見出し画像

僕が助成金をもらえない理由

中小企業を応援するための「助成金」や「補助金」を国や自治体では数え切れないほど用意してくれています。

それらはもちろん皆さんの税金が使われています。

税金を使う目的は、企業の成長を促し、雇用を促進し、経済を活性化し、そして税収を増やすことでしょう。
でも、本当に必要な企業に届いていなかったり税金のムダ使いになってるんじゃないかと感じることがあり、どうしても改善して欲しいので、今回の記事を書きました。

インスタコードは助成金をもらえない?

例えば東京都では、中小企業の「ものづくり」や「販路拡大」に必要な費用の 1/2~2/3にあたる 10万円~3000万円を東京都が負担してくれるという太っ腹な助成金が何十種類もあります。

しかしInstaChord株式会社は今までどれにも採択されたことがありません

でも別に当社の事業が箸にも棒にもかからないわけじゃないんです。

東京都が行なっている「事業可能性評価事業」では厳しい審査をクリアして「事業可能性あり」と認められていますし、革新的で将来性のある製品を表彰する「世界発信コンペティション」では特別賞を受賞し賞金をいただきました。

それなのに、助成金はもらえないんです。

というより、対象になりそうな助成金に申請すらできず、いつも悔しい思いをしています。

せっかく東京都が「いいね」って言ってくれた事業なのに、中小企業の成長のために注ぎ込んでいる税金の恩恵には預かることができない。
それっておかしくないですか?

…というお話を書きますが、これは苦情でも文句でもありません
ちょっとだけ提案したいことがあるだけです。

なぜ助成金がもらえない?

では、なぜ今まで助成金がもらえなかったのでしょう?
その一番の要因は、行政の助成金事業がベンチャー企業のスピード感に合ってないということです。

税金でコストの半額を負担してくれる

東京都が実施している「規格認証費」の助成金を例にお話します。

インスタコードは今のところ日本でしか販売できません。
なぜなら、電子機器を販売するには、国それぞれに安全性や安定性などの規格基準があり、その認証を取得しないといけないからです。各国の規格認証を取得するには、国ごとに百万円程度の費用がかかるんですが、東京都では認証取得の費用の半額(50%)を負担してくれる助成金があります。

ちなみに日本は世界でも特に基準がゆるい国なので、わりと簡単に販売開始できます。

そこで、1番ゆるい日本でマーケティングテストを行なって、本当に売れることが証明できたら認証を取って世界展開する。…というステップを踏む計画でした。

発売から1年半を経て日本では売れることが分かり、海外の展示会に出展しても大好評だったので、いよいよ海外展開!

しかし調べてみると、助成金をもらえないことが判明したんです。

もちろん審査があるので採択されるかどうかは分かりませんが、問題は、そもそも申請すらできないという点です。
なぜなら、着手し始めたときには募集期間が終わっていたからです。

9ヶ月後まで製造できない

展示会が終わり海外展開を決定したのは5月でした。
それから試験を行ない製造開始すれば、12月末までには製品が完成します。

しかし、この助成金は
出願期間が8月の1ヶ月間のみ
助成対象になる費用は、翌年2月以降に使ったものだけ
と決まっています。

つまり、助成金をもらうには、来年の2月まで製造・販売しちゃいけないということ。

ということは、この助成金を受けるなら前年の10月に申請してないといけなかったわけです。しかも助成金の性質上、10月に申請しても対象期間の翌年2月までは着手してはいけないというルールがあります。

このように多くの助成金は

  • 申請できるのは1年のうち約1ヶ月間だけ

  • その後2~3ヶ月審査を行ない

  • 審査結果が出るまでは着手してはいけない

というルールがあるので、せっかく良いアイディアを思いついても、すぐ着手しちゃうと助成金の対象にはならないんです。

う~ん、ごめんなさい!
私はそんな計画的に事業を進められませんでした!

