一献の酒のお伽を考える 第一夜

光月おでんを知っている方も、知らない方も。彼の辞世の句です。

「一献の酒のお伽になればよし 煮えてなんぼのおでんに候」

さてこの「酒のお伽」というフレーズが素敵な響きだと感じ、僭越ながら自分の中で「酒のお伽考」を少し書いてみます。

酒のお伽なので、単純に肴、アテ。とくると居酒屋メニューもちらほら頭をよぎります。肉に海鮮、野菜から乾物。刺身に焼物、煮物や揚げ物。素材から調理法にまでカテゴライズすると終わりが見えません。そこで今回は、控えめながらも幅広いカテゴリー「漬物」に着眼してみようと思います。

先にお断りしておきますが、総じて食事には好みがあります。何が良いかは個人差であることを忘れずにお読みくださいね。



漬物が好き。

愛しているとは言わないまでも。

酒の存在を知らない子どもの頃から。漬かった野菜や山菜で、飯を頬張る幸せが。両親や祖母達の薦めるままに。やがて酒を知り、好みの漬物は飯の供からお伽へ。

お酒は清酒に限らず、633の瓶ビールでも。鬼の9%檸檬堂でも。ハイボールや黒霧赤霧でも。なんでもありのフリースタイルだったとしても、今から誉めるお漬物さん達の優秀な事。

ランキング形式にはあえてせずに。

1、米どころ新潟より、越後の味噌漬け。鼈甲色に輝く生姜の味噌漬けは秀逸。もともと新潟在住の際に水茄子や胡瓜の浅漬けやカラシ漬けも頂いた事があったのだが、この生姜の味噌漬けはそれらをあっけなく追い抜いて、素材の良さを引き出された旨味のポテンシャルは抜群の美味しさだと。その証拠に色々な野菜のアソートverだけで無く、生姜オンリーのパッケージが大々的に販売されています。お通し先発隊としても、中盤の箸休めとしても重宝される事間違いなしと考えます。勿論締めに飯の供として、また茶漬けとしても、良い仕事をしてくれます。この味噌漬けを知る前までは、白菜の浅漬け(柚子入り)のお新香が好きでしたが、味噌漬けとの出会いによって未知なる漬物ワールドの深淵へと向かってしまいました。

もう後には戻れません。

2、東北は秋田の雄、いぶりがっこ。

お伽というフレーズは女性的に感じますが、いぶりがっこは女性的か男性的かと論ずるに、やはりあの燻された強さはほぼ男性的ではないかなと。女性であるならば全盛期の和田アキ子さんや霊長類最強の女子くらいのオーラを纏っているように感じます。性別に重きをおく話ではないので、ただただ強さというか個性というか、味もクセも非常に強いのに、クリームチーズと相性が良かったり、タルタルソースになった時の格別さもまた、持ち合わせているポテンシャルの凄さを感じてしまいます。お伽メンバーとしては、先の味噌漬けよりも強烈な個性ですが、燻製好きにはたまらない中毒性とリピート率をたたき出してしまう逸品です。

3、漬物界のヨン様、ご存知キムチ。

あぁまた男性。でもチェジウでもなく、韓流アイドルではなく、やはり知名度や愛され度的にはヨン様がしっくりくるんじゃないかな。万人受けしてて、みんな好き。this is 韓国のお漬物ですよね。カクテキやナムルもお伽メンバーには入れないのかと論ずることも考えましたが、今回はヨン様オンリーでのメンバー発表とさせて頂きます。炒飯にしてもいい。鍋にも入れる的なわが国ではもはやキムチは漬物ではなく材料や味のカテゴリにも大枠になっていると思います。本番韓国の酸味の強いがそこまで辛くないものから、国内製造の日本人好みに味付けされたものまで、漬物界では売れ筋の上位に入るサラブレッドでしょう。やっぱりヨン様は人気者ですからね。比べて負けたお漬物が後を絶たない。そんな最強の大陸のお漬物です。

4、山菜からやってきた乃木坂なやつ、わらびの醤油漬け

そんなに個性が強くないと思いきや、食べ始めるとハマる感じ。春を感じる季節性とあっさりなのにたまり醤油などで漬かった旨味のしゅんだ淡白だけど芯のある味は、柴漬けほどの実家感というか安定感ではないにせよ、叙々に山菜からの魔法にかかり、押してしまう漬物です。濃い味漬けで個性を主張はしないので、おこわなどでよく使われるが、実はお伽メンバーとしては優秀な逸品です。

5、その他。惜しくも今回の第一夜メンバーに入らなかったものは多数。沢庵やべったら漬け、奈良漬けや京風のお漬物。信州の野沢菜漬け。福岡の高菜漬け。etc

また松前漬けやルイベ漬けは入らないのか?と海鮮素材の漬け料理も一瞬、お伽メンバーに入れようかとも考えましたが、あくまで野菜や山菜をと思い直したまでです。ただし分類する必要性は自分次第なので、第二夜を書く際に、生姜の甘酢漬け(いわゆるガリ)も考えてみようと思います。

お酒があって、これがあればいい。八代亜紀さんの島唄じゃないけど、お伽考察の夜はまだまだ。つづく。

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