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不安定商材補完のビジネス      ~ビジネスモデル分析の紹介 株式会社タカヨシ編~

 私たち(伊藤・齋藤・田淵・根本)は株式会社タカヨシにつ いて学部2年の秋から3年の春まで、半年間かけて研究を重ねてきました。株式会社タカヨシとは、農産物直売所ビジネスを全国に展開している企業で、近年は都心のショッピングモールでもよく目にする直売所です。そもそも、この企業を研究しようと考えた理由は、農産物直売所という、一見すると利益があまり上がらなくて不安定である業界において、圧倒的な成長を遂げていてその秘密に迫りたいと考えたためです。
 研究の結果、その理由は不安定商材を補完するビジネスを展開しているからであることがわかりました。どういうことなのか、これから紹介していきます!
 ※2017年度12月当時の取材内容より作成しております。

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目次
1.直売所ビジネスとは
2.タカヨシの打ち手①〜野菜の独自の流通システムの確立〜
3.タカヨシの打ち手②〜新たな商材の開拓〜
4.まとめ

1.直売所ビジネスとは

 株式会社タカヨシは、わくわく広場などの店舗を国内で約110店舗展開し ていて、JAに次いで日本最大級の直売所ビジネスを行う企業です。現在も 年々店舗数を拡大しており、着実に成長を続けています(株式会社タカヨシHP/ https://www.wakuwaku-hiroba.com/)。

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店頭には色とりどりの新鮮な野菜が並びます
(2017年10月23日わくわく広場吉祥寺店 筆者撮影)

 しかし実は直売所ビジネスは、一般的に不安定なビジネスであると言われています(森下武子『大規模農産物直売所の2009 年以降の停滞要因と小規 模成長直売所の伸長要因に関する研究』博士論文東京農業大学,2014)。理由は主に3つあります。まず、季節・天候等によって、取り扱っている商材 の仕入れ量が大きく変動してしまうためです。次に、地域によって生産品目 に偏りがある場合もあり、店舗ごとの品揃えが不十分になってしまうため。 最後に、価格の決定権を農家側に与えるために、直売所を開く会社側の収入 が安定しないためです。これらの理由から、単純に直売所ビジネスを行え ば、顧客は必ずしもほしいものを欲しい価格で手に入れることができず、さ らに売り上げも安定しません(森下武子『大規模農産物直売所の 2009 年以 降の停滞要因と小規模成長直売所の伸長要因に関する研究』博士論文東京 農業大学,2014)。このように、ビジネスを安定・拡大させることは困難であ ると言われている直売所ビジネスにおいて、タカヨシはなぜビジネスを安定 させ、さらに拡大させることに成功したのでしょうか。その答えは、①野菜の独自の流通システムを確立し、さらに②野菜以外の新たな商材を開拓したことにあります。順に説明していきます。

2.タカヨシの打ち手① ~野菜の独自の流通システムの確立~

 タカヨシは、野菜の仕入れ量の不安定性・品揃えの乏しさを解消するため に、一度物流センターにすべての野菜を集約させ、店舗の在庫に応じて物流 センターから野菜が店舗に届けられるような流通システムを、直売所ビジネ スにおいていち早く構築しました(2017年12月20日わくわく広場吉祥寺店店 長インタビューより)。物流センターには全国各地から提供される野菜が集 まり、タカヨシは全国に3つの物流センター(千葉県八街市・埼玉県所沢 市・愛知県安城市)を保有しています。この物流センターが収集・分配機能 を担うことによって、季節の天候等による欠品、地域差による品揃えの偏り が解消されています。実際に私たちが行った吉祥寺店店長のインタビューの際には、「物流センターがあることによって、季節とか天気の影響を抑えることが出来ますね。あとは、全国各地から集められるので、地域によって品揃えが偏るということもないです。この物流センターを最初に作ったことが良かったんだと思います。」とおっしゃっていました。つまり、この物流センターが、タカヨシの直売所ビジネスにおける要と なっていると言えるのです。

3.タカヨシの打ち手②~新たな商材の開拓~

 直売所ビジネスを成功させるには、仕入れ量と品揃えの問題を解消するだ けでなく、農家に価格決定権を与えることによる収入の不安定性も解消する 必要があります。それを解消しているのが、加工品という新たな商材です。 タカヨシが取り扱う加工品は、スーパー等では入手困難な高価格帯のマイ ナーブランドで、その種類はなんと2000種類にも及びます!(高橋直樹『月 刊需要創造』日本ホームセンター研究所出版 2013年6月号、2012年8月号よ り)

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店の奥に行くと大量の加工品が陳列されています 吉祥寺店では、塩だけで写真のように約30種類も並んでいました!


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こちらは酢の陳列棚 
スーパーでは見たことが無い種類が多く、見ているだけで楽しかったです!

 この加工品がなぜ収益の不安定性を解消しているのでしょうか。それは、 野菜のように農家側に価格決定権を持たせるのではなく、加工品においては 仕入れ販売の形式を取っているからです。これによってタカヨシは、加工品 の価格を自社で決定することが可能になります。さらに、十分な品目や量が 入荷できる保証のない不安定な野菜とは異なり、計画的に仕入れ可能なこと から、安定した収益を得ることができます。安定した収益を上げられること で、農家に対して価格決定権を与え続けることが出来るのです(2017年12月 20日株式会社タカヨシ吉祥寺店店長インタビュー、高橋直樹『月刊需要創 造』2015年7月号日本ホームセンター研究所出版より)。 加工品を取り扱うことによるメリットはこれだけにはとどまりません。タ カヨシで扱う加工品は、先述したように、生産地の周辺にしか流通していな いものや、健康に配慮した無添加商品など、スーパー等では入手困難なもの ばかりです。これらが店舗に陳列されていることにより、「健康に配慮した 商品を取り扱っている」「ここに行けば珍しいものがある」などの新しい価 値を顧客に与えているのです。実際に、私たちは顧客インタビューを計60名程行ったのですが、野菜と加工品でそれぞれ、魅力を感じている顧客は同じ くらいの人数いることがわかり、加工品による新たな価値によって顧客を取 り込めていることを肌で感じました!

4.まとめ

 このように、タカヨシは、野菜の独自の流通システムを確立し、加工品と いう新たな商材を取り入れたことで直売所ビジネスにおける仕入れ量・品揃 え・収益性の問題を解消することに成功しました。つまり、不安定商材を補 完するようなビジネスを展開しているのです。さらに、加工品をあえてこだ わりのある品目に絞ることによって、顧客に「珍しい商品、健康に配慮した 商品を取り扱っているお店」という新たなブランド価値を提供しています。  そして、従来の直売所のイメージとは全く異なるブランド価値を創造した ことにより、タカヨシは売り上げを伸ばすだけでなく、業界初の大型ショッ ピングモールへの出店を実現させるほどの企業へと進化したいったのです!

 以下のスライドシェアにもパワーポイント形式でわかりやすく解説してい るため、そちらもご参照ください
https://www.slideshare.net/inoueseminar?utm_campaign=profiletracking&utm_medium=sssite&utm_source=ssslideview

 最後までお読みくださり、ありがとうございました!

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