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【1分読書】『OLの女。公園の風景』

『OLの女。公園の風景』
雨上がり、午前中の公園。湿気を含んだ風が通る。その風は冷たかったが妙に温かさを感じた。温度的にではなく生気を感じる温かさだった。風が生きている。
「おかあさん」
「さや、色水出来たの」
「できたよ」 
 先程横目に見ていた親子の会話。その時、私は二本目の缶ビールを開けた頃だった。五本目を開ける。空がだんだんぼやけてきて手先の間隔が鈍くなってきた。
色水。そういえば昔作ったっけ。少女が遊んでいた水場には透明なビニールに入った色水があった。花を水に入れて色のついた水を作る遊び。三色並んでいる。赤、青、黄。それを一つずつ指でつついて色を確かめる。
 用をなさなかった傘を手元に手繰り寄せる。閉じた状態の傘に少女が作った色水を注ぐ。私は雨が嫌いだ。だから次の雨は色水だ。傘を開けば色水が降ってくる。

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