【全文翻訳】プーチン大統領「ロシアを戦略的に敗北させようとする試みに日本が加わると表明したことは、平和条約交渉の継続にとって障害にならないとお考えなのでしょうか？」～日本との領土・平和条約締結交渉について現状で対話継続不能に言及（６月５日）
◆共同通信記者の質問に答えたプーチン大統領
６月５日、国際経済フォーラムが開催中のサンクト・ペテルブルクでプーチン大統領が海外主要メディア記者（幹部含む）との会見に応じた。その場で、共同通信（沢井俊光常務理事）の質問に対する応答の中で、領土・平和条約交渉や北朝鮮との関係深化について語った。しかし、日本メディアの報道はその応答について、もっぱらウクライナ戦争で日本側がウクライナ側についたことによって日露交渉が阻害されているとの認識についてのみ、クローズアップしている。
「ロシアのプーチン大統領は５日、露西部サンクトペテルブルクで各国の通信社と会見した。露大統領府の発表によると、プーチン氏は日本との北方領土問題を含む平和条約交渉について、ロシアが侵略するウクライナに対する日本の支援を理由に『交渉を続ける状況ではない』と述べた」
「プーチン氏は『日本側が（交渉を）再開できる状況を作る必要がある』と主張した。現時点で北方領土を訪れる計画はないとしたが、『ロシアが主権を持つ領土であり、訪問しない理由はない』と含みを持たせた。…ロシアは２０２２年３月、ウクライナ侵略を受けて対露制裁を発動した日本への報復として、平和条約締結に向けた交渉の中断を発表。北方領土問題を含め日露間の対話は停滞している」
「また、プーチン氏は会見で、ウクライナ侵略で核兵器を使用する可能性に言及し、ウクライナを支援する米欧を威嚇した。プーチン氏『なぜか西側諸国はロシアが（核兵器を）使用しないと信じている』と指摘した上で、ロシアの主権や領土が脅かされた場合には『あらゆる手段を用いることができる』と強調した。…会見にはＡＰ通信やロイター通信、中国の新華社通信、日本の共同通信社などの編集幹部らが出席した」
(参考)「北方領土問題、プーチン氏『交渉続ける状況ではない』…日本のウクライナ支援を理由に」2024/06/06 読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240606-OYT1T50160/
しかし、案の定で共同通信そのものを含め、プーチン大統領がこれまでの日露間の交渉の到達点を総括的に述べたことや、自身の北方領土訪問の可能性をめぐる問題についての言及など重要な部分がほとんど記事から省かれている。そこで、ロシア大統領府公式サイトに掲載された共同通信と大統領のやりとり部分について、その全てを訳出して読者に提供することとした。
◆共同通信（沢井俊光氏）によるプーチン大統領への質問～「北朝鮮との軍事協力の強化」「領土問題と４島への訪問意思」「元島民の墓参再開」について
ロシアの公式サイト（「各国主要メディアとの会合」2024年6月5日 23：15（モスクワ時間）
サンクトペテルブルグhttp://www.kremlin.ru/events/president/news/74223）にプーチン大統領の応答がロシア文で掲載されているが、共同通信の沢井記者による質問については、サイトに掲載された動画のロシア語同時通訳の内容から訳出した。
（沢井氏／ロシア語同時通訳からの日本語訳）
プーチン大統領、このような貴重な質問の機会を本日はいただきまして、誠にありがとうございます。
現在、極東地域において、日本にとって懸念となる動きがとても多くございます。第一に、ロシアとの領土問題です。またロシアが北朝鮮との軍事協力を強化していることもあります。この二つの問題に日本は直面しております。
領土問題に関しての質問ですが、今年ハバロフスクにて大統領は、四島を必ず訪問されると発言されました。すでに具体的な日程は決まっているのでしょうか。現在、交渉は停止していますが、もし四島訪問となった場合、両国関係にさらなる打撃を与えることにはならないでしょうか。お考えをお聞かせください。
日露交渉とその再開の見通しについて、ウクライナでの特別軍事作戦の間、交渉は停止されました。元島民遺族によるお墓詣りが再開される可能性はありますでしょうか。
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