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解約返戻金とは何か?~解約返戻金の基本~

生命保険には「解約返戻金」がある

生命保険や医療保険の約款を見ると、次のような条文が必ず書かれています。

第18条(解約返戻金)
1 解約返戻金は、保険料払込期間中の場合には、その保険料を払い込んだ年月数および経過年月数により、保険料払込済の場合には、その経過した年月数により計算します。

保険会社によって「解約返戻金」「解約払戻金」「払いもどし金」などと呼び名は異なりますが、解約などで契約が消滅した場合に契約者に払いもどされる金額を指しています。業界では「CV」や「W」と略されています。


将来の支払に備えて保険料の中から積み立てていきます ⇒不要になれば精算(=払いもどし)します

生命保険は、長期間にわたるリスクに対して相互扶助によって備える仕組みです。
そのリスクの程度(=死亡する可能性)は、一般に年齢が上がるほど高くなります。

男性の死亡率
https://hoken-mammoth.com/leads/mortality-by-age/

そのリスクは年単位(歳単位)で評価されますので、1年更新の保険であれば、その年(=歳)のリスク度に応じた保険料をいただけばよいですが(→自然保険料方式)、
1年を超える長期間の契約では、保険期間(=契約期間)中のリスクを平準化して(=馴らして)、同じ金額の保険料をいただき続ける方法(→平準保険料方式)が一般的です。

平準保険料方式の場合、いただいた保険料は、契約事務などにかかるコストを控除した上で、将来、死亡したり入院したりする可能性に備えて、契約ごとに積み立てていきます。これを保険約款では一般に ”責任準備金” と呼んでいます。業界の中では「V」と呼ばれることが多いです。
この責任準備金は、その契約の子役の死亡リスクに備えて積み立てておくお金であって、保険会社の利益のために積み立てておく金額ではないので、契約者の持ち分とされています。
このため、万が一解約などで契約が消滅した場合には、契約者の持ち分は契約者に払いもどします。このお金が ”払いもどし金” です。

なお、生命保険の場合、募集に要した事務コストなどは、毎月払い込んでいただく保険料から平準化して、通常は10年間かけて徴収していきます。
このため、契約から10年間が経過するまでに、契約者の都合で解約するときには、徴収し切れなかった残りのコストを責任準備金から差し引いた金額を”払いもどし金”としています。これを”解約控除”と呼んでいます。


終身保険(保険期間が終身の死亡保険)の場合、どんな人でもいつか死亡は訪れるので、将来いつか訪れる死亡に向かって、責任準備金は右肩上がりで積み立てていきます(計算上は105歳の時点で保険金額と同じ金額になるように積んでいきます)。
死亡保険金のほか保険期間満了時に被保険者が生存していたときには満期保険金を支払う商品(養老保険が代表的ですが、生死混合保険とカテゴライズされます)も、保険期間が終身の死亡保険と同様に、保険期間中に必ず死亡するか満期保険金を受け取れるかのいずれかが発生するので、保険期間満了時には保険金額と同額となるように積み立てていきます。

一方、定期保険(保険期間がXX年間あるいはXX歳まで定められている死亡保険)の死亡保険の場合、●●歳から○○歳までの死亡リスクを馴らして保険料をいただくのですが、その結果、保険期間の前半はリスクに対して多めに保険料をいただくので、その分だけ責任準備金として積み立てていき、反対に、保険期間の後半は積み立てた金額から取り崩していき、保険期間満了時にはすべてを使い切って0円になります
医療保険も、高齢になれば入院したりする確率は高くなるので、責任準備金は似たような動きになっていきます。ある一定のピークまで増えていって、それ以降は下がっていき、保険期間が定期であれば保険期間満了時にはすべてを使い切って0円になります。

http://blog.livedoor.jp/toushi_kagaku/archives/594810.html
https://www.moj.go.jp/content/000012535.pdf

解約返戻金をなくした商品の仕組み

医療保険の場合には、この払いもどし金をなくす代わりに保険料を安くした無解約返戻金型の商品の方が、現在のマーケットでは一般的になっています。「無解約払いもどし金型」など文字が商品の正式名称(※)の中に入っています。死亡保険でも、終身型ではなく定期型の場合には、払いもどしをなくした商品も多く登場しています。
(※) 保険商品を販売するときには通常何かしらキャッチーな名称をつけて販売されますが(「ペットネーム」と呼ばれています)、それとは別に、その商品の認可を金融庁から取得する際に付される正式名称があります。パンフレットの片隅や「ご契約のしおり・約款」や「重要事項説明書」を見ると書かれていることが多いです。
そのような商品の約款を見ると、次のような条文が書かれています。

(返戻金)
第43条 保険料払込期間中は、この保険契約の解約返戻金はありません。保険料払込済の場合には、保険料払込期間満了後死亡保険金の死亡保険金額と同額の解約返戻金があります。

なお、2文目をみると「保険料払込済の場合は○○○と同額の解約返戻金があります」と書かれています。
無解約払いもどし型の商品の保険料の計算は、詳しくはここでは省略しますが、「解約率」(=解約する確率)という数字を用いて計算します。
一般に、保険料払込期間の設定の仕方としては、保険期間と同じとする場合と保険期間よりも短くする場合とがありますが、
保険期間よりも短くした場合で、保険料払込期間が経過した後(=保険料負担はなくなっている)も払いもどし金はなしとしたときには、返戻金がないのにわざわざ契約者が解約するはずがない=「解約率」の前提が崩れてしまうことから、無解約返戻金型の商品でも保険料払込期間経過後に限り何かしらの金額を払いもどし金額として解約時には払いもどしするようになっています。
その金額は会社や商品によりますが、通常は入院給付金日額の10倍とされることが多いです。死亡したときにも、保険料払込済の場合に限り、これと同じ金額が死亡保険金として支払われます。

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