思い立ったらすぐ調査して開発に着手しましたし。発売後もユーザーの皆さんからのフィードバックに素早く対応して、必要な改良はすぐ着手して一刻も早く製品に反映できるよう努力しています。
そんなスピード感のベンチャー企業に、これらの助成金の仕組みは合わないと思うんですよね。

もらった助成金もあります

でも、特許、意匠登録など、知的財産に関する助成金はいくつも採択されています。

どうして、これらの助成金を申請できたのかというと、申請時より以前に使った費用も助成の対象になるからです。

例えば東京都の「外国特許出願費用助成金」は数百万円の費用の半額を負担してもらえるのでとても助かっているのですが

申請期間は5月と10月
対象期間はその年の4月から約3年間

なので、例えば6月にアイディアを思いついて、特許出願の準備を始めても、10月に申請すればその費用が全て助成金の対象になるんです。

助成金の対象期間を遡れれば

このように多くの助成金が申請日より前に着手した経費も対象だったら、もっと使いやすくなるのに・・・と常々思っているのですが、実は良い方向に変わりつつあります。

例えば、コロナで苦しんでいる飲食事業者向けの、テイクアウトなどに業態転換する費用に対する助成金が良い例です。
もともとは審査が決定する以前に着手した費用は対象外でしたが、その後改善されて、申請時にすでに支払っている経費も助成金の対象になることになりました。

数年前の費用を助成対象にできないでしょうか?

上記のように、対象期間が遡れる助成金が増えていくのはとても良いことだと思いますが、年度をまたいだ過去に使った費用は対象になりません

でも、これらの助成金を、数年前とか、せめて前年度までさかのぼって対象にすることはできないのでしょうか?

成功するかどうか分からない事業に助成するよりも

新製品の開発なんて計画通り進まないことはよくあります。
厳正な審査を通過して助成金が交付されたとしても、その後軌道に乗らなかったり、事業に失敗するケースも少なくないはずです。

経済の発展を促すための貴重な税金なのに、こんなギャンブル的な使い方をしても良いのでしょうか?

だったら、成功するかどうか分からないものに税金を注ぎ込むよりも、ある程度結果を見て、今後成長する可能性が高い事業に税金を使ったほうが、経済の発展に寄与するのではないでしょうか?

レース前に馬券を買うより、第3コーナーを回ったところで馬券を買ったほうが当たる確率は高いじゃないですかw

なんでこんな事を言うのかというと、私が今苦しい思いをしているからです。

(やっぱり愚痴なのかなぁ…)

インスタコードの事業は、助成金に頼らずなんとか製品化にこぎ着けました。しかし生産のたびに数千万円単位の費用が必要になるため、事業が拡大すればするほど資金繰りに苦労します。

結局、売れることが分かっていても、資金不足のため先を見越した生産ができず、数カ月の納品待ちで売り逃すということもありました。

東京都には、見込みのある新製品の研究開発費の2分の1を、1500万円以内で負担してくれる助成金がありますが、もちろん申請できませんでした。
もし初期ロットの生産を終えた後、それまでに費やした2000万円近い研究開発費を含めて助成を受けることができれば、その後もっとスピード感を持って事業を拡大できたはずです。

「成功するかどうか分からない」からこそ「行政の助け」が必要なんじゃない?という声もあるかもしれませんが、そもそも助成金は、事業が完了したあと支払われる仕組みなので、必要な資金はどっちみち自前で調達しないといけないんですよね。

みんなの声で制度を変えられないでしょうか?

つまり私の提案は、助成金の対象期間を数年前まで拡大してほしい!
というものです。

第3コーナーを回った時点なら審査の負担も軽減できますし、ギャンブル的な税金の使い方も減らせる可能性があります。

行政の人に話すとみんな「そうですね」と同意してくれるのになかなか変わる気配はありません。
まあ、行政の予算は年度単位という考え方ですし、実現には様々な障壁があるだろうと思いますが、みなさんの声が高まれば、本当に将来性のある企業に税金が分配されるようになって、ひいては日本経済の発展を促すんじゃないかと思っています。

フォローお願いします

このnoteでは、私がハードウェアスタートアップの起業で経験したことや、失敗しないものづくりのノウハウなどを書いています。

もし今回の記事が面白いと思っていただけたら、下の「ハート」のクリックと、note、TwitterFacebookのフォローをお願いします。

【他の記事もぜひお読みください】
クラファンに成功しても銀行はお金を借してくれない理由
私が投資家に頼らない理由
クラファン会社に最初 断られた話
製品に自信を持ってはいけない
テレビ,ラジオで紹介される方法

インスタコードにも興味を持っていただけると嬉しいです。

インスタコードHP

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?