幸せになった奴から創作を辞めていく

そんな訳ない、、と思うけど、結局俺は自分が許せるようになった時、絵を描くのを辞めた
辞めたというか、自然に描かなくなった
なんとなくバイト命になって欲しいものは別になくて実家でニコニコで稲葉百万鉄のどう森ばっか見ていて 気付けば20万ぐらい貯まってたから新品のiPad Proを買った ペンシルも
板タブで描いたVtuberのファンアートは誰にも見せたくなかった 譲って貰った白いノートパソコンはその頃からすぐに落ちたり止まったりしてた。でも
自分で撮った知らない酒屋の写真をトレースして、水色で塗って、アスファルトにラメを撒いて、アラザンが乗った生クリームみたいな世界に描いたことがあったのに 俺は、その絵を、なくして、誰も覚えてないまま夢になった

iPadプロを買う前は、とある個人Vtuberにハマっていた。が、引っ越す時にネットの接続がうまくいかなくて、ちょうど生誕祭の時期にパソコンが使えなくなり、生配信も頻繁に止まるストレスで碌に見られず、親に半泣きで、当たった。俺はインターネットの契約手続きの方法も知らない引きこもりで、親に何か言ってもどうにもならないのに、友達もいないし、匿名の空間にしか居場所はなくて、推しのVtuberは「Vのアカウントをわざわざ作るより本アカでファンアート描いたりいいねしてくれたり、拡散してくれた方が嬉しいんだけどな、ほんとは」と言っていたので、フォロワー0の俺はずっと肩身が狭かった。焦っていた。
せっかくVtuberになって初めての誕生日だったからなんかしたくて、引っ越しの時に大量に出た段ボールに絵の具で、描いた。めっちゃ、固定ツイートの画像とかを見た。いらないマニキュアかなんかで髪にラメを乗せた。人体を描くのが絶望的に下手な俺の、一手戻るができない精一杯だった。
ツイッターに上げたら、Vtuberが反応してくれて、リプもくれた。ファンが数人、いいねしてくれた。俺が動画であげたラメがキラキラ反射して輝く様子は0いいねだった。その数ヶ月後か数年後かに俺は、iPad Proを買って、さらに金を貯めて、アパートを借りて、家を出た。絵の具は全部捨てた。絵も捨てた。なんか、そのVtuberが一番面白かった時期にネット使えない騒動が俺の中であって、それから「追いかける」行為自体が面倒くさくなって、ツイッターのアカウントは消して新しく作ったし、生配信をしてても行かなくなった。でもそのVtuberは貰ったファンアートを全部保存してるってスクショをあげてたから、ひょっとしたら今でも俺以外に俺の絵のデータを持ってる人間がいるかもしれない、という諦めだか期待だかわからないぼんやり丸い気持ちを、未だ捨てきれずにいる。

フォロワーに好かれたくて必死にファンアートを書いて 何十回も保存してスマホから見て直してを繰り返して、😭の絵文字で喜んで貰えても 朝起きたらブロ解されてた。一方でリアルでは、絵しりとりで適当に描いた絵を笑われて、褒められて、似顔絵を喜ばれたりもして、全然、時間かけてないけど、、wって中学の頃みたいな照れ方をしながら、確かにいい絵だなって思っていた。なんか俺が絵にかけてきた時間は、10人のオタクを集めたら8番目か9番目に多い程度なんだろうが、13歳の時に2ちゃんで同い年の絵師を見てからずっと渦巻いていたグロいイライラとか、そういうのが全部報われたと思った。その時全てが、過去になった 記憶だった物が文字になった。

鍵垢でツイッターするのもめんどくさいからツイメモっていうツイッター風にメモできるアプリでなんか、やってて 全部意味がなさすぎて、俺って何なんだよ、、、みたいなセンチメンタルな気分にさっき、なった 誰にも見せたくないツイートは涙にもなれずにどこへ流れていく!
非公開の日記を半年ぐらいやって本にまとめて名前も格好も適当な変なやつにして誰も知らない土地の文フリとかでぼーっと、突っ立ってたい
他人の日記を買う人はどれぐらいいるんだろう? 俺は、3人ぐらいと予想するから、5部だけ刷りたい…………。

絵を描くのをやめたiPadプロでYouTubeを見、アマゾンプライムを見、TVerを見、している 口内炎が気になるがそれ以上にビールかポテチかなんかのジャンクさが口に残っていて、とにかく歯を磨きたい。俺は続く日々の中で翅を広げる。蛹には戻らない。


インターネット回線の契約手続きのやり方を知らないまま大人になった。けど、インターネット無料の賃貸アパートがこの世に存在する限り、俺は一人でも、一人じゃなくても、雨上がりのキラキラのアスファルトを、つま先立ちで歩いていける


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