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習近平主席が肝いりの「第二首都構想」が暗礁に?~河北省「雄安新区」プロジェクトに”巨大廃墟化”の兆し


【画像① ここ数年、習近平指導部は各地の大規模不動産開発の頓挫による経済成長の鈍化に頭を痛めるようになっている。中国共産党主導の新街区・大型マンション建設はこれまで”経済成長のエンジン”とされたが、無理を重ねた投資の破綻で最大企業の恒大集団が破産するなど、従来型開発路線が行き詰まっており、打開策を見いだせていない。】



◆首都機能集中による慢性的交通渋滞、大気汚染、行政サービス劣化の北京市の機能分散を目途とした「第二首都構想」


このところ大規模不動産開発の失敗、集合住宅過剰供給と裏腹に販売したマンションの引き渡し途絶など、都市開発で大混乱を来し、経済的不振も広がっている中国だが、いまひとつ最高指導者・習近平国家主席が旗振りをした国家的大型プロジェクトが暗礁に乗り上げようとしている。2017年2月に「1000年の大計・国家の大事」とのスローガンの下に持ち上げられた「第二首都構想」だ。


この構想が浮上したのは、あまりに官民の機能集中と過度の開発で首都北京が慢性的交通渋滞や高層ビル乱立、人口集中で大気汚染、環境悪化が深刻化し、首都として機能不全を起こしつつも改善見通しが立たないためだ。首都機能の一部移転をはかる先として、習近平指導部が白羽の矢を立てたのは、北京市南方100kmにある河北省雄安市だ。


「第二首都構想」では、農村部の広がる雄安市周辺で最初に短期プロジェクトとして100平方km、中期プロジェクトでは200平方kmの総合的な新都市開発を行い、これを最終的には2000平方kmまで広げるものとなっている。既に高速鉄道延伸も図られる雄安新駅などが建設され、新しいビル群が数多く建てられてきた。


開発された雄安市の新開発区(雄安新区)には、北京市や天津市にある大学などの教育・研究機関が部分移転され、国務院各部(政府省庁)の機能移転も図られるとされる。




【画像② 中国の首都北京の大気汚染は深刻で、晴れの日でも薄曇りで霧(実際はスモッグ)が一帯を覆い、高層建築の姿もぼやけるほどだ。】



◆習近平氏による鄧小平、江沢民両氏による「経済新区」開発に続く「第三の国家的新区」として歴史的成果をめざすが…ひろがる巨大な”無人都市”

 

習近平氏は「雄安新区」プロジェクトを、中国共産党と国家の最高指導者としての名を歴史にしっかり刻みつけるためのキモの事業と位置づけ、意気込んできたという。中国外交筋はこう語る。



「習氏の前の”歴史に残る前任者”たち、たとえば『改革・開放』路線を進めた鄧小平氏はその目玉として広東省深圳経済特区をつくり、市場経済への転換と急速な成長への道を切り拓き、その後を引き継いだ江沢民氏は出身地の上海浦東新区開発で、上海をあらためて世界的な経済センターの1つに押し上げた。習氏もこれに匹敵する歴史的事績を残したいと考え、『雄安新区』プロジェクトを打ち上げたが、その手法は弾け始めたバブルの中で明らかになった大規模不動産開発のやり方そのもので、お世辞にも成功しそうにない。現実に、概成した新開発区には見込まれていた政府機関や大学研究機関の移転はまったく進まず、職場がないことから移住もなく、巨大な”無人都市”がひろがるだけの状態だ」




【画像③ 既に「雄安新区」には、多数の高層マンションが完成している。しかし、ほぼ無人状態のまま推移している。】



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