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福島第一原発「処理水放出」をめぐる中国の批判キャンペーンで露呈した中国共産党”五毛党”動員のしくみ~”越境抗議電話”やSNS大量投稿の裏で…

◆前代未聞の”越境抗議電話”~ラーメン屋に「汚染水でラーメン作れ」とまで…

東京電力福島第一原発のALPS処理水海洋放出が始まって1週間のあいだに全国で数十万件もの迷惑電話やSNSへの否定的な書き込みが中国から”越境”してかけられたことが判明している。報道などのデータをまとめると、8月24日からの1週間で東京都庁には3万4千件、東電本社に1万件以上の”抗議”あるいは”嫌がらせ”の電話が中国から入ったとされている。地方自治体や公共施設の他、民間の飲食店舗にも被害が及んでいる。


「福島市は(8月)24日から4日間、市庁や小学校・中学校などの公共機関に約770件の迷惑電話がかかってきたと明らかにした。このうち761件が中国の国家番号『86』からかかってきた。…電話件数は汚染水放流の翌日である25日が405件で最も多く、26日227件、27日87件など次第に減少する傾向を示している」

「福島県内の旅館やサービスエリア、病院や薬局などにも嫌がらせの電話が相次いでいる。…中国SNSでは日本政府機関や放送局などに電話をかけて『(汚染水が)きれいならばお前が飲んでみろ』『なぜ汚染水を海に捨てるのか』と抗議する姿を撮影して投稿する動画が多数掲示されるなど迷惑電話が流行のように広がっている。…ある中国人はNHK放送局に電話をかけて翻訳機やTTS(text to speech)機能を利用して『あなたは昨日、処理水を飲んだか。おいしかったか』と尋ねる映像をショートムービーシェアプラットフォーム『TikTok』に投稿するなどした。

「レストランにも迷惑電話が相次ぎ、東京・浅草のあるラーメン店にかかってきた電話だけで約1000件に達すると現地メディアは報じた。…ANNニュースが埼玉県のラーメン店にかかってきた番号に掛け直し、電話をかけてきた理由を尋ねると、相手は『汚染水でラーメンを作ってくれたらと思って電話した』と答えた。

(参考)「東京電力に中国からの嫌がらせ電話6000件…ラーメン屋には「汚染水でラーメン作れ」」2023/8/29 中央日報(韓国、日本語版)
https://s.japanese.joins.com/JArticle/308338?sectcode=A00&servcode=A00


【画像① 日本に向けて「なぜ核汚染水を海に捨てるんだ」と抗議の電話をする中国の若者 中国SNSより】



この事態に政府も遺憾だとして、中国側に対処を求めざるを得なかった。外務省の岡野正敬事務次官は、中国の呉江浩駐日大使を呼び出し、迷惑電話への懸念を伝えて中国側の対応を求めたが、呉大使はむしろ「在日中国大使館にも日本国内から大量の迷惑電話がかかってきている」と主張。「中国の大使館や領事館、在日機関、企業、公民および中国人観光客の身の安全を保証してほしい」と嘯いたとのことだ。

多くのメディアや発信者が指摘しているから繰り返さないが、原発関連の海洋放水は中国や韓国の方が日本をはるかに上回って実施してきている。日本は「汚染水」を放出するわけではなく、処理した上で残留放射性物質は国際基準をはるかに下回る値での放水なのだ。しかし、国内で共産党など野党の一部が中国などの尻馬に乗り、「汚染水を放出するな」のキャンペーンを展開しているのには、呆れざるを得ない。


◆反「汚染水」キャンペーンで馬脚? 明確な組織工作の痕跡が…

中国共産党は過去、日本政府を攻撃する際、しばしば大衆感情を煽って抗議行動やデモを展開させる手法をとってきた。小泉純一郎首相の「靖國」参拝をめぐる抗議デモ(2005年)や尖閣諸島の一部国有化をめぐる「反日暴動」(2012年)などは、いずれも私は当時北京で状況を観察したが、当初は党側から統制のとれる学生などが抗議をはじめ、やがて労働者(下層の農民工などが中心)や都市貧民にまで興奮が広がると「反日」にかこつけた打ちこわしや店舗略奪の暴動に発展し、通行中の日本製乗用車を破壊したり、乗っていた人(中国人だが)に危害を加えるといったヒステリックな状況にまで行き着くといったコントロールの効かない事態となるのがパターンだった。

今回のSNSや電話を通じた”抗議”も、一部で”愉快犯”的な広がりを青年や市民の間で見せ、都市部の日本人学校や日本在外公館が投石されるという事態が見られたが、実はそうしたことは例外的で多くの動きが実に統制のとれていることを伺わせるものだったことが明らかになった。


【画像② 「対日開戦」を叫ぶ中国での反日デモ隊。偏った中国共産党による「愛国教育」が一部民衆の歪んだ反日意識を育んでおり、党の扇動工作としてこうしたデモが組織されることがしばしばだ。しかし、これが中国社会に沈殿する「貧富格差拡大」や「汚職蔓延」に対する不満に引火し、「反日無罪」を看板にした事実上の反中共政府暴動に発展することもあるから皮肉だ】




従来から、ネット書き込みで中国共産党側のキャンペーンを広げたり、日本や関係機関、企業などに対する攻撃を集中させたりという、一種のサイバー攻撃を担う”五毛党”(一回の書き込みで報酬が五毛=五角(0.5元)が支払われるとされることが名づけられたグループ)が暗躍していると言われてきた。今回の処理水放出への”越境抗議”キャンペーンを分析する中でその指揮体系が浮かび上がることになった。

中国の”五毛党”工作黒幕は、中国共産党中央宣伝部であるが、その責任者は習近平主席の十数年来の側近・部下と言われる李書磊(りしょらい)政治局員だ。彼こそが、中国国内メディアの思想統制と共に通信(ネット、電話等)、SNSなどを駆使した宣伝・組織工作の統括的指揮に責任を負っており、 1000万人以上いるといわれる”五毛党”も彼の傘下にあると見てよい。

問題は、”五毛党”を動かす際の指揮系統や手法だ。


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