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【1分読書】『犬は何も知らず』

『犬は何も知らず』
 サムは僕達の名ばかりの友人だ。犬と呼ばれる少年である。それは僕達が気まぐれで付けた名前で先生の前では呼ばない呼び名。サムは犬だ。僕達の犬。
 授業が終わり、いつものようにサムを遊びに誘う。サムと遊ぶ、ではなくサムで遊ぶ。何も疑問を持たずにいたが、最近少しその行為に対してモヤモヤとした気持ちがある。
「犬。横たえろ」
 クラスメイトが言う。サムは何も言わず微笑を携えそれに従う。
僕は言う。クラスメイトに合わせて、慎重に冷徹を装った言葉を選ぶ。
「もういいよ。帰れよ」
 サムは微笑してまだ僕達に張り付く。僕はもうサムで遊びたい気持ちは薄い。
ひとしきり遊ぶとサムはまさに犬のように帰ってゆく。誰にも気付かれないようにサムを付けていって呼びかける。
「おい。お前の名前は何だ」
「犬だワン」

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