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話題のプーチン・インタビューは、「トランプ接近」を示すか? ドイツでも身に引き寄せた反応


【画像① 米国の元FOXテレビ司会者、タッカー・カールソン氏は2月6日、ロシアのプーチン大統領にインタビューを行い、その内容を自身のSNSアカウントで公開した。その全容は、近くSNSなどで有志により翻訳配信されるだろう。日本のメディアは概要を一部伝える以外、その全容を翻訳公開する気などさらさら無いようだ。】



◆「ロシアは22年に戦争を始めたのではない。ロシアの目標は彼らが14年に始めた戦争を終わらせることだ」~プーチン大統領


ネット界隈では、2月6日に行われた米トランプ前大統領と近いと言われる元FOXニュース司会者、タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領へのインタビューが話題だ。しかし、新聞や既存メディア、我が国のオールド・メディアによる取り上げは、まったく平板だ。わずかに産経新聞だけが、内容を踏み込んで書いている方だ。



「ロシアのプーチン大統領は米FOXニュースの元看板司会者、タッカー・カールソン氏のインタビューに応じ、露大統領府が9日、内容を公開した。プーチン氏はウクライナ侵略に関し、ロシア系住民を迫害してきたウクライナの「ネオナチ思想」を根絶するための戦いだとして改めて正当化した。また、『ロシアをだましてきた』と米国や欧州諸国を非難した」


「ウクライナ侵略の開始後、プーチン氏が欧米側メディア関係者の単独インタビューに応じたのは初めて。ペスコフ露大統領報道官はインタビュー要請を受け入れた理由について『カールソン氏の立場は他の欧米メディアとは異なるためだ』と説明した。カールソン氏は米大統領への返り咲きを狙うトランプ前大統領に近いとされる」


「プーチン氏は、ウクライナは歴史的にロシアの一地域にすぎなかったが、旧ソ連草創期にソ連指導部がウクライナにロシア領土を分け与え、国家として成立させたと主張。1991年のソ連崩壊時にウクライナは領土を保持したまま独立したが、ロシアがそれを認めたのは両国の良好な関係が続くことを前提としていたとした」


「プーチン氏はその上で、ソ連崩壊後のロシアは欧米側の一員として迎え入れられることを期待していたが、そうはならなかったと指摘。反対に欧米側はロシアとの約束を破って北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を進め、ウクライナまで将来的に加盟させようとしたと述べた。さらに米国に対し、2014年のウクライナ政変を主導して当時の親露派政権を『違法クーデター』で崩壊させたと非難した」

「プーチン氏は、新たに樹立されたウクライナの親欧米派政権が、政変に反発してウクライナ東部で蜂起したロシア系住民を攻撃し、ウクライナ東部紛争を引き起こしたと一方的に主張。ウクライナは東部紛争の解決策を定めた合意も履行しなかったとし、『ロシアは22年に戦争を始めたのではない。ロシアの目標は彼らが14年に始めた戦争を終わらせることだ』と従来の主張を展開した」

(参考)「プーチン氏、侵略を改めて正当化 『ロシアだました』と欧米を批判 米元司会者のインタビューに」2024/2/10 産経新聞・MSNニュース

https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%B3%E6%B0%8F-%E4%BE%B5%E7%95%A5%E3%82%92%E6%94%B9%E3%82%81%E3%81%A6%E6%AD%A3%E5%BD%93%E5%8C%96-%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%A0%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F-%E3%81%A8%E6%AC%A7%E7%B1%B3%E3%82%92%E6%89%B9%E5%88%A4-%E7%B1%B3%E5%85%83%E5%8F%B8%E4%BC%9A%E8%80%85%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%81%AB/ar-BB1i3FGP


いずれにしろ、この内容だけではなぜ、今プーチン氏がタッカー・カールソン氏のインタビューに応じたのかというタイミング、意味が読者には伝わらないだろう。今年に入り、11月の大統領選に向けた動きがさまざまな形で熾烈になっている米国では、共和党が有利になった議会で「ウクライナ支援」予算の積み増しが拒否され、バイデン政権によるゼレンスキー政権への軍事支援は手詰まりになってしまった。一方で、トランプ前大統領は11月出馬を視野に入れながら、「ウクライナから手を引け」と声高に叫んでいる。




【画像② 保守系メディア人の代表格だったタッカー・カールソン氏(左)は、トランプ前大統領(右)と極めて近い、「否、側近だ」とまで言われる人物である。この度のプーチン氏に対するインタビューも事前にトランプ氏が相談にあずかっていた可能性はあるだろう。「ウクライナ支援」策で行き詰まったバイデン大統領を更に追い詰める上で、絶好のタイミングだった。】


プーチン氏にすれば、トランプ氏に近いといわれるカールソン氏を通じて米国はもとより、西側諸国に向けて改めて現在のスタンスを発信することは、最も効果的な揺さぶりになるのは間違いない。そして、米英の不手際の後始末を積極的に引き受けることしか頭にない岸田文雄政権の日本以外は、案外このアピールについて、身に引き寄せて考えている。



(参考映像)「タッカー・カールソンによるウラジーミル・プーチン氏インタビュー」2024/2/9 Tucker Carlson ※インタビュアー、タッカー・カールソン氏のYouTubeチャンネルで配信された全インタビュー、英語吹替版

https://youtu.be/fOCWBhuDdDo?si=R8hvXzio-rlDBsG-



◆プーチン氏の自国へのメッセージを読み解くドイツ紙


ベルリナー・ツァイトリング紙は、2月9日付記事でカールソン氏によるプーチン・インタビューを取り上げている。記事のタイトルは「ドイツ人は無能」という言葉を含んだかなり刺激的なもので、上記の産経新聞のタイトルにあるような「侵略を改めて正当化」というような一種”上から目線”的な評価を差し入れたものとは対照的である。




【画像③ 西側諸国による「ウクライナ支援」が開始された当初、「非殺傷の装備のみ提供」とかなり及び腰だったドイツ左派リベラル政権のオラフ・ショルツ首相は、2023年までに西側諸国で最も大量の兵器をウクライナに供給することになるまでに路線を変更してきた。しかし、いまや昨年夏以来のウクライナ軍の反攻作戦が完全に失敗し、敗色が濃くなっているものとで、どのように”足抜け”しながらエネルギー資源の有力な輸入先であるロシアとの関係改善の道筋をつけるかに腐心をしているという。】


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