しいです。議事録作りを新メンバーに任せれば、わからないところで手が止まったり、聞き間違いが発生したりします。社内知識は会議のメンバーに聞かないとわからないので、宿題として持って帰らせず、その場で教えてしまうのが理想です。

私は議事録取得にScrapboxを使うことが多いです。ここまでに書いたテクニックがそのまま使えるお気に入りのツールです。

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございます。「議事録は魂を込めて書くべき」と思ったら、5,000字近く書いていました。長文ですみません。

今回お伝えしたのは議事録でしたが、レビューや会議やチャットの送り方など、普段当たり前にやっていることこそ、「なぜやるべきか」「どこまで質高くやるべきか」を考えてみてほしいという裏メッセージもありました。

私の意見をもとに、「私たちの組織では議事録は書くべきか」が議論されるととても嬉しいです。

今日の元記事は以下のScrapboxです。(メッセージは同じはずなのに、noteに書いてみたら結構違う文章になるので面白かったです)




